忘れっぽくて困っています。今、いちばん困っているのは耳の“しもやけ”のことです。暖かい間の手当を忘れていて、この程度の寒さでもう耳はしもやけです。
忘れるということでは、12月8日の朝に教えられてその日が、太平洋戦争の始まった大事な日であることに気が付きました。1941年12月8日に日本軍の真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まりました。65年後の2006年12月8日の新聞(産経、読売、毎日、朝日)をながめてみました。ながめてみたところによれば、この国の新聞は全く忘れっぽいという訳ではないらしいことが解りました。
産経新聞は社説の「真珠湾から65年/語る体験から学ぶ歴史」で、「3年8ヶ月に及んだ未曾有の大戦で、300万人もの日本人が犠牲となった」、「真珠湾から65年という節目にあたり『正論』メンバーたちの識者たちによる『真珠湾への道』という連載のことにふれ、「東京裁判が刻印したような汚辱の戦争だったのか?」を検証し、「『軍部の独走』ですべてを片付け」、「一般国民は受難者に過ぎない」とする見方を見直そうとしています。確かにあった戦争で、“300万人もの日本人が犠牲”になったことは忘れないほうがいいし、産経新聞の書かない、東アジアの人たち2000万人があの戦争で犠牲になったことも忘れない方がいいのです。
読売新聞は「編集手帳」で12月8日のことを少しだけ触れています。「戦争は雪の玉に似ていよう。最初に雪を丸めたのが、無謀で乱暴な軍部」であったとしても、いったん転がりだせば、平和を愛する人、良識ある人をも巻き込んで大きくなっていく。だから転がしてはいけない。始めてはいけないのが戦争だろう」と、どこかよそ事のように書いています。“転がしている”ということだったら、この国は戦争という雪の玉を新たに既に転がし始めています。忘れてはならないのは、2003年12月“イラク復興特錯法”の名の下に、完全武装した自衛隊員をイラクに派兵したことです。同じように忘れてならないのは、その当時、アメリカによるイラクへの武力行使を“同盟国”として他のどの国より積極的に支持したことです。戦争という雪の玉を転がして、結果その雪の玉はどんどん大きくなり、15万人を越えるアメリカ軍を投入しても、「フセイン政権下、今よりまし『イラクは内戦』」とアナン国連事務総長が言わざるを得ないほどイラク戦争の収拾は難しくなっています。
毎日新聞は、たぶん映画“硫黄島”がらみで、「戦後60年の原点/番外編、硫黄島の攻防を再考する」を特集しています。こんな特集をするくらいですから、12月8日が真珠湾攻撃・太平洋戦争開戦の記念日であることを忘れている訳ではありません。ただ、12月8日という日付はどこにも見当たりませんから、ほぼ忘れていると言われたとしてもいたしかたがありません。
朝日新聞は「天声人語」で、やはり映画“硫黄島”がらみで「戦争は妻や子や親を思いやる当たり前の青年同士を戦わせ、時には英雄の役回りまで強いる。65年前の今日、日本軍の真珠湾攻撃で、太平洋戦争が始まった」と書いています。65年前の12月8日の真珠湾攻撃がなければ、たとえば硫黄島の日米50000人の戦死はなかったのですから、12月8日を忘れないのはとても大切です。朝日新聞は「写真が語る戦争/歴史と向き合う、真珠湾への道」を別の特集をしています。
忘れっぽい国民の忘れっぽい国の忘れっぽい新聞ですが、ざっとながめたところによれば、1941年12月8日が日本軍による真珠湾攻撃の日であること、2006年12月8日がその記念の日であることを、全く忘れている訳ではないことが解りました。
で、1941年12月8日始まった戦争とその結果について、いくつか忘れてはならないことを挙げてみます。
1941年12月8日の「米英両国に対する宣戦の詔書」は「・・・朕、茲に米軍及び英国に対して戦いを宣す。朕が陸海将兵は、全力を奮って交戦に従事し、・・・朕が衆庶は、各々の本文を尽くし、億兆一心、国家の総力を挙げて、征戦の目的を達成する・・・を期せよ」と言い、そうして戦争にならざるを得ない理由を、たとえば次のように言っています。「・・・中華民国政府、さきに帝国の真意を解せず、濫に事を構え東亜の平和を撹乱し、遂に帝国をして千戈を執るに至らしめ・・・」。“侵略”した国の人たちからの反撃を“濫に事を構え”と言ってしまう感覚で、全く収拾が付かなくなった結果の宣戦布告、つらつら言っているのが“宣戦の詔書”であることは忘れてはいけないのです。そして、「終戦の詔書」が「・・・終に我が民族の滅亡を招来するのみならず、延て人類の文明をも破却すべし。斯の如くんば、朕何を以てか億兆の赤子を保し、皇祖皇宗の神霊に謝せんや・・・」と言っていることも忘れてはいけないのです。そして、これらのことの結果生まれたのが、日本国憲法であり、教育基本法であることを忘れてはいけないのです。
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