(前週よりのつづき)
もちろん、3号機だけでなく、燃料が熔融したとされる1~3号機すべてにおいて格納容器内は線量が極めて高く、もちろん「人が立ち入っての作業は不可能」で「遠隔ロボットなどを用いた」「内部調査」をしているものの、その作業も「一進一退」の状況が続いています。
そんな状況ですから、「日本原子力学会は2020年7月、東京電力福島第一原発の廃炉が完了し、敷地を再利用できるようになるには『最短でも100年以上かかる』とする報告書を公表」しています。(
一方で、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の小委員長「更田豊志は9日、東京電力が目指す福島第一原発3号機の目指す2030年代初頭の溶融核燃料(デブリ)取り出し開始を巡り」「容易ではない」としています。
こうした両者の大きな隔たりはあるものの、「事故から13年余りが経過した今なお、1グラムも取り出されていない」ことから、原子力学会の報告書がどんな意味でも現実的です。(福島民報6月4日から6日「霞む最終処分、第8部デブリの行先」。)
そうして、デブリの取り出し及び取り出したデブリの行先、保管など全く見通せず、廃炉となると、全く現実的ではないにもかかわらず、始まっているのが「取り出し工法の説明会」です。
それはすべて、東電福島の事故の廃炉があり得ること、事故の終息に、すべてのシナリオが描かれていること、それを前提にすべてが進められていることを意味します。
東電福島の事故の後、降り注いだ放射線量をもとに、そこで人間が暮らしを取り戻せるかどうかの区分がなされました。
・帰還困難区域 50ミリシーベルト/年以上
・居住制限区域 20~50ミリシーベルト/年
・帰還準備区域 1~20ミリシーベルト/年
いわゆる帰還準備区域も、東電福島の事故までは、人間が居住する線量であるとは考えられていませんでした。そこを、除染することで線量を20ミリシーベルト以下とすることで、避難解除されて行きました。
これらの放出も事故までは「人間が居住する線量」とは考えられていませんでしたが、帰還は居住制限区域にも拡大され、「除染」が実施されれば、線量は度外視して避難が解除されて行きました。
更に、帰還困難区域には、「特定復興再生拠点区域」が指定され、その「区域」の除染で、区域指定が外され、避難が解除されました。拠点という「点」が除染されることで、そこが復興の拠点となり得るというのは、どんな意味でも元の区域指定及びその定義に矛盾しています。
そして何よりも、被曝という人間の健康にとってあり得ないことを、その本来の基準をねじ曲げた被曝線量さえも、一切の根拠もなく否定し去るのが、「特定復興再生拠点区域」なるものに示されており、それは、人間の尊厳への冒涜なのです。
そんな状況で始まろうとしているのが「帰還困難区域名称議論」です。「平木大作復興副大臣は17日の参院東日本大震災復興特別委員会で、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域の今後の在り方について名称変更も含めて議論する考えを(質問に応じて)示した」「(質問した)若松氏は、将来的に帰還困難区域全域の避難指示を解除するとの政府方針に触れ、『帰還困難区域の名称が帰還できないという否定的なイメージを与えてしまうと指摘した』その上で『将来帰還できるという希望を持てる名称に変更すべきだ』と主張した」(5月18日、福島民報)。
帰還困難区域については、その「復興拠点化」と、その名称での避難解除、更に飯舘・長泥では「区域外」に堆肥製造施設などを設け、それを前提に指示解除を目指すなどのことが実施されたりしています。
しかし、東電の事故の後の避難指示とその場合に設けられた区域は、そこに実際降り注いで、それを計測した結果に基づいて、国の内外で基準となっている被曝線量を元に、区域が決められたこと、その本来の意味「人間の健康をないがしろにしてはならない」という、そんなあたりまえのことを踏みにじるのが、前掲の参議院での議論であり、飯舘・長泥などで起こっていることです。(5月14日、福島民報)。
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