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2007年11月04週
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“万能細胞”をその人の“体細胞から作成”に成功したことが話題になっています(「…京都大の山中伸弥教授チームと米ウィスコンシン大のチームが、それぞれ人の体細胞から『万能細胞』の作成に成功した。」、2007年11月23日、朝日新聞)。さまざまな細胞になれる“胚(はい)性幹細胞(ES細胞)”の作成は今までも実現していました。しかし、“他者(受精卵)”などを利用するため“倫理的”な問題や“拒絶反応”を避けるのは難しいとされてきました。しかし、その人の体細胞で作ってしまう“万能細胞”は、それらのことを避けることができるということで、大きな反響を呼んでいるのだそうです。


 で、万能細胞の“万能”にはちょっとひっかかってしまいます。多分、こうして作り出されることになって、さらにみがかれた結果を作られる完成度の高い万能細胞は再生医療などの現場では絶大な力を発揮することになるのでしょうが、それって限られた“一固体”内における働きのことではないのだろうか。結果その人が“再生”したとして、およそ60億人といわれる人が集まって、混沌(カオス)の極みのような歴史をきざんでいる、この星の人という生きものの関係において、この“万能”は、ちっとも万能ではないように思えてしまうのは、もちろん“シロウト”の浅知恵です。


 茂木健一郎の“解説”がおもしろくて「カオスの娘」(島田雅彦、集英社)を読んでしまいました。世界というものがその本来の成り立ちとしている“カオス”(混沌)と向かい合えなくなった時代に晒されて生きる少女(亜里沙・真理子)が主人公の物語です。その「カオスの娘」の時代(現在)に活躍しているのが携帯電話です。「そもそも、恋愛とは他者というカオスと向き合う行為」(茂木健一郎、「『ユダ』であり『キリスト』である道」、トリッパー、週刊朝日別冊)なのですが、携帯電話はそんな“カオス”から目をそらして、全く冒険ということなしに“レンアイ”をしてしまえる道具らしいのです。その“らしい”が“デアイケイ”というようなことであるらしくて、そんなものを“活用”し、他者を取り込み、取り込まれた結果の若いキリスト教の牧師の“犯罪”のことが話題になっています。携帯電話で出会った29歳と14歳がホントに出会って、そのホントがホントでないと理解できないまま“犯罪”になってしまったらしいのです。


 じゃなくて、君たちが向かい合っている事実は、恋愛であれ、ほんの一瞬先の未来であれ、“カオス”以外の何ものでないという当然のことを混乱させているのが、万能細胞の“万能”だったり、人という有限の存在が作り出した“万能に近い”と信じられている通信手段“ケイタイデンワ”なのです。
キリスト教には、神自身が語った“全能の神”という神の名前があります(創世記17章1節、出エジプト記6章3節)。そのことの意味や定義のことは、その神によってもほとんど述べられていません。キリスト教がその信仰を短い言葉で要約した“信仰告白”の一つ、使徒信条には「…我は天地の造り主、全能の父なる神を信ず」という言葉があります。こうして“父なる”とか“信ずる”が付け加わるのは、それなりの根拠があるとしても、そうなってしまった神はちっとも全能ではありません。"父なる"という意味や定義は狭すぎるし、"信ずる"は、それを口にする人のワクの中に神を閉じ込めてしまうことになりますから、全能が全能でなくなってしまいます。そしてもちろん信仰告白や(その一つである使徒信条)は、それらの言葉の中に人の生きるカオスを要約し、かつ思考することを奪ってしまう仕掛けといえなくはありません。ています。イエスは「あなたの神を愛せよ」「自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ」(マルコによる福音書12章20、21節)などと言いますが、その言葉は閉じ込めることや定義ではなく、“どのように転ぶかもわからない自分”との向かい合いを、避けてはいないのです。全能の神は、その言葉のまま“全能の神”でいいのです。


 人というものは全く全能ではないのですから、あれこれ、いろいろ、ことごとくが意のままにはならず、要するに苦労して苦労して生きる生きものです。そんな訳ですから人というのは“全能者の前で生きる全く全能ではない生き物です”と少しばかり伝えることが、キリスト教の牧師の仕事の一つだと思っています。ですから、若い牧師が、そこのところで踏み外したのなら残念だと思っています。
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