(前週よりのつづき)
その中間貯蔵施設に搬入された除染廃棄物は、2022年3月末現在、およそ1400万立方メートルです。「同省(環境省)によると、帰還困難区域外から出た除染廃棄物約1400万立方メートルの輸送は来月末までに完了する見通しとなっている」(2月23日、福島民報)。運び込まれたとされるいわゆる除染廃棄物は、たとえば飯舘村などの、到るところで見られたあの黒のフレコンバックの山です。1立方メートルおよそ1トンと言われた、決められた規格の黒のフレコンバック入りの汚染物質は、「仮置き」されていた場所から、10個ずつ10トントラックに積まれ、「所定」のルートを通って、大熊・双葉両町の中間貯蔵施設に運び込まれました。最終処分場は決まっていません。「借地」だったはずの用地は、国が買い上げてしまいましたから、もし最終処分場が見つからなくて、期限の30年が経ってしまい、ずるずる中間貯蔵の状態が引き延ばされることになったとしても、30年後のその頃の人たちは、「まあこんなものか」で済ませてしまうかも知れません。
除染された汚染物質の取り扱いがそんな具合ですから、多岐にわたるおびただしい量の放射性物質は、特殊原子力施設となり、なんでもありになった東電敷地内にすべて仮置きされています。その中でも、少なからず危険と言うか、杜撰な管理の結果限界になっている一つが「がれき」です。「東電によると、昨年12月末時点で、建屋の水素爆発や津波で発生したコンクリートのがれきなど約31万4千立方メートルをコンテナで保管し、コンテナの大半を屋外に置いている」「コンテナが野積みされている現状について『雨ざらしで穴が開く懸念がある』」。で、検討されているのが「一時的に地中に埋めて覆土する方法」です。(2月3日、福島民報)。で、この場合の「一時的」はいつまで続くのだろうか。
原発事故は、交通事故のように日常生活で見聞きする事故ではありません。想像を絶する事態が発生したのです。
想像を超える事態を少しでも感じ取るために、裁判官が防護服を着て、靴を履き替えて、線量計を付けるという特別な装備をして原発敷地内へ入れば、目に見えない、匂いもしない放射性物質を取り扱うことの怖さ、やっかいさ等を体感できたと思います。福島第一原発の敷地内に入れば、原発の眼前に大海原が広がり、かつ、原子炉等は約30mの高台をわざわざ20mほど掘り下げた場所に位置しており、津波に極めて脆弱であることを実感できたと思います。また、津波による浸水防止措置(水が入ってくる開口部を塞ぐように板を貼るなど。)が容易にできたことを目の当たりにできたと思います。さらに、避難指示によって人の気配のない町を感じ、双葉病院の入院患者らが避難中に放射性物質によってどれほど追い詰められ、命を落としていったのかに思いを馳せることで、福島第一原発事故をリアルに感じとれ、事故を起こした責任を問う土台を作れたと思います。
また濱田氏、島崎氏の証言を聞けば、長期評価の信頼性が十分であることが分かったと思います。渡辺氏の証言を聞けば、水密化対策等の津波対策工事が容易にできたことが分かったと思います。
これら指定弁護士が求めた現場検証や証人申請を認めなかったことは、日本で初めて起きた原発事故の刑事責任を正しく問うことから少し遠ざかってしまったといえます。
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