(前週よりつづき)
ということで、当面「処理水」のことが話題になっていますが、実態がトリチウム及びその他の放射性物質を含むのであってみれば、「汚染水」です。なのに汚染水とは言わずに、時にはトリチウムに特化して、海洋放出の準備が「着々」と進められています。それらを地元の新聞から拾い上げると以下のようになります。3月20日、3月25日、3月26日、3月31日、4月1日、4月6日、4月9日、4月12日、4月13日、4月18日、4月26日、4月28日、4月29日、4月30日、5月6日など。
で、タンクの設置場所が得られないことを理由に、東電福島の事故の現在進行し続ける現実の理解を棚上げにし、海洋放出だけが事故解決のすべてであるかのような報道になっています。
でも、それは東電福島の事故の一部の問題であって、起こってしまった事故のほぼすべては、終息はもちろんなかなか解決できない現実に直面しています。
① (増え続ける)「処理水」という名の汚染水
② 除染廃棄物の県外処分(3月30日)
③ 溶融燃料・デブリの取り出し(3月25日)
④ 高線量配管(3月25日)
⑤ 残留放射性物質(3月26日)
⑥ 除染土の減容化(3月31日)
⑦ 避難解除と住民の帰還(4月4日)
⑧ 甲状腺被ばく(4月7日)
⑨ 除染と住民の帰還(4月9日)
⑩ 復興拠点と住民の帰還(4月22日)
⑪ 住民の帰還と生活(4月30日、5月3日)
⑫ 復興拠点と避難解除(5月7日)
①の、処理水という名の「汚染水」については、既に言及していますが、汚染水を処理水と言ってしまうところが、福島県内の多くの市町村などの海洋放出への疑問、反対になっています。このことに限らず、本来は環境に存在しない放射性物質を、結果的に福島県内を中心に大量に降らせることになった事実、その結果、おびただしい人たちが緊急避難を余儀なくさせられました。緊急避難となった当初、避難解除要件の放射線量は、1m㏜/年以下でした。それが、実際に降り注いでしまった放射線量の数値をもとに、20m㏜/年に引き上げられてしまいました。東電福島の事故の前までは、1m㏜/年であったにもかかわらずです。この20m㏜/年は避難・休校になっていた学校に子どもたちが戻るにあたって、安心であるという以外、何一つ根拠を示さずに実行されてしまいました。
放射線による被曝、中でも低線量の被ばくについての影響は議論が分かれています。影響があるとする場合も、たとえば人間の細胞の極めて繊細な活動は、たとえ低線量でも細胞のそれと比べる場合、比較になりないくらい大きいとすれば、低線量被曝の影響はどんな意味でも否定はできないのです。
それを、影響、因果関係は証明できないだけで断定するのは、乱暴すぎるのです。汚染水の海洋放出を、国、東電、そしてIAEAまで動員して妥当であるとしても、その根拠は示されていないのが現状です。
②除染廃棄物の県外処分。
降り注いだ放射性物質を、拭う、削るなどの除染をすることで、避難している人たちが元の住居に戻ることになっていますが、何よりも問題なのは、そんな原始的な手段でしか対応できないこと、完全に消去できないやっかいなものが放射性物質なのです。で、必然的に起こってくるのが、除染廃棄物の処理という新たな問題です。危ないから拭うないし削った放射性物質は危ないまま残ってしまうのですから、その危ないものをできれば福島県以外の別の場所に移したいのですが、当然、そんな危ないものをすんなり受け入れてくれる場所は見つかりません。でも、たとえば、福島県双葉・大熊町に設けられることになった中間貯蔵施設も、その中間の先の最終処分場を県外、福島県害に求めることになっていますが、福島県では得られない「危ない」ものを受け入れる場所は当然得られません。絶対にあり得ないはずです。
すべては、放射性物質という、人間が作り出してしまって、作り出した人間にも処理不能なものが東電福島の事故であり、その事故から始まる、事故諸相の一つが、「除染廃棄物の県外処分」(処分は不可能)です。
③溶融燃料・デブリの取り出し
発電すると同時に、発電の為の電気・電力を欠かすことができない原子力発電所で、すべての電源を喪失した結果起こったのが、東電福島の事故です。その事故は「重大事故」とされました。冷却できなくなった燃料が原子炉本体である圧力容器、格納容器、更にそれらが乗っかっている土台のコンクリート部分まで溶かしてしまって、それが言われている溶融燃料、通称デブリです。事故から11年、誰も見ることも触ることもできないデブリ。「取り出す」ことはできないし、「取り出した」としても、超高濃度で置き場所も得られないのがデブリです。
そんな、推定800トンのデブリのしかも一部に、今たどり付いていると推定されているのが、ロボットアームの先端のカメラと、ロボットアームの先端のロボットの「ピンセット」だけです。
④高線量配管
「東京電力は福島第一原発1号機と2号機の原子炉建屋から共用排気筒につながる高線量配管の撤去作業を26日にも再開する。4月中の作業完了を目指す。切断装置に不具合が生じ中断していた。撤去する配管は『SGTS配管』と呼ばれ、原発事故発生直後、原子炉格納容器の圧力を下げるため放射性物質を含む気体を放出する『ベント』で汚染された」(3月25日、福島民報)。で、この場合の配管は事故から11年経っても「高線量」なのですが、言われている「ベント」で放出された「気体」も高線量でした。その高線量の気体が含む高線量の放射性物質が、福島県内を中心に降り注ぎ、降り注いだ放射性物質で汚染された土壌などを削り取ったのが「②除染廃棄物」です。「①処理水」も、元はと言えば「③溶融燃料・デブリ」などを冷却する為外部から注入し、漏れ出した超高線量の汚染水から、「セシウム」「多核種」などを「除去」した後の「処理水」です。実際には完全に除去するのが難しくて、多核種などの一部、全く除去できないトリチウムを含む「汚染水」が処理水です。そして「除去」したとされる「セシウム」「多核種」は、消えてしまった訳ではなく、事故の東電敷地内に「高線量」のまま保管されていて、水で薄めて「海洋放出」するなどということはできません。
(次週につづく)
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