(前週よりのつづき)
言われているように「除染」は、「日常生活が受ける放射線量を減らすため」であるとされるように、それを実施したとしても、できるのはそれを「減らす」ことです。しかも、実施されているのは、放射性物質が降り注いだ区域の一部だけです。森林に隣接している村や町の、その多くを占める森林の除染は実施されていません。そこに分け入って、「作業に特殊な技術は必要ないが…」しかし、森林に分け入って「放射性物質が付いた土や草を取り除いたり」という、そもそもその作業、手作業も不可能で、手のほどこしようがありません。森林の除染は、元々念頭に置かれませんでしたし、実施もされませんでした。多くが森林に隣接する村や町であったにもかかわらずです。ですから、たとえ村や町に復興再生拠点を設け、そこを集中除染したとしても、隣接する森林でそのままになっている放射性物質は、人が勝手に作った境界(除染実施区域)を超えて、流れ込んできます。
前掲の新聞が示す(2月4日、毎日新聞)「福島復興拠点整備率13%」であるのは、その「仕組」が、東電福島の事故で放射性物質が降り注ぎ、村や町で人が住めなくなった事実・現実が踏まえられていないからです。
「福島県の▷双葉町▷大熊町▷浪江町▷富岡町▷飯舘村▷葛尾村――の6町村が17年9月~18年5月、計画の認定を受けた。計画では産業団地や駅周辺の開発、上下水道や道路といったインフラの整備などに取り組むとし、国が優先的に除染を進める仕組みとなっている」。
しかし、その拠点が、除染の実施がそもそも不可能である森林に取り囲まれて、そこからの放射性物質の飛来を、どんな意味でも止めることができないとしたら、そして多くは人が戻るのが限られているとしたら、復興再生拠点は「絵に描いた餅」以上ではありませんし、「…13%」の数字がそれを物語っています。
現時点(2023年1月)で、5兆1600億円を費やして実施されてきた除染の、その結果の汚染土壌、廃棄物が主として集められているのが、中間貯蔵施設です。危険だからと除染された、汚染土壌や廃棄物の「中間」貯蔵に選ばれたのが、事故の原発に隣接する双葉町と大熊町です。
(次週につづく)
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