(前週よりのつづき)
3. 放射性廃棄物の最終処理(最終処分場)の確保が可能だとすることについて。
東電福島の事故で、環境中に放出され、広く環境中に降り注ぐことになった放射性物質は、削り取って、別の場所に永久保管されることになりました。その「別の場所」はすぐには得られない、ないしは見つからないことを見越して、とりあえずは削り取ったすぐ近くで「仮置き」され、やはり「別の場所」は得られないことを見越して「中間貯蔵」することが早々に決められました。もちろん、そんな場所も「すぐには」「どこにも」見つかるはずはありませんでした。
東電福島の事故は、東北の大地震、大津波が起因となった事故とされています。しかし、元はと言えば、原子力発電所の稼働によって発生する放射性物質は、もし、万一それが環境中に放出されるようなことがあれば、どんな意味でも「処理不能」であることこそが、もともとの本来の「起因」とするのが正確なはずです。その「実例」が、エネルギーを発電させた後の原料の使用済核燃料は、それの稼働を認めているどの国の場合も、完全な処理はもちろん、不完全な処理のまま行き詰っている、ないしは行き詰っている現実が物語っています。もちろん、国によっては、地下深く「埋設」することで「処理」を始めていたりはします。日本の場合は「処理」できるとして、青森県六ケ所村にその施設を設け、処理しようとしていますが、施設の完成、稼働は繰り返し繰り返し先送りされ、正式な稼働の見通しが立たないというのが現実です。その場合のすべてにおいて「起因」と考えられるのが、もともとが処理不能のものを処理するという、不可能と言うか矛盾にこそ、何よりも「起因」しているからです。
東電福島の事故は、表面上はとりあえずは厳重に「管理」されている放射性物質としての使用済核燃料とは全く異なって、ほぼ無制限に環境中に放出された放射性物質の管理が迫られるところが、全く大いに異なっています。環境中に放出された時点で、人間の手の及ばなくなってしまっているのが、環境中に放出された放射性物質、東電福島の事故の最も中心的で処理不能かつ困難な状況、即ちこの事故の本質なのです。
なのに、事故処理は可能だとする「虚構」(愚行!)の一つが「除染」です。「除染:
放射性物質で汚染された土壌・設備や衣服などからその放射性物質を取り除くこと」(新明解国語辞典、第7版、三省堂)。比較的「明解」とされるこの辞典でも、「除染」についての解説は、放射性物質の解説としては「明解」とは言えません。放射性物質に関する限り、たとえば汚染には境界が設けられないこと、もし「取り除く」ことができたとしても、取り除いた放射性物質はそのまま放射性物質として残ってしまいますから、取り除くことでは全く処理は終わったことにならないのが放射性物質です。
ということですから、東電福島の事故で時と場所を選ばず降り注ぐことになった放射性物質の、いわゆる除染は、その場所がもともとが限られていました。
たとえば、事故の東電福島から北西およそ40キロに位置していた福島県飯舘村にも、「天候」の「条件」が災いして、放射性物質が降り注ぐことになりましたが、その結果の「判明」が遅くなり、遅くなった結果数カ月後で、全村避難になりました。その時の避難の基準を、緩和し、20m㏜/年で、再開されることになったのが、幼・小・中学校の元の村の元の場所での再開でした。その場合、敷地及び敷地から20メートルの範囲は、全域を削り、樹木はその根の一部を掘り返して洗い、樹木の枝の細い一本一本まで拭き取って(たぶん無理)、学校の再開にこぎ付けました。しかし、敷地から20メートルのその先の森は、そこに一歩足を踏み入れた時の放射性物質は、1.5μ㏜/hだったりします。事故から10年近く経った時の線量です。
そうして削り取ったり拭き取ったりした時の汚染物質は、削り取ったり拭き取ったりしたすぐそこで「仮置き」され、本来は最終処分で永久保存されるはずですが、それが得られないまま計画されることになったのが、30年を期限とする約束の「中間貯蔵(施設)」です。除染と言うことで、削り取ったり拭き取ったりした汚染物質の中間貯蔵施設です。もちろん、「中間」とは言え、そんなやっかいな汚染物質の受け入れ先は見つかりませんから、結果的に選ばれたのが、事故の東電福島が立地する、大熊・双葉の両町でした。町の大半が、居住制限・帰還困難とされている町です。放射性物質が降り注いで、そこで生活が難しくなっている町に、危ないからといって除染された汚染物質を、他のどこも決して受け入れないにもかかわらず、これらの町にたとえ「中間貯蔵」であったとしても、運び込むのは矛盾しています。その為の場所は、当初は「借りる」ことになっていましたが、しばらくして国が買収することになりました。中間貯蔵の期限は、搬入が始まってから30年です。既に5年近く経っていますから残る期限はおよそ25年です。
(次週につづく)
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