(前週よりのつづき)
汚染水そのものは、原子炉からも漏れ続けていますが、海洋放出によって、その量は少しは減って、「空になった保管タンクの解体」も始まろうとしています。
しかし、言われてきた処理水の海洋放出は、東電福島の事故の、その事故処理が迫られる放射性物質のほんの一部分にしか過ぎません。前掲の途方もない量の中間貯蔵施設に運び込まれた、除染等によって発生した汚染土壌はもちろん、東電敷地内では、高濃度の汚染物質が増え続けています。
その一つが、多核種除去設備(ALPS)で浄化する際に出た汚泥です。「…処理水を入れた保管タンクが林立している。その一角、谷間のような所に灰色の箱が並ぶ」「箱の中身は汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化する際に出た放射性汚泥(スラリー)だ。HIC(ヒック)というポリエチレン製の特殊容器に入れた上でコンクリート製の箱に収め、周囲の空間放射線量の上昇を抑えている。HICは約3立方メートルで、1カ月に平均14基ほどのペースで増え続けている。現在の保管容量は4570基だが、4月25日時点で既に4347基、全体の95.0%に達した。汚泥は処分方法が定まっておらず、東電の広報担当者は危機感を隠さない」(5月24日、福島民報、「霞む最終処分、第7部、原発構内の廃棄物」)。
「廃棄物」は、ALPSのスラリーとは別に、その前段階のセシウム吸着塔で吸着させた高濃度のセシウムのステンレスタンクも増え続けていますし、そもそもが、いわゆる廃炉と言うか、そもそもの事故対策のすべてにおいて、大量の放射能汚泥物質がその都度の事故対策で増え続けています。
「…東電は敷地内を襲った津波や原子炉建屋の水素爆発で壊れたコンクリート、配管などといったがれき類、作業員が着けた保護衣・手袋など、放射線量の比較的低い廃棄物を構内で大量に保管している。これら低線量の放射性廃棄物も、廃炉作業の進展に従って増え続けている」(5月26日、福島民報)。
「廃棄物を構内で大量に保管」していたり、「これら低線量の放射性廃棄物も、廃炉作業の進展に従って増え続けている」したりするのは、東電福島の重大事故が何を意味するのか、しかもその事実は事故の当事者はもちろん、広くこの国の人たちに容赦なく突き付けられている「何か」ではあるのです。
普通、「作業の進展」は、進展ですから、そのことによって何ほどかは事態が改善すると考えられます。なのに、東電福島では、作業の進展によって「増え続ける」ものがあります。
たとえば、前掲の多核種除去設備(ALPS)が稼働する時に生まれる「ポリエチレン製の特殊容器」は、4月25日現在で、4347基、月平均で14基ずつ増え続けています。この容器は、ALPSが稼働し続ける限り増え続け、その処理は放射性物質である限り不可能なのです。
要するに、東電福島の事故で、環境中に放出させた放射性物質は増え続けるよりないのです。例えば、その唯一の「解決策」が、ALPSによって多核種除去したとされる汚染水を処理水と称して、そこで汲み上げた海水で薄めて海岸に放出することだったりします。これって、処理でないのはもちろんですから、「海は泳げねぇ 魚は食えねー どうすんだ」になっています。
こうして、「…廃炉作業の進展に従って増え続ける」途方もない廃炉作業、という名の今も続く緊急の事故対策に、途方もない対策費が使われています。
(次週へつづく)
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