ポオランドでは その正月
犬が一ぴきつかまった。
やせこけた首に一枚
紙の札がかかっていた。
助けてください! と書いてある。
ぼくたち道に迷っています。
みんなで55人です。
この犬についてきてください。
射ち殺さないで。この犬だけが
ぼくたちの居場所を知っています。
犬が死ねば
ぼくたちもうおしまいです。
字は子供の手で書かれていた。
百姓たちがそれを読んだ。
一年半もまえのこと
犬は飢え死寸前だった。
「劫火と瓦礫」のパレスチナ・ガザに閉じ込められ更に狭い地域に移されようとしている人たちは、およそ200万人。そのうちの約40%、80万人は子どもたちです。人間の生活と言われるものの条件をほぼすべて奪われ閉じ込められて、「飢餓」の結果の食料を奪い合う子どもたちです。
ブレヒトが「子供の十字軍」で「…信仰も希望も足りなくはない。足りないのはただ肉とパンだ。とがめるな 一夜の宿さえゆるせば 子供らも盗みはしなかった」と書く子どもたち。
そんな、ポーランドの子どもたちの90年後のパレスチナ・ガザ、そこで戦火と飢えにさらされる子どもたちのことを、世界は知らない訳ではありません。
確かなのは、たとえ断片的な報告であっても、それに目を凝らし、少なからず想像力と意思で、つなぎつなぎであっても、たとえばブレヒトの「子供の十字軍」とは異なる「子どもの物語」を書き残すことであるように思えます。
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