(前週よりのつづき)
そんな現実が、沖縄島に広く展開する米軍兵士による日常的に頻発する飲酒運転及びその事故、事件です。そして、沖縄島に広く展開する米海兵隊の戦闘訓練は時と場所を選ぶことはありません。そんなことが可能になってしまうのは、米軍基地だけではなく、それを取り囲む沖縄島の人たちの生活の場所が、展開する米軍にとっては区別ないし境界が存在しないからで、しかも、その事は、日米安保・地位協定によって日米の了解事項でもあるからです。この、区別ないし境界の存在しない状況は、沖縄島の海・空・陸を問いません。
中でも空は、米軍による独占的、優先的な制空権のもと、昼夜・場所を問わず「外来機」の飛来が繰り返されています。沖縄の米軍基地の問題は、あたかも普天間基地の返還移転に集約されるように理解されがちですが、決してそうではありません。海・空・陸を問わず、区別も境界も存在しない、ほぼ無条件で基地の島になってしまっている限り、そして、日常生活から戦闘訓練に到るまで、米軍の存在が優先する限り、事故・事件はいつでもどこでも起こり得るとすれば、問題は、普天間基地の返還移転で解決するということもあり得ないのです。
問題は普天間基地の撤去、辺野古への移転で終らないこと、即ち「反新基地」、そして沖縄にとって緊急の課題である島の人たちの生活の再建を強くうったえた玉城デニーさんが、知事に再選されました。沖縄の、玉城デニーさんの知事選のうったえで、たとえば兵庫・大阪などでは聞こえてこないのは「だれひとりも取り残さない」「誇りある豊かな沖縄」などの言葉です。政治が政治の言葉ではなく、人として生きる人の言葉として受けとめられ、うったえる言葉になります。「反新基地」は、沖縄島で生きる人たちの、切実な生活者の言葉としてうったえられ、共有されるのです。その結果が、「玉城氏再選」「反新基地訴え信任」だったりします。にもかかわらず、「政府」は「『辺野古唯一』は変らず」と、「安倍、菅両政権の路線を継承する」とし、更に、沖縄振興予算」で圧力をかけています。「玉城氏は23年度沖縄振興予算の概算要求で、3000億円台復活を求めたが、内閣府は知事選告示直前に2798億円とする方針を決めた。22年度比で200億円の大幅減に対し、玉城氏周辺は『政府の言うことを聞けとの脅しだ』と反発していた」(9月12日、沖縄タイムス)。
そうして「政府の言うことを聞け」は脅しではなく、政府の言うことを聞けを、南西諸島の島々で進めているのが、島の要塞化「住民用の避難シェルター整備」です。「政府が、台湾海峡や南西諸島での有事を想定し、先島諸島などで住民用の避難シェルターの整備を検討していることが分かった。離島では住民が実を隠せる既存施設が不足しており、対応強化が必要だと判断した。年末までに改定する「国家安全保障戦略」では、国民保護の対応策充実を明記する方向で調整する」「関係者によると、シェルター整備の候補地として、石垣市など複数の自治体が浮上。弾道ミサイル攻撃などに備え、地上設置型や地下埋設型の防空施設をつくる案が検討されている」「石垣市、竹富、与那国両町でつくる八重山市町会の中山義隆会長は7月に県庁を訪れ、有事の際の住民避難の支援や、シェルター整備を図るよう県側に要請していた」(9月16日、沖縄タイムス)。
もし、「台湾海峡や南西諸島での有事」「先島に避難シェルター」が「本気」だとすれば、別に「有事」で「石垣市、竹富町の住民と観光客ら計約6万5千人を民間機で輸送」などのことが「本気」だとすれば、その時に起こる、戦争による「破壊」についても、「本気」で答える、ないしは明らかにする必要があります。もし「本気」で「本当」にそれらの島々が「有事」になったとすれば、たとえばシェルターが「地上設置型」であれ「地下埋蔵型」であれ、それ自体が破壊される可能性があります。そして、シェルター内で一時的に生きのびることがあったとして、それらの島の人たちの生活基盤の多くが破壊されることになります。それこそが、起こってしまった場合の「有事」です。「悠々」シェルターで避難生活などということはあり得ないし、もしそこで生きのびることができたとしても、残るのは島々の人たちの破壊された生活です。
どうして、そんなことが「先島諸島」の住民だけに起こるのか。起こることが求められるのだろうか。他でもない、兵庫でも大阪でもない「だれひとり取り残さない」「誇りある豊かな沖縄」を、沖縄の知事として選ぶ、沖縄の人たちだけに求められるのか。
事がらははっきりしています。「有事」を想定し、それを先島諸島及びそこで生活している人たちに求め、強いるのではなく、だれひとり取り残さない「日本」、誇りある豊かな「日本」を求めるのであれば「有事」力の誇示ではなく、心を尽くし出会いを重ねることにこそ、力が注がれるべきであるように思えます。その要の場所・島でありたいと願い続けてきたのが沖縄「万国津梁」の島なのですから。
(次週へつづく)
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