(前週のつづき)
「東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出」が放出のための海底トンネルの工事の準備が進められる一方、その「処理水の海洋放出」の場合の「風評被害」とその「抑止」が何よりの問題になっています。「東京電力の小早川智明社長は5日、内堀雅雄知事と県庁で会談し、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出方針で懸念される風評被害抑止に向けて、『当事者として主体的に行動し、具体化していきたい』と述べた。内堀知事は処理水を海洋放出する政府方針について、『今なお、漁業者らの強い懸念や、11年間取り組んできた風評払拭(ふっしょく)の努力が水の泡に帰してしまうのではないかという不安がある』と指摘」(1月6日、福島民報)。
こうして、今や、「処理水」や「風評被害」の問題になっているとされる東電福島の重大事故は、しかし、どれ一つをとっても「処理」はあり得ず、問題がただの「風評」であったりする訳でもありません。重大事故の結果処理できなくて「処理不能」のものが増え続け、風評ではなく、処理不能なものが生活する人たちの身近に存在し続けることにより放射能を「被曝」することが多くの人たちの日常になってしまっているのが東電福島の重大事故の現在です。
ところで、「まことしやか(…なうそ)」という言い方がありますが、「内実はそうではないのに、外見はいかにも本当らしく見える様子」で、東電福島の重大事故をめぐる、政府・東電は、そのまことしやかを「見える」ではなく、一貫して見せて今日に到っています。
それを、この重大事故を表現するいくつかの「言葉」で拾って見ると、以下のようになります。
・直近の、1月5日、内堀福島県知事との会談の東電小早川智明社長の発言。
「当事者として主体的に行動し」なのですが、これは「第一原発処理水の海洋放出方針で懸念される風評被害抑止に向けて」の発言となっていますが「主体的」と言うことでだったら、その本来の意味での主体の一切を、放棄ないし形骸化してきたのが東京電力及び小早川智明社長です。
「処理水」の海洋放出は、処理水を処理する責任を、自らの責任で完了するのではなく、国の決定にゆだねたのは東電です。その場合いかなる「処理水」を、海洋へ放出するのかの具体的内容は一切明らかにされませんでした。いわゆる政治の「政治的判断」で、有無を言わさず決定されたのが、「処理水」の海洋放出です。そこには、東電福島の事故の溜まり続ける汚染水の、誰よりもその「処理」について責任のある東電の姿は見えませんでした。言うところの「主体」は、政治の、政治的判断の影になって一切見えはしなかったのです。そして、海洋放出が決まったのは、そもそもが「処理水」ではなく「放射能汚染水」なのです。いくつかの段階の「処理」を経ても、現在の科学・技術を持ってしては取り除くことのできないトリチウム、および同じようにいくつかの段階の「処理」を経ても残ってしまう放射性物質を含む「立派」な汚染水なのです。
処理水ではありません。
汚染水なのです。
どんな意味でも、自然や自然環境とは馴染まないという意味で汚染物質なのです。
原子力発電所は、とっても、とっても危険な施設です。何よりの危険は、「核反応」という、それによって起こる止まるところを知らない途方もないエネルギーを「制御」し、小出しにして使うのですが、それには大きくは二つの途方もない危険と必然的に背中合わせになります。一つは、核反応によって発生する放射性物質は、無味、無臭で、見えないのですが、人間などの生きものの生体を透過し、細胞、遺伝子に影響ないし、破壊することです。もう一つは、この物質と向かい合う時、人間はそれとの接触を避ける以外、どんな意味でも防御できないことです。
人間の技術で確立した「核反応」が、生み出した放射性物質は、決してどんな意味でも人間と親和することはなく、それとの付き合いの絶対条件が接点を持たないことです。
で、それを完全に満たすことを条件で、稼働させることになったのが、原子力発電所です。東電福島の事故で、繰り返し目の当たりにすることになったその施設は、なかなか巨大です。巨大にならざるを得なかったのは、「人間を含めた生きものとの接点」を作らない、ないしは防ぐ為にはあの巨大な施設にならざるを得なかったからです。しかし、構造は、とっても簡単というか単純です。まず、東電福島の重大事故では吹っ飛んでしまいましたが、外側は厚さ1メートルのコンクリートの壁の建物で「建屋」と呼ばれています。それは、事故で発生した、元はと言えば核反応で発生することになった水素の爆発で吹っ飛んだといわれています。その内側が格納容器、そしてもう一つ内側の容器が、圧力容器で、その中に破壊されていた燃料が制御されなくなった結果の核反応の高温、(溶融し、3000度近いと言われる)で、容器をそのままで溶かしてしまいました。メルトダウンです。結果、閉じ込めることが出来なくなった、大量の放射性物質が環境中に放出させることになりました。
東電福島の重大事故です。
(次週につづく)
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