(前週よりつづき)
「台湾有事想定の日米共同作戦計画」の、奄美から宮古・石垣の南西諸島を「臨時の攻撃用軍事拠点」とする「自衛隊と米軍」には、それら島々は「有人島」であっても、そこで生活し、一人一人が生きた歴史をきざんできた人間は、見えていないし、見ようともしません。ただの「有人島」なのです。
それが、街の人たちが生活するすぐそこで始まった、那覇軍港での米軍による軍事訓練です。「軍港は国道に面し、すぐ近くには那覇空港やプロ野球巨人がキャンプを張る
沖縄セルラースタジアム那覇などがあり、多くの県民の生活圏だ」「午前10時すぎ、『バリバリバリ』と大きなプロペラの回転音を響かせてCH53大型輸送ヘリが海側から姿を現した。巨大な機体を軍港上空で旋回させて着陸すると、海兵隊員とみられる約25人が後部のハッチから、銃や荷物などの装備品を抱えながら次々と降り立った。同ヘリは10時20分ごろ離陸」「午後4時50分ごろには、MV22オスプレイも飛来し港湾内に着陸。別の隊員ら約20人を降ろし、午後5時ごろ離陸した」「施設内の建物の周辺を囲むように有刺鉄線が張り巡らされ、2階からライフル銃を構える隊員の姿が見られるなど、周辺が緊張感に包まれた」(2月9日、沖縄タイムス)。
こうして、「台湾有事」を想定し、地理・海里的にも近い、奄美・沖縄・先島諸島が、その前線基地と考えられ、それら「有人島」には、ミサイルを中心とした兵器の配備とその為の基地が建設され、隊員もそこに配置されています。こうして、南西諸島は「有事」の要塞となっているのですが、現に、沖縄島は米軍・自衛隊によって、言わば島全体が要塞になっています。
で、こうして「有事」「要塞化」で想定されている「仮想敵」国なのですが、ロケットを月の裏側まで飛ばして「軟着陸」させるという技術の国で、それは当然この国の軍事技術の技術力及び量そのものにもなっています。「有事」を想定し、「要塞化」されている南西諸島の島々は、当然この国からは「要塞」として見えるはずで、そして当然「有事」の際には標的になります。ピン・ポイントで攻撃できてしまうのが、その国です。そんな「有事」で、米軍および自衛隊は要塞はとりあえず一時的に守るにしても、そしてそれは何よりも優先されるでしょうが、要塞化された島で日々の生活を送っている人たちは、そこが戦場になってしまう時、守るないしは守られるとは考えられません。
「有事」で「要塞化」された「有人島」の人たちを待っているのは「有事」にはまちがいなく見捨てられることになります。
それらが、ただの杞憂・危惧ではないことを、那覇軍港での米軍による訓練、嘉手納に飛来する外来機の最新鋭F35ステルス戦闘機などの状況が物語っていると言えます。
・2月18日 「米海兵隊員に懲役3年求刑、営利目的で大麻密輸」
・2月19日 「訓練移転前より騒音増、嘉手納基地、4地点で1.5~1.6倍」
・2月21日 「2人殴った疑い米海兵隊員逮捕、那覇署、松山で泥酔」
・2月22日 「FS5A10機飛来、嘉手納12機駐留」
・2月25日 「米本国のF35、嘉手納に展開、滞在期間明かさず」
・2月26日 「米軍機F35A2日連続訓練、嘉手納基地」
・2月25日 「離島防衛訓練に陸自オスプレイ、海兵隊と来月共同で」「海自と米海軍が沖縄周辺で訓練、今月3回目」
・2月28日 「石垣市長選、現職が4選、自公推薦、陸自配備計画を容認」(2022年2月28日、朝日新聞)。
「陸自配備計画は(4選となった)中山氏が2018年に容認を表明。市民グループが有権者4割の署名を集めて投票条例制定を直接請求したが、19年2月に市議会が否決。今回、中山氏は配備計画について『さまざまな意見があったが、容認という立場でスタートした』といった説明にとどめた。コロナ対策や観光客数の回復などを中心に訴え支持を広げた」(前掲、 朝日新聞)。
こうして、現職が4選となった沖縄県石垣市も、島の主要産業の一つは「観光客」です。しかし、その石垣島の周辺では、米海兵隊と海上自衛隊が、「台湾有事」を想定した共同での「戦術訓練」を繰り返しています。そうだとすれば、観光客はそんなことが現実に想定され、戦術訓練が繰り返される石垣島に、楽しく安心して出かけていて、いいのだろうか。
香港に有無を言わせない強権でねじ伏せた中国が、台湾を同じようにねじ伏せるということは、あり得ることです。中国本土からすぐそこのこの地勢的な条件から言っても、米国や日本がそこを守り抜くというのは、かなり無理があります。「台湾有事」で、動くのではなく、細い細い道筋であっても、共存の道をさぐるよりないように思われます。地勢的な条件から言っても、そしてその地域・島々の主要産業の一つである観光を軸にして考えるとすれば、中国・台湾、沖縄の島々を、ゆるやかにつなぐ働きこそが、沖縄の島々が果たす役割のように思えます。それこそが、力ずくではなく、沖縄の島々が生きて果たしてきた「万国津梁」こそが進むべき道であるように思えます。
「有事」の戦争への備えではないはずです。
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