(前週よりのつづき)
特定復興再生拠点区域は、放射性物質で帰還困難区域になっている区域の中に、まさしく点のような「拠点」を設けるというものでした。「復興」が人の生活の復興であるとするなら、拠点だけで生活が成り立つ訳がありませんから、形だけの復興を演出しようとするのが、この「復興拠点」です。当然、生活の成り立たない拠点に、人が戻ってはきませんでした。そして、その拠点の整備も遅々として進んでいません。それが前掲の「福島復興拠点整備率13%、帰還困難区域除染遅れ、検査院指摘」(2月4日、毎日新聞)です。「…東京電力福島第一原発事故で帰還困難区域となった自治体が、居住可能な特定復興再生拠点区域(復興拠点)を置くために作成した復興再生計画で示した事業の完了率が10%台にとどまっていることが、30日、会計検査院の検査で判明した。除染などの遅れにより、完了率が低調になっているとみられる」(前掲毎日新聞)。ただ、指摘されている「居住可能な特定復興再生拠点」は、そもそもが人の生活のあるべき姿とかけ離れているのは、「居住」というものは、多様な人間の営みであって、それからはかけ離れているのが、特定復興再生拠点区域という計画であることです。
何よりも、そこは、帰還困難区域となってしまった場所です。更に言えば、帰還することも、そこで生活することもあってはならない場所です。にもかかわらず、帰還困難区域の真っ只中に、「点」のように設けられるのが復興拠点です。どんなに立派に拠点があっても、そこが拠点と言い得る為には、そこから見通せるもの、広がりがあって初めて拠点と言い得るはずです。そこが「点」としての復興拠点であらざるを得なかったのは、そこからは、どんな意味でも広がりは展望できないからです。
それを阻んでいるのが、50m㏜/年以上の放射性物質の世界であることです。
す。「…市町村長が住民の帰還意向などを踏まえ、新区域の範囲設定や公共施設整備などを盛り込んだ復興再生計画を作成する。首相の認定を受けられれば、特例措置として国費負担で除染などを実施し、道路などのインフラ整備を代行する案が有力になっている」。だってと言うか、でも、人が人として「居住」する為に必要なのは、「公共施設」や「道路」などが必要であるのは、もちろんですが、そこが人が人としての生活が成り立つ、生活しやすい場所であることです。しかし、東電福島の事故で区分けされた、中でも、帰還困難区域は、どこをどう見ても、考えてみても、生活しにくい、生活したくない場所です。見ること、触ることなど、感じることはできないが確実にそこにある危険、それが帰還を困難にしているのだとすれば、誰が一体そこに戻りたいと思うだろうか。特定復興拠点「整備率13%」であるのは、誰もそれを望まない、迫るものがないからです。そして、何よりもそれを阻んでいるのが、50m㏜/年を超える放射性物質です。
という、特定復興再生拠点、そして更に計画されている「帰還居住区域」の為に実施されるのが放射性物質の除染です。「除染は日常生活で受ける放射線量を減らすため、放射性物質が付いた土や草を取り除いたり、土で覆ったりする作業だ。作業に特殊な技術は必要ないが、数千人規模の作業員を確保しなければならない」尚、「法律に基づく除染関連の事業は▷除染▷汚染廃棄物処理▷中間貯蔵施設▷特定復興再生拠点区域の四つの事業に分かれる。検査院によると、震災以降、21年度までに計5兆1600億円の予算が使われた」(2月4日、朝日新聞)。
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