前週のつづき)
繰り返しになりますが、そんな危ない原子力発電所ですから、稼働の条件は、どんな場合であっても、放射性物質を完全に閉じ込めることで、その条件を満たす技術の保証があって始めて稼働することになっていました。万に一つであっても、東電福島のような事故になることは、想定していなかったのです。いいえ、万に一つではなく、1010くらいの可能性はあると考えられていました。ですが、1010くらいの可能性は想定しませんでした。とっても、理由は単純で簡単で、そんな場合の事故対策は、想定できなかったからです。
東電福島で起こってしまった重大事故を、東電、政府は当初から想定外としてきました。15メートルを超えるような津波は起こらないという想定で、それが起こってしまって本来は想定内でしたが、想定外を理由に事故責任は回避できるとしてきました。その想定外としてきた津波も、実は、あり得ることが示唆されていて、東電内部でも、それに見合う堤防の嵩上げも視野に入れられていましたが、責任者たちは、それをもみ消していました。
東電福島の重大事故で、当該の東電の責任者たちの言説での「想定外」は、大津波ということになっていますが、もともと、この人たちが想定していたのは、原子力発電所では事故は起こらないということでした。それが、あの巨大な施設の形になっていたのです。そして、その根底にあったのは、人間の技術への過信です。大津波を「想定外」としたのも、大きな自然の営みのほんのかけらにしか過ぎない人間というものへの過信というか愚かさの一つでしょうが、何よりの想定外は、人間の営む技術には完全はあり得ないという単純な事実です。なのに完全を根拠に作ってしまった施設で事故が起こってしまったとすれば、どんな意味でも、「想定外」とは言えないのです。言えないはずなのに、ここに至っても、それを認めようとしないのが、現在進められている政府、東電による汚染水の海洋放出です。
しかし、元はと言えば、人間の技術には完全はあり得ないにもかかわらず、完全を前提に稼働させていたのが、原子力発電所であるのは、前述の通りです。
東電福島で起こった重大事故は、堤防を越えて押し寄せた津波で、原子力発電所稼働の要である電気施設が海水に浸かって、全電気が喪失するという事故でした。とっても、単純というか簡単な事故です。その程度のことで、取り返しのつかない事故になるのだとすれば、原子力発電所という施設、及びその技術は、抱えている問題の大きさから考えると、とことん脆弱だということになります。
多分、東電福島のようなものを稼働させるような人たちに求められていたのは、この事実への自覚であったはずです。
自覚していませんでした。
この自覚の欠落は、重大事故後の今も全く変わっていないのが、2022年1月5日の東電の小早川智明社長の「当事者として主体的に行動し」の発言です。ほぼ全く「当事者」としての自覚もないし、ましてや「主体的」でもないのに、それを平気で口にできるのです。
もし、かけらでも当事者としての自覚がありかつ主体的であるなら、処理不能で海洋放出を決めてしまった汚染水を、処理水などと口にしてはならないのです。
・1月12日 「帰還困難区域廃棄物埋め立て施設、11月末整備完了/大熊、新年度中に搬入開始」
・1月17日 「第一原発の伐採木焼却施設、3月末に本格稼働へ/東電、屋外保管解消狙い」
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・1月19日 「デブリ搬出アーム公開、第一原発2号機、年内開始目指す」「個人被ばく線量基に評価、甲状腺検査、がん発見率との関連性」「復興拠点の除染土壌など、来年度、中間貯蔵施設搬入、環境省」「処理水放出の行動計画説明、双葉で政府、東電」
・1月20日 「東電の処理水放出報告書、海洋範囲『根拠説明を』被ばく影響評価で専門家、県監視協評価部会」「きょう準備宿泊開始、全町避難続く双葉町」
・1月21日 「凍結管1本損傷確認、第一原発凍土壁冷媒漏えい、東電」「放射性物質濃度最高値相次ぐ、護岸地下水」
・1月22日 「住民意向調査『戻らない』微減、浪江52.4%、葛尾27.7%、環境整備で帰還検討か」
・1月23日 「東電福島第一原発、共用プール燃料乾式保管へ、建屋から搬出分の容量確保」
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・1月28日 「処理水影響評価改訂へ、東電被ばく経路など追加」「第一原発、格納容器内部調査、開始見通し立たず、東電、水中ロボ不具合」「汚染水一日、150トン発生、第一原発、2021年」
・1月29日 「日弁連、海洋放出に反対、処理水意見書、『他の方法検討すべき』」
(次週につづく)
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