“のびる焼き”は、教会学校や幼稚園の子どもたちの大好物の食べ物のひとつです。根っこを始末して、1cmぐらいの長さにきざみ、うすく小麦粉を溶かした中に混ぜ込んで、ホットプレートで焼きます。極上ののびる焼きは、できるだけうすく小麦粉をといて、しょうゆ味でとろけるような舌ざわりを味わいます。教会学校や幼稚園などで“お客さん”が多い場合は、卵を溶かし込んで固めやすくしますが、正しいのびる焼きはたっぷりののびるを、やっと固まるくらいのうすくといた小麦粉に混ぜ込んで焼いたものです。ごま油を使えば、さらに風味たっぷりののびる焼きになります。
そんな“のびる焼き”ののびるは、幼稚園の畑のあっちこっちで収穫できます。のびるが、幼稚園の畑に、元からあったわけではありません。畑の隅っこで“猛烈に繁殖する”(「牧野新日本植物図鑑」“のびる”より)というその雑草が見つかって10年以上経ちます。10年以上前に見つかって、10年以上経って“猛烈に繁殖した(?)”結果、300坪の畑のあっちこっちに見つかるのは、のびるの“年輪”です。のびるは5、6月になると、茎を伸ばしその先に小さな“ねぎ坊主”をふくらませます。そして、線香花火が飛び散ったような草を咲かせ、花が終わると金平糖のような形で実をつけます。その実が完熟して、はじけるように実をとばして着地したところで、新しいのびるになって育ちます。一つの“金平糖”に、10個以上実がついて、実は固い表皮で覆われていますから、そこがもし地面なら確実に発芽します。のびるは、親球根から生まれた2~3個の子球根でももう一つ別の繁殖をします。
幼稚園の畑では、他にもいろいろ“年輪”を刻んでいるものがあります。ひまわりは、5~6年前に市販の種をまいて、その後は春になると“自然”に芽を出して育った苗を移植しています。咲き終わったひまわりをそのままにしておくと、種が落ちて翌年の春に芽を出すのです。5年前の市販の種は“大輪一輪咲き”だったのが、1年経って“野生化”したひまわりは、生長するに従って、葉っぱの付け根から枝が伸び、その枝の葉っぱの付け根からも枝が伸び、そのままにしておくと小さなひまわりがいっぱい咲くことになります。野生化したひまわりは、葉っぱの付け根に、ちょこんと芽を出しているのを見つけ、その一つ一つをつみとって、茎の先に一つだけ花を咲かせる、“大輪一輪咲き”に仕立てます。そうして、“年輪”を重ねてきた、今年のひまわりの苗を、畑のあっちこっちから見つけてきて約50本、幼稚園の畑の阪急電車の側の3本のうねに移植しました。
その3本のうねで、“年輪”を重ねている、のびる、ひまわりはもちろん、チューリップやポップコーンなどでも花や実を楽しんでいます。チューリップは、3年前に球根を新しく植えるのを止めにしました。最初300本ほど揃って咲いていたチューリップは、翌年は大小の花を約100本咲かせ、昨年は約30本、今年は約20本の花を咲かせています。もうしばらくすると、こののびるとひまわりとチューリップの3本のうねには、とうもろこし(はぜとうもろこし、ポップコーン)の種を植えます。昨年、約200個まいた種からは100%発芽しました。そうして100%発芽はしたものの、なかなか育たなくてやきもきしていましたが、ふと土壌のことが気になって、石灰をまいてみたところ、勢いよく育ち始めました。しかし、時期を逸してしまった為に、背丈は低く、一本の茎に、一本ずつ小粒のポップコーンを収穫することになりました。
幼稚園の畑で“主役”になって“年輪”を重ねているのは、いちごとさつまいもです。昨年11月にさつまいもの収穫の終わった畑に、400本の市販のいちごの苗を植えました(1うねだけは、幼稚園の畑の隅っこで育っていた“自家製”苗を植えました)。そのいちごに、3月末から花が咲き始め、今はほとんどの苗に花が咲き小さな緑色の実になっています。ランナーも伸び始めているいちごは、2年ぶりに“茎”を伸ばしはじめているものもあります。いわゆる茎が退化しているいちごは、根元からいきなり花茎を伸ばすのですが、それが茎を伸ばす様子を見せたのは2年前のことで、実るいちごの数も少なく小ぶりでした。
年がめぐって、自然の営みの確かさを見せて感じさせるものが“年輪”だとすれば、そのことが少しずつゆがんでいるかもしれないことを、2年前のいちご、今年のいちごに少なからず感じています。
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