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小さな手大きな手

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2008年01月03週
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 人の死には、それが引き裂いて行く埋めることのできない溝のあることを、心にきざむようにして、そのことと出会ってきました。2003年に長崎で起こった“幼児殺害事件”の時の調べで、半数以上の子どもたちが“死んでも、生き返る”と答えたと、驚きをもって報告されていました。子どもの頃、生きものとその死は身近にありました。ため池で釣りをする時に、釣り針の先につけるミミズは生きていました。生きたミミズを釣り針のカギの形に引っかけた時のはみ出したミミズはまだ動いていました。釣れなくて水につかったままのミミズは、そのうち動かなくなりました。めったに、肉というものに出会うことのなかった田舎の生活で、年末になると飼っていたにわとりから選ばれた一羽が、年越しそばと雑煮の具になりました。軒下に逆吊りになったにわとりの首を出刃包丁で切って滴る血が、白い雪を真っ赤に染め、頃合を見て取り降ろしたにわとりが1〜2メートル走り、ころっと倒れたりしました。そのにわとりの毛をむしって、残った毛をいろりの火であぶった時の、動物の焼ける時の臭いのことを今でも記憶しています。そのにわとりが、いろり端で、臓器の部位などの解説入りで父親の手で仕分けられるのを、久しぶりの肉のことで、子どもたちはその一部始終を、“舌なめずり”しながら見つめていました。特別の来客があったりしたとき、庭の池からすくい上げられた鯉が、母親の手で料理されました。うろこをとり、内臓を抜き去り、水洗いされる時の鯉が、それでもたらいの中を泳ぎ、しばらくすると白い腹を見せていました。そうして生きものの生命力と、生き物の生命の終わりを目の当たりにしてきました。
 

 耕す土地も狭く雪が積もる冬の間、田舎の人たちは“出稼ぎ”に出るのが普通でした。ダム工事やトンネル工事などの現場の事故で、亡くなる人もありました。電報の知らせで亡くなったことを知って、大切な人の遺体を出迎えることになった遺族の慟哭のことを、子どもながら悲しんだ記憶があります。


 子どもの頃の、田舎の子どもたちに、一匹のめすのやぎの世話がまかせられたりしました。よちよち歩いていたやぎが、交尾をして赤ちゃんを産み、赤んぼうやぎの乳を分けてもらうのが、田舎では牛乳代わりでした。そうして世話を任されていたやぎが、えさを食べる為につながれていた崖で、ひもに巻かれて死んでしまった時、村の大人たちが集まって食べてしまう経緯のことは、子どもたちには知らされませんでした。生きものには死んでしまうことがあること、死んでしまった生きものは、決して生き返ったりしないことを、子どもたちは目の当たりにして育ちました。
死という、その一線を越えてしまった時に、決して引き返すことができない事実があって、だから生きている時の人としての営みがかけがえのないものであることを、グリムは昔話の語り手から聞き、書き残しました。「忠臣ヨハネス」(佐々加梨代子・野村法訳、こぐま社)は、そんなグリムの昔話の一つです。


 年老いた王様は、自分の命の終わりの時に、気がかりな王子のことを忠実な家来ヨハネスに託します。“忠臣ヨハネス”は、「わたしの命にかけて、忠実にお仕えします」と約束します。その“命にかけて”守る時が来てしまいました。忠臣ヨハネスは、自分の命を代償に王子・王様を守ります。そのようにして、自分の命を代償に守られたことを知った王様は同じように自分の命を代償に忠臣ヨハネスに報いようとします。しかし、誰の命も一つきりです。一つきりの命が失われた時、その命の代わりをすることはできません。グリムの「忠臣ヨハネス」は、人の命は一つきりであること、その命の代償は同じ命を代償にすることでしかあり得ないこと、命を代償にすることの勇気とそのことを悲しむ人たちのことが描かれます。


 1995年1月17日の、兵庫県南部大地震で死んでしまった人たちを“鎮魂”することが歌になったりしてきました。しかし、人の死が引き裂いていく溝を埋める歌は誰にも作ることはできないはずです。“忠臣ヨハネス”は、溝を埋める言葉を口にした時“石になる”(死んでしまう)よりありませんでした。人の死に臨んで人に許されるのは、その事実の前で人として悲しむことです。
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