糸を通したボタンを、くるくる回す「びゅんびゅんごま」の遊びは、子どものころからの生活の中で、時々思い出したように遊んできました。
それは、「時々、思い出したように」であって、夢中になるということはありませんでした。
そんな「びゅんびゅんごま」に、少し目覚めたというか、本気になったのは絵本の「びゅんびゅんごまがまわったら」(著:宮川ひろ、画:林 明子/童心社、1982年)です。ボタンではない、びゅんびゅんごまは作って遊んでいました。それは、「5センチ×7センチ」の長方形で、大きめでした。
絵本は、正方形でしたから、それを参考にしていて作り始めたのが、「5センチ×5センチ」の現在の形のびゅんびゅんごまです。大きさもほどほどで、糸を通す穴なども、決めやすいし、回しやすくて、よく回るのです。
文字通り、「びゅんびゅん、びゅんびゅん」と、いい音で回るのです。
もう一つ、この遊びが数十年にわたって今も、飽きられることなく登場するのは、遊びとしての「奥が深い」というか、遊びが次につながる「発見」があったからです。
それこそが、「びゅんびゅんごまがまわったら」の校長先生とこうすけたち、子どもたちの中で繰り広げられるこの絵本の根底に流れる、子どもと、子どもの遊びについての洞察(力)です。
「機械」の遊びは、その機会仕掛けで子どもたち(だけでなく、大人さえも)を、「虜」にしてしまいます。
絵本では、1個から始まって、2個、3個、4個と増えていくびゅんびゅんごまの遊びは、それを自分で作ってみたり、大小の形に取り組んでみたりと、もし、子どもたちの周囲、大人が、遊びの仲間に加わる時、そこから始まって無限に近い遊びの世界を広げることになります。
それこそが、生活の豊かさです。
(菅澤 邦明)
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