およそ10年前に、ファーブル昆虫記(全10巻、20冊)を翻訳した奥本大三郎さんを招いて、お話を聞く機会がありました。
その「ファーブル昆虫記」の第1巻第1章は、「スカラベ・サクレ」です。それは、こんな具合です。「…これから私たちは、レ・ザングル(アヴィニョンの街の対岸にある、ガール県の村)の砂地の高台まで、見にいくところだったのである――スカラベ・サクレがすでに姿を現しているかどうか、そうして古代エジプトにおいては世界の象徴であった糞球を転がしているかどうか。」「糞虫はただちに出発する。虫は長い二本の後肢で球をだきかかえ、その先の爪を球に刺して回転の軸にする。体を支えるのは中肢で、鋸歯のついた前肢を梃子(てこ)のように使って、いちに、いちに、とかわるがわる地面を押す。頭を下に、尻を上に、逆立ちの格好で荷物を持ったまま後ろ向きに進むのである。」
この「いちに、いちに」の様子を、焼きものにした「糞球」を、岡 理恵さんの「メダカ工房」(宝塚市福井町)のウインドウで見つけてしまいました。で、早速その焼きものの「糞球」を注文させていただいたところ、「ふんころがしⅡ」が届きました。と言っても、巨大な「糞球」(というより、おひさま)を、2人の子どもが糞虫よろしく転がしている、そんな作品です。そして、その子どもたちの転がす様子、表情、中でも輝く目が何とも見事なのです。作者は、陶芸作家の藪本栄衛(やぶもと さかえ)さんです。
この「ふんころがしⅡ」は、今、西宮公同幼稚園の庭の一番ピッタリな場所に置かれています。ぜひ、探してみてください。
で、糞虫と言えば、もちろん「ファーブル昆虫記」(著:ジャン=アンリ・ファーブル、訳:奥本大三郎/集英社、2005年)ですが、糞虫・スカラベの写真と言えば、今森光彦さんの「写真昆虫記 スカラベ」(著:今森光彦/平凡社、1991年)です。
「スカラベ」が、豊富な写真になって登場するのは、今森さんの未知の自然界への「探検」によって、実現しているはずです。
そんな今森さんの「探検」の一端、「今森光彦の地球昆虫紀行 ジャン・アンリ・ファーブル 生誕200年記念」(7月19日-8月7日)が、富士フイルムフォトサロン大阪(大阪市中央区)で、展示されます。7月19日(金)には、何としてでも、子どもたちと出かけたいと願っています。
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