(前週よりのつづき)
たとえば、今回のような作業におけるミスは、言うところの初歩的なミスでは決してありません。
もし、ミスなどと言うものがあり得るとすれば、その元をたどって行けば明らかなのは、原子力発電所の稼働ということになります。
繰り返し言及してきているように、原子力発電所の稼働は、処理不能な使用済核燃料を生み出します。それらの処理にあたる作業員、そして、原子力発電所を定期的に点検する作業の「作業員」も、多かれ少なかれ、必ず被曝します。それらの人たちは、東電の社員ではなく、「協力企業」の作業員です。
初歩的なこと、そして「初歩的なミス」は、そうして誰かの被曝を強いる、原子力発電所の稼働そのものです。
そして、あれこれ初歩的なこと、「初歩的なミス」は、そうして誰かの被曝を強いる、原子力発電所の稼働で生まれる「電力」を、ふんだんに使って生活することが当たりまえになっている人たちの日常もまた、そのまんま「初歩的なミス」であると言わざるを得ません。
・8月27日 「第一原発3号機、原子炉建屋周辺の建造物、解体撤去に10年超」
・8月25日 「原発事故時の屋内退避強化、内閣府155億円要求」
・9月2日 「青森の中間貯蔵今月にも開始、拭えぬ無期限の懸念、再処理工場遠のく完成」
・9月5日 「第一原発デブリ取り出し延期、東電社長『管理不十分』経産省へ再発防止報告」
・9月6日 「デブリ取り出し延期『単純作業の確認不足』東電原因説明、改めて謝罪」
・9月11日 「除染土再利用『基準に合致』IAEA、最終報告で評価」
・9月18日 「東電デブリ採取映像送れず、カメラ不具合、原因特定急ぐ」「デブリ採取映像送れず、東電状況説明に終始」「除染土再利用、基準案公表、環境省、埋立て処分案も」
・9月19日 「デブリ取り出し映像トラブル、作業再開見通立たず」
・9月20日 「デブリ採取装置引き抜きへ、東電カメラ映像不具合調査」
・9月21日 「使用済み核燃料24日搬出、柏崎原発から青森に、東電、国内初、中間貯蔵施設へ」
「初歩的なミス」で、延期になっていた東電福島2号機の「デブリ取り出し、『…溶融燃料(デブリ)の試験的取り出し』」で、「採取用のパイプ型装置の先端付近にあるカメラの映像が送信できない不具合」で作業が中断されることになりました。(9月18日、福島民報)。
今回は、「初歩的なミス」ではなく、「念には念を入れ」た結果の「不具合」とされています。たぶん、言われている「デブリ取り出し」は、「デブリがあるとされる底部周辺で最大毎時7.6ミリシーベルトの高線量が確認」されている場所で、その確認はもちろん、あらゆる作業が、高濃度の放射線量によって難しい場所なのです。たとえば「不具合」で「パイプ引き抜いて」不具合となったカメラを確認すると言っても、その作業も、引き抜いたカメラも新たに高濃度に汚染されていますから、その作業もまた難しくなります。
「初歩的なミス」も「不具合」も、燃料が熔融する重大事故と、その事故対策がいかに困難であるかを物語る以外のなにものでもないのです。
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