重大事故の東電福島の「廃炉」に向っての最新の状況と理解をまとめているのが「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃炉のための技術戦略プラン2023」(2023年10月18日、原子力損害賠償・廃炉等支援機構)です。
以下、その「概要版」を一読しての感想です。
重大事故の東電福島が「廃炉」でなくてはならないのは、事故から先がある為には「復興と廃炉の両立」が絶対条件だからです。
「3.福島第一原子力発電所の廃炉に向けた技術戦略」では、現状と求められる対策について、以下の4点があげられています。
3.1デブリ取り出し
3.2廃棄物対策
3.3汚染水・処理水対策
3.4使用済燃料プールからの燃料取り出し
まとめとなっている「復興と廃炉の両立」の「復興」は、強引に進められている避難区域の「帰還困難区域」に強引に「特定復興拠点」を設け、行政機能、住民の帰還などが進められていますが、「廃炉」については、3.1~3.4まで、すべてが「…福島第一原子力発電所における廃炉に特有の非常に高い不確かさゆえに」「今後想定される、より大規模かつ複雑であり、不確かさが大きい高難度プロジェクトにおいて」と、いわゆる「復興」が進めば進むほど、その落差は大きくなるばかりです。そして、概要は、それを担う東電に対して「…他のプロジェクトに比べるとより高度の胆力・人間力が求められることは論を待たない」などとしています。
しかし、事故現場は、事故から12年余り経った現在も、事故は継続中で、言われている「3.1燃料デブリの取り出し」も、「手の付けられない」状況が続いています。デブリ「取り出し」については「3.1.3.4取り出し規模の更なる拡大」などと述べられていますが、すべては検討するだけで、ほぼ何一つ具体化してはいません。
なのに示されているのが「取り出し規模の更なる拡大に係る各工法の一例」として、3つの案を図示し、更に「課題と対応策」も示されています。たとえば、その一例の一つ「気中工法」(RPV注水)案の「課題と対応策」の「要因①」では、「PCV・RPV内での全ての作業が遠隔操作装置を用いた作業となることが課題。想定も含め必要になる作業を特定した上で、遠隔操作装置の機能、構造、安全要件を設定すべきである」「PCV・RPV内が極めて高線量」だから。続く要因②も「要因②:建屋内作業は一部人手作業が可能であるものの、その場合は環境改善とともに被ばく管理が課題。線量低減が困難な場合は遠隔操作装置を用いた作業となるため、要因①と同様な対応が必要である」「原子炉建屋内が高線量」だからで、すべては高濃度に汚染され、汚染源の特定すらできないのが、東電福島の重大事故なのです。
しかし「復興と廃炉は両立」ですから、「技術戦略プラン」は、そのプランを語り続けることになります。
ただそうだとしても、東電福島の事故対策、ましてや「廃炉」が具体的には何一つ進まないのは、その作業を進めるにあたっての「安全確保」が、進めることとそもそもが矛盾しているからで、それこそが東電福島の重大事故なのです。
ですから、「安全確保の基本方針」その確保にあたって「安全上の特徴(特殊性)を十分に踏まえる」として挙げられているのが、以下の5点です。
・多量の放射性物質(内部被ばくに大きな影響をもつα核種を含む)が通常にない様々な形態(非定型)で非密封状態にあること
・原子炉建屋、PCVといった放射性物質を閉じ込める障壁が完全でないこと
・これらの放射性物質や閉じ込め障壁の状況等に大きな不確かさがあること
・現場の放射線レベルが高い等の制約から現場へのアクセスや現場情報を得るための計装装置の設置が困難であること
・現状の放射線レベルが高く、また閉じ込め障壁等の更なる劣化が懸念されることから廃炉を長期化させない、時間軸を意識した対応が必要なこと
(次週につづく)
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