以下に紹介するのは、「ガザの極限の人道危機」に対し、「即時停戦と人道支援を訴える中東研究者のアピール」です。こうした「アピール」にもかかわらず、人道危機は顧みられることはなく、危機を超えガザのパレスチナ人たちに起こりつつある秩序の崩壊も伝えられています。
だからと言って、言うべき言葉を放棄していい訳ではありません。
たとえば、旧約聖書「伝道の書」は、こんな言葉を書きしるしています。
「…賢い者は愚かな者になんのまさるところがあるか。また生ける者の前に歩むことを知る貧しい者もなんのまさるところがあるか」(6章8節)。
そして願うことがあるとすれば、たとえば以下のようになります。「私はこの暴力を明確に強く非難するし、遺憾に思う。そして同時に、他の多くの人々と同じように、この地域における真の平等と正義、すなわちハマスのような集団組織を消滅させ、占領を終らせ、新しい形の政治的自由と正義が開花する世界を想像し、その一人でありたいと願う」。(以上、アピールと、デュディス・バトラーの闘う一人の願いは、岩波「世界」12月号より)。
ガザの事態を憂慮し、
即時停戦と人道支援を訴える中東研究者のアピール
中東のパレスチナ・ガザ地区をめぐる情勢が緊迫、深刻化しています。私たちは、中東の政治や社会、歴史、中東をめぐる国際関係等の理解、解明に携わってきた研究者として、また中東の人々やその文化に関心を持ち、中東の平和を願って様々な交流を続けてきた市民の立場から、暴力の激化と人道的危機の深刻化を深く憂慮し、以下のように訴えます。
一、即時停戦、および人質の解放。
二、深刻な人道上の危機に瀕しているガザを一刻も早く救済すること。ガザに対する攻撃を停止し、封鎖を解除して、電気・水の供給、食糧・医薬品等の搬入を保証すること。軍事作戦を前提とした市民への移動強制の撤回。
三、国際法、国際人道法の遵守。現在進行中の事態の全局面において人道・人権に関わる国際的規範が遵守されることが重要であると共に、占領地の住民の保護、占領地への入植の禁止等を定めた国際法の、中東・パレスチナにおける遵守状況に関する客観的・歴史的検証。
四、日本政府をはじめとする国際社会は、対話と交渉を通じて諸問題を平和的・政治的に解決することを可能とする環境を整えるため、全力を尽くすこと。
ガザをめぐる深刻な事態は、戦闘・包囲下に置かれた無数の市民の命を奪い、多大な犠牲を強いているだけでなく、もしこれを放置すれば中東の抱える諸課題の平和的解決が半永久的に不可能になり、中東、さらには世界全体を、長期にわたる緊張と対立、破局に引きずりこみかねない危険なものです。日本は戦後、パレスチナ問題に関しては中東の人々の声に耳を傾けて欧米とは一線を画した独自外交を展開した実績があり、中東との相互理解・友好を深める交流は、市民レベルでも豊かに展開されてきました。このような蓄積・経験を今こそ生かし、人道的悲劇の回避と平和の実現のために力を尽くすことを呼びかけます。
2023年10月17日
呼びかけ人
飯塚正人、鵜飼哲、臼杵陽※、大稔哲也※、岡真理※、
岡野内正、栗田禎子※、黒木英充※、後藤絵美※、酒井啓子、長沢栄治※、長沢美抄子、奈良本栄佑、保坂修司、三浦徹、
山岸智子、山本薫(※呼びかけ人代表)
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