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どろんこと太陽

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2010年03月19日
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 3月17日、54人の卒園児を送り出し、ちょっとホッとした空気が流れている幼稚園です。泣くんですよねと聞かれたのですが、もちろんこれまでの一緒に過ごした時間を思うと涙は溢れてきます。でもそれこそうれしい涙ですし、子どもたちには明日が待っているのですからそれを拓いていくのを応援はしてもおとながいつまでも感傷に浸っていてはいけません。で、次なる仕事、ひとつ大きくなることを心待ちにし、新しい学年の帽子を受け取ることを楽しみにしている在園児の終了に向けて、そして新入園の子どもたちを迎える準備で、大詰めを過ごしています。
 
 3学期あっというまでした。太鼓を打ってはじまった3学期の最初の日、あれから毎日「しんぴんのあさ」を迎え、何があるかわからないとワクワクしながら過ごしました。おとなはそういう子どもと過ごす時間とともに、3学期という実に多忙な時、何をするにも備えが必要ですからそこを何とか、でも見事に過ごしてきたと思います。2月の終わりにオープンウイークを設定しいつでも千客万来、そして保育後日替わりの講師を迎えて講演会を行い、合わせて年長の作品も見ていただくことにして準備しました。子どもたちの作品はいつも「残るもの、使えるもの」をキーワードに考えてきています。今年は子どもが描いた絵がおかあさんの手によってTシャツの背中に刺繍されました。羊の毛を平らに伸ばしてそこに毛糸を打ち込んで自分の名前の文字を仕上げたものは、やはりおかあさんの手によるかばんの一部になりました。切り紙も粘土細工も生活から生まれたものです。そんな作品を作るのも3学期それが主になるのではなく、冬ならではの遊びをいっぱい遊んでいる合間に何人かで取り組んだり、他の学年が帰ったあとにその先生たちも応援に入って手助けしてもらったり、無理なく子どもたちが楽しんでそしていろんな体験をできるようにしています。だからちょっと難しいビーズのストラップもゆっくり一人ひとりが自分のものにすることができました。そんなわけでこれからもずっと使えるもの大事に残せるもの、それらを紹介するそんな展示の場を作りました。温かい手作りの、心をこめたものたちが並びとても好評でした。作品展示があること、講演会があること、その1週間はどなたがお見えになるかわからない、そんな週であることを考えてのそれまでの作業。忙しかったのですがその講演会の毎日はとても実りのあるものでした。4人の先生を迎えました。子どもの生活一般を意識して見てくださったのは兵庫教育大の付属幼稚園の園長もされている横川先生。子どもの今を全面で受け止めている幼稚園のありように感心されながらも、次を作りだすための厳しい子どもへの目を持つことについてお話されました。一般的に幼稚園の先生はたとえば絵本が好きで絵本をいつも見ている子どもを「絵本が好きなんです」と言う、しかし「絵本を見ることしかしないんですか」とみられてしまう場合も違う場所では起こりえるわけです。好きなんですよというと同時にそれだけを受け入れるのでなく、他にはどうだろうかと投げかけてみることの大切さです。欠けがちな、貴重な指摘だと反省でした。
 

 菅井先生には子どもたちとの時間もお願いしました。みかんの木、そしてそこからいろんな木々のある園庭の多様な葉っぱの違いに目をとめ比べてみる、土の上に並べているとふと気付いた多くの貝、海砂だからでしょうか、いっぱいあります。貝の話に移り、どんぐりも出てきてそれはそれは楽しい時間でした。最後には一つ一つのものにある「いのち」についてわたしたちが気づくことの大切さを伝えられていたと思います。その後の講演会で自然を見るということは「心にそれを容れる隙間があること」、隙間があればそれは人を受容できる寛容性となる、だから人は自然を大事に自然をいっぱいに感じなければいけないのだというお話は、自然というものの位置づけを新たにしていただいたように思います。浜田壽美男先生は、人は「手持ちの力」で生きるしかない、というより持っている力を存分に出し切ることによって人は生きていくのだということを話されました。それは先生の大事なキーワードなのですが、いつ聞いても新鮮なのは今の一瞬をご自身がそう生きておられるからでしょう。もう30年以上前にもなる甲山事件をゆっくり語りながら、人の持つ力について繰り返し言われることは、生きていくことへの励ましだとしみじみ思いました。最後は森栗茂一先生、大阪大学大学院のコミュニケーションデザインセンターというところで働かれています。人と人がつながることの大切さ、その熱い口調にすっかり森栗ファンが増えて、仕掛け人としては鼻高々だったのでした。そんな劇的な日々も過ごしつつ、無事にみんな健康で、子どもたちを送り出し迎える準備の今日を過ごしています。
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