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2008年07月01週
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 「新約聖書、訳と註、第一巻、マルコ福音書、マタイ福音書」(田川建三、訳著、作品社、全六巻、2007年7月第三巻既刊)が発行されました。翻訳本文124ページ、註がその約6倍725ページ、このマルコ福音書、マタイ福音書の訳と註の全体は875ページの大部の書物です。聖書の詳しい註のついた翻訳は、フランシスコ会聖書研究所や岩波書店などのものはありましたが、それらをはるかに超える克明な註のついた日本人の個人による新約聖書全体の翻訳は他には存在しません。こんなに詳しい“註”をつける理由について、訳著者である田川建三さんは繰り返しその理由を明らかにしてきました。古代の書物(「著作年代は、はっきりしたことはわからない。・・・ただし敢えてどちらかというなら、やはり50年代説を支援したくなる」本書解説)を、2000年を経て日本語で読むとすれば、可能な限りの手がかりがどうしても必要であること、それが今回のマルコ福音書、マタイ福音書合計750ページの“註”です。“註”の意図や必要については、別に行なわれているマルコ福音書註解の講義で、本文の翻訳に触れる度に繰り返し田川建三さんは言及してきました(西宮公同教会集会室を会場に行なわれている、関西神学塾の講義)。
 

 そして発行された、マルコ福音書とマタイ福音書の翻訳を手にする時、しり込みしたくなるくらい、“重い”本であることを思い知らされます。875ページのこの本は、厚さ約5センチ、重さ約1300グラムと、文字通り重いのです。そして、その本のことでは田川建三さんは“こんなに大部で専門的な値段の高い本は無理に買わないで下さい”と、発行を前に“釈明”していました(本体価格5,800円)。そのように口にする反面、この翻訳の大仕事で聖書の専門家、神学者には“専門というなら、この程度の仕事をするもんだ”という挑戦状を突きつけていることにはなっています。という挑戦もしているのでしょうが、何よりも聖書という書物に書き残された“イエスという男”のことに、本音で本気で耳を傾けることへの“恐れ”がそうした言葉になり、翻訳になりました(田川建三さんはこれらのことで“なめてはいけません”と、口にすることがある)。
 

 そして、正直なところ、翻訳本文124ページ、註750ページ、全体で875ページ、厚さは約5センチ、重さ約1300グラムの書物を、同じくらいの克明さ、同じくらいの“重さ”で読みきるのは大変です。
 

 田川建三さんは、関西神学塾でマルコ福音書註解の講義を続けています。1971年に「田川建三著、マルコ福音書上巻」(現代註解全書)が発行され、6章6節までの註解が完了していました。2001年に、大阪女子大学を退職した時の9月に6章7節からの註解の講義が始まって、現在に至っています。毎回の講義(7、8月をのぞく年10回の講義)で、A4裏表、6〜8ページ(8000字〜10000字)分の“草稿”が参加者に手渡されて、大まかに解説するだけで2時間の講義は終わってしまいます。現在、10章12節までの講義が続いていて、手渡された“註解”は、468ページ分です。尚、マルコ福音書註解は、10章45節までが中巻ですから、中巻にあたる部分の註解は、ほぼ完了していることになります。そして、註解書としてまとめ発行するにあたっては、現在までに手渡されている468ページ分を、余計な部分を削除して1冊にまとめることになっているのだそうです。
 

 田川建三さんは、新約聖書全体の翻訳、マルコ福音書註解とは別に、新約聖書概論の仕事も同時に取り組んでいます(年8回関西神学塾と田川私塾の共催で行なわれる新約聖書概論の講義は、新約聖書全体についての概論がほぼ完了している)。
 

 その新約概論の目的、意図、意味についても、田川建三さんは繰り返し口にしてきました。古代の書物である新約聖書を読むにあたって、その一つ一つの文書の成り立ち、そしてそこに示されている主張、更にそれが新約聖書として集められた意図などが、厳密に正確に読み取られなければならないこと、そして同じように大切なのは、その概論が普通にどんな人にも解る言葉で書かれていなければならない、それが田川建三さんの新約聖書概論です。大雑把に全体をまとめたりしたものが概論ではなくて、概論だからこそその書物の為の一番大切で必要なことの情報を理解し得る言葉にして示す、それが田川建三さんの目指す新約聖書概論なのです。
 

 新約聖書という古代の書物の、翻訳、註解、概論を書くという仕事をとりあえずではなく妥協することなく“完璧”に成し遂げたいという田川建三さんの挑戦は、例えばジュンク堂西宮店の“宗教”のコーナーでも。それが“正面”を向いてにらみをきかせていたりするのです。
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