IAEA(国際原子力機構)が「海洋放出計画は『国際的な安全基準に合致する』」との最終報告書を国・政府に提出したことで、放射性物質トリチウムなどを含む、東電福島から環境中に漏れ出している「汚染水」の海洋放出は、放出時期を決めるだけになってきました。
東電福島から、2011年3月の事故後、環境中に放出され続ける処分不能の放射能汚染水を、貯蔵する場所・タンクの空き容量の限界が予測される中で決められたのが海洋放出です。
決めたのは、国・政府です。「東京電力福島第一原子力発電所で増え続ける放射性物質を含んだ処理水の処分に関し、政府は13日、関係閣僚会議を首相官邸で開き、海洋放出の方針を正式決定した」(2021年4月14日、福島民報)。
一方、それを受け原子力規制委員会は「基準を満たしている」として、「処理水海洋放出を認可」しました(2021年7月23日、福島民報)。「原子力規制委員会は22日、臨時会合を開き、東京電力福島第一原発でたまり続ける処理水の海洋放出の設備や手法に関する計画を正式に認可した」。
それからおよそ2年、海洋放出の設備工事がほぼ完了するのを受け、処理水報告書(IAEA)で「計画通りの放出であれば、人や環境に与える影響は『無視できるほどごくわずか』」と評価し、海洋放出の決定を、国・政府にゆだねます。
・東京電力福島第一原発の処理水を海洋放出する日本の計画、国際的な安全基準に合致
・処理水放出による環境への放射線の影響は、無視できるほどごくわずか
・海洋放出は日本政府による国家的決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも、指示するものでもない
・IAEAは国際社会に透明性と安心感をもたらすため、放出開始後も監視活動を続ける
こうしたIAEAの報告書を待ち構えていたかのように、そしてこれを「タテ」に東電福島の、言うところの「処理水」は海洋放出されることになります。(以上、7月5日、福島民報)。
ただ、「処理水」放出について根拠になる「国際基準に合致」は、そもそも原子力発電所は、その稼働によって、放射性物質・汚染水を海洋に放出するのが自明の国際的な安全基準になっているということでもあるのです。ただ、この場合の「安全」は、その場合の「処理水の影響は、無視できるほどごくわずか」以上のことは言わないし、根拠を示すこともありません。
(次週につづく)
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