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小さな手大きな手

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2007年08月01週
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 手元にある、太平洋戦争でパプア・ニューギニアに派遣された一部隊のことを、一人の人が記録した手記に、一人の逃亡兵の死のことが書かれています。敗戦直前に逃亡したこの日本兵は、敗戦直後オーストラリア軍に投降するこの部隊によって発見され同行することになりますが、その途中で突然死してしまいます。敗戦に終わったとは言え、オーストラリア軍に投降する為に“移動”するこの部隊が、(約1,700人中生存者は430人)、戦争から解放されることになったことの安心感が手記の中でも描写されています。「トーナップ草原は先程のクナイボンボンで、大きな草は見渡す限り燃えてしまい、その黒い焼け跡には美しい青々とした緑の草の若葉があって1.2寸ばかり伸びかけていて、ちょうど春の野を行くような感じがあった」。そこに紛れ込むことになった逃亡兵は、敗戦の後もやはり逃亡兵とみなされます。“生きて虜囚の辱めを受けず”になっていた日本兵も、戦争に負けて、戦争が終わってしまえば、投降も捕虜になることも許されることになります。しかし、逃亡兵は許されないのです。「彼(逃亡兵)がそこで死ななければならなかったのは、この山野を非命のうちに幣れ、まだ鬼哭啾々として宙をさ迷う幾多の戦友の魂魄が彼の罪を憎む余り、彼がその侭故国に還るのを許さず・・・」。同じように無残な戦争に駆り出され、同じように飢餓の戦場を生き、同じように地獄を見たということではへだたりのなかったはずの“投降兵”は逃亡兵を許さないのです。戦争と言うものが無残なのは、ほぼ同じ状況を生きて同じ状況を見たはずなのに、投降兵が逃亡兵を許さなかったりすることです。
 そんな戦争のことの「第2次世界大戦下における日本基督教団の責任についての告白」が、その当時の教団議長鈴木正久の名前で出されるのは1967年3月のことです。敗戦からおよそ20年経っていました。この告白、いわゆる“戦責告白”はその後の日本基督教団をその賛否をめぐって2分し、今日に至っています。“戦責告白”は議案として“建議”された文書、そして“原案”、教団議長名で出されたいわゆる“戦責告白”にいたる経緯で内容が少しずつ変わっています。少なからず、戦争犯罪をえぐる"建議"の内容や意図は、いわゆる“戦責告白”になった時に、責任を“神の慈悲”にゆだねる内容になっています。「…わたくしどもの弱きとあやまちにもかかわらず働かれる、歴史の主なる神の摂理を覚え、深い感謝とともにおそれと責任を痛感するものであります」。「…心の深い痛みをもって、この罪を懺悔し主の許しを願うとともに」。(「第2次大戦下における日本基督教団の責任についての告白」)。
 たとえば、ここで問題になって責任を告白している戦争は、“補給”を断たれたまま飢餓で死んでいくよりない戦争の戦場のことです。だからと言って、その無残な戦争の戦場から離れることは、あらゆる意味で許されませんでした。そのときに、“生きて虜囚の辱めを受けず”と言われていたこのことは、“戦陣訓”(1941年、当時の陸軍大臣東条英機が示した“軍人としての行動規範”)によっており、軍人だけでなくすべての国民にそのことは要求されました。そして、同じ戦争の悲惨を“侵略される”ことで生きることになった、アジア・太平洋の国々、そこで生きる人たちにも強いることとなりました。“戦責告白”は、そんな戦争の責任の告白です。しかしそれが“歴史の主なる神の摂理を覚え、深い感謝とともにおそれと責任を痛感する”“心の深い痛みをもって、この罪を懺悔し、主の許しを願う”になってしまう時、こうして言葉を並べてしまうことで終わってしまうことになりました。
 手元にある戦争の手記の“逃亡兵”は“個人”としてその責任を問われ、たいした説明もなく突然死したことになり、死んで当然ということにもなっています。この逃亡兵が敗戦後であったにも関わらず、逃亡兵としてその個人の責任を問われ、その死が当然のこととして扱われるのであれば、戦責告白が問われなくてはならないのは、集団的な戦争の責任ではなくて、個人としての戦争の責任であり、個々の戦争犯罪を裁くことでなくてはならないはずです。そうでないとすれば、結果的に“戦責告白”の果たした役割は、戦争責任を問うことの消極的とは言え、回避に他ならなくなります。
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