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2007年08月02週
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 羽化したクマゼミが地上で過ごすのはほんの4、5日のことです(と言われたりしますが、雌雄が出会って交尾・産卵があるとすればもっと長い)。しかし、土の下で過ごしたおよそ6,7年を加えるとクマゼミの一生はずいぶん長いのです。クマゼミの雌が産みつけた木の枝のたまごが孵った幼虫はそろそろはい下りて、その枝の木の根元から遠くない土の下にもぐりこみます。これらのことのほとんどは、人々に気付かれないところで営まれています。そうしてもぐりこんだ土の中で、“その時”を待つクマゼミのもう一つの生活が始まります。“その時”を待って“その時”がきたクマゼミの蛹は、地面に穴をあけ、ゆっくりと木に登り、鋭い爪を木の枝や幹に食い込ませ体が支えられたことを確かめてから“羽化”を始めます。“羽化”にかかるのは、たった1時間余りのことですが、その一部始終は、長い長い時間が経ったことを思わせるくらい“劇的”で、時には“力技”の繰り返しだったりします。
 そうして始まったクマゼミの、地上での生活はあっけなく終わります。地面に落ちて動かなくなったクマゼミには、いっぱいのアリが群がり、1日も経たないうちに跡形もなくなってしまいます。ただ消えてしまったのではなく、群がったアリたちによって、もう一つの新しい生命の物語に引き継がれます。いくつもの試練を生き延びて、生命の連鎖のひとこまを担うクマゼミのことも、見つめてみれば語りつくせない物語が隠されています。
 いつの頃からかこの国では、短い言葉が踏み絵になって、“あれかこれか”“賛成か反対か”が問われるようになりました。しかし、多くのことはいきなりではなく、そのことが起こってしまう長い道のりがあって、その解決は長い時間をかけて解きほぐすようにでないと次の一歩にはなりにくかったりするものです。あれかこれか、賛成か反対を短い言葉で迫ることは、政治的な言葉の世界でも仕掛けられ駆使されてきました。「小泉前首相は『ワンフレーズ・ポリティクス』と批判されたが、政治はワンフレーズでなければだめだ。政策は複雑で難しい。国民に全部理解してもらうのは無理。エッセンスを明確に伝える能力が問われる。」(竹中平蔵談、朝日新聞、2007年8月3日)。“エッセンスを明確に伝える”ということで使われた政治的な言葉が“拉致問題”であったり“改革”だったりしました。しかし、それらいずれも“種”がまかれたところまでの長い道のりをさかのぼり、そしていくつもの局面を時には耐え、時には言葉を選び駆使することでしか先が見えるものでないのは、そのいずれもが停滞している状況がそのまま物語っています。
 広島で原爆に遭い、この1年間で死亡が確認された5221人が加わって、広島の原爆による死者は253,008人になりました(2007年8月6日、朝日新聞)。長崎で原爆に遭い、この1年間で死亡が確認された3069人が加わって、長崎の原爆による死者は143,124人になりました(8月9日、朝日新聞)。1945年8月6日、1945年8月9日からおよそ62年経って原爆によるとされる死者は増え続けています。いつまでも原爆による死者の記録は増え続け、いつまでもいつまでも傷を負って生きる人たちのことが終わりにならないのが原爆です。たくさんの人の命を奪い、一人一人の生きた営みをその時から62年間左右し続けて、広島で5221人、長崎で3069人が原爆による死者の数に加えられることになりました。
 「原爆の図」を描いた九木俊(と位里)は、絵本でもう一つの原爆「ひろしまのピカ」(小峰書店)を描いています。どんな絵の、どんな言葉をもってしても、原爆のすべてはもちろん、たった一こまも描ききれないことを肝に銘じながら。焼けただれた皮膚でうめく“焼けただれた皮膚”もその時の“うめき”も決して再現することはできません。確かなのは、再現することは不可能だし、再現してはならないことが、そこで起こってしまっていたことです。「ひろしまのピカ」の後記には、「原爆の図」を見た、北海道に住む“被爆者”との出会いのことが紹介されています。

 「・・・わたしは、ピカにあってから北海道に渡ったんです。北海道の人はみんな不親切ですよ。ピカの時の話をすると、『大げさに言うて、人の同情をひこうと思うとる』と陰口を言うのです。わたしはそれから、一口もピカのことを言わないことにしたのです。言ってやるかと思うたんです。」おばあさんは言い終わると目をふせました。マイクがそばにあることを知ると、おばあさんはそれをつかんで口にあて、「ここに来ている人たちなら信じてくれると思うんです。聞いてください。信じてください。」と叫びました。
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