(前週よりのつづき)
そうだとしたら、ウクライナの敗北は「絶対的権力者」を世界が容認することになり、その侵攻・侵略は決して止むことはない、更に拡大しその絶対的権力は、広く世界に向けて侵攻・侵略を広げることになるはずです。
そのロシア・プーチンについて、「赤い人」という言葉で述べているのが、アレクシェーヴィッチ(スベトラーナ)です。アレクシェーヴィッチの「赤い人」は、ソローキンによれば以下のようになります。「…逆説的だが、この五世紀の間にロシアで権力の原理は変化しなかった。私はこのことが我が国の大きな悲劇だと考えている。中世的なピラミッドはその間ずっと聳え立っていたのであり、表面が変わりこそすれ、構造は変化しなかった。そしてその頂点はつねにたった一人のロシア統治者が座っていた。ピョートル一世、ニコライ二世、スターリン、ブレジネフ、アンドロポフ。今やプーチンは20年以上も頂点に座っている」「頂点はつねにたった一人のロシア統治者が座っていた」。
アレクシェーヴィッチはその「赤い人」の国との闘いについて以下のように述べています。
「今も私は本を書き続けているんです。というのも、はじめベラルーシの革命について書いていたのですが、それだけで完結してしまったら、まるで『赤い人』はもう過去の話だと言わんばかりになってしまうと思って。でも彼らは消えてなどいなかった。現に目の前にファシズムが、ロシアのファシズムがちらついています。すでに戦争を始め、血を流しているのです……。私たち作家はもはや傍観してはいられないし、他人事のようにふるまうこともできません。軽い気楽な小説など書いている場合ではない、そんなことはもう不可能なんです。闘いに加わらなければなりません。これは私の意見であって、作家の中には、そんなことをする必要はないという人もいるかもしれません。でも私は、かつてアフマートワが言ったように『私は私の民とともにあった』と思っていますし、だからこそ本の続きを書くことに決めたのです。第一部はベラルーシの革命、第二部はこのウクライナでの戦争を扱います。『赤い人』がどのように変貌したかを追うということです。私たちは、『赤い人』が何か変貌を遂げて民主的に生まれ変わり、自由な人間になるのだとばかり思っていました。ところがふたを開けてみたら、そこにいたのは攻撃的で、全世界を脅かす人間だったというわけです。」
「ウクライナの人たちはもはや自分たちだけのために戦っているのではありません。もしウクライナが勝利すれば、それはベラルーシにとって、ロシアにとって、そして全世界にとって非常に重要な意味を持ちます。というのも、プーチンはウクライナだけでとどまるつもりはなく、もっと何か大きなヘゲモニー構想を抱いているということが、ますます明らかになってきていますからね。」
「ロシアに対し、ロシアの戦争に対し世界が一丸となって立ち向かい、引き続き制裁を続けること。それ以外に道はないでしょう。もちろん、外交面での努力も必要です。それから、ウクライナの勝利のために力を貸すこと。武器の援助もそうですし、さまざまな支援が必要です。ウクライナは私たちみなのために戦っているのですから、これは自由という概念そのものを守りぬくための戦いとさえいえるでしょう。」
(次週につづく)
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