10月2日、西宮公同幼稚園の畑で、子どもたちが“さつまいも掘り”をしました。持ち帰って計ったところ123キロでした。200キロを超えることこともありますから、今年のさつまいもの収穫はずいぶん少なかったことになります。6月、イチゴの終わった畑を耕し400本のさつまいもの苗を植えました。子どもたち総出で植えた苗を、もう一度植えなおすのは“園芸サークル”のお母さんたちの仕事です。畝にひいた浅い溝にいも苗を横に置いて、1/3くらいを残して土をかぶせます(これを“舟がた植え”というのだそうです)。その後うまい具合に雨が降ったりすると、2、3日でピンと立って根を伸ばし始めます。植えた苗の大半が、かんかん照りで枯れてしまったこともあります。今年も、お天気が良かったので、先に抜いて干からびていたいちごの株でいも苗をおおいました。そんなこともあって、根付いたいも苗は、時々の水やりで、どんどんつるを伸ばし、幼稚園が夏休みに入る頃、葉っぱが畑一面に広がり、ほぼ水やりの必要はなくなってしまいます。今年は、夏の間の水やりのことが小さな事件になりました。西宮公同幼稚園の西宮市伏原町の畑は、幼稚園に3姉妹が在籍した0さんの好意で使わせてもらっています。その畑の南側は西宮市の施設で、その施設の庭を経由しないと、幼稚園の畑の出入りはできません。畑には水の設備がなくて、西宮市の施設の水を融通させてもらっています。その水のことで、“使い過ぎる”と注意されてしまったのです。
夏に、岩手県の七時雨(ななしぐれ)を訪ねた時、宿になった“七時雨山荘”の近くで、高原野菜が栽培されている様子を見る事になりました。雪の降る11月~3月くらいまでの間、その山荘は閉まってしまいます。高原野菜の畑はもちろん雪に埋まってしまいます。ただ、そこは“七時雨”と言うぐらいですから雨が多く、高原野菜(要するに秋から冬の野菜、たとえばキャベツや大根などの)栽培に適しているのだそうです(・・・に限られる厳しい自然条件)。見渡す限りのキャベツ畑、大根畑が広がっていました。そして、たまたまそんな畑を眺めていて、七時雨の雨に降られてしまいました。植物・野菜にとって自然の雨は恵みそのものなのです。公同幼稚園の300坪の畑の400本のさつまいもは、自然の雨では間に合わなくて、市の施設の水を融通してもらうよりありません。
その畑なのですが、中心のさつまいも(又はいちご)の部分を囲むようにして1/3くらいは雑草の畑になっています。ネギ栽培などをしている隣の畑の人にとって、雑草とその種の侵入は大迷惑です。で、隣の畑の人は、隣接する幼稚園の畑に、2メートルくらい逆に侵入して除草剤を散布しますから、その2メートルくらいには“一木一草”生えません。
そして、幼稚園の畑の雑草なのですが、春に子どもたちが一番喜んで楽しむのが、からすのえんどうです。小さなピンクの花が咲いて、ふくらんだ“さや”の小さな豆を取り除き、付け根の部分の1/3くらいをちぎり、先端部分を軽くくちびるではさんで吹くと、“ピー”と鳴ります。そのピーッとなる音で、からすのえんどうのもう一つの名前は“ピーピー豆”です(ちなみに、小ぶりのさやの中の豆が2つだけなのは、“すずめのえんどう”です)。冬から春にかけて、公同幼稚園の畑にはあっちこっちでのびるが細いネギ状の葉っぱを伸ばしています。そののびるを球根ごと引っこ抜き、洗ってきざんだものを小麦粉を薄くといた中に混ぜ込んで、うすっぺらいお好み焼き風にした“のびる焼き”は、幼稚園の子どもたちも、教会学校の子どもたちも大好物の一つです。
さつまいも掘りをした後の幼稚園の畑は、もうしばらくするとお父さんやお母さんに集まってもらい、耕し直していちごの苗を植える準備をします。そして400株のいちご苗を植えて、冬を越します。その冬の間、畑の北の端には、200本のたまねぎの苗が植えられて、同じように冬を越します。玉ねぎのねぎが春になってどんどん伸びて太くなり、根元のあたりが少しずつふくらみ始める頃、小さいたまねぎと葉っぱを一緒に煮込んで食べることがあります。そうして、“玉ねぎの葉っぱも食べられるんですよ”と教えてくれたのは、アートガレーヂで第一、第三火曜日に氷上町からきて朝市をしている、長井農園の長井さんです。長井さんに教えてもらって、幼稚園の畑の玉ねぎの玉がまだ大きくならなくて、ねぎのねぎの部分がまだ固くならないうちに、玉ねぎをまるごとスープにして食べるようになりました。180個近く収穫した幼稚園の畑の玉ねぎは、まだ少し子どもたちの部屋の前にぶら下がっています。
野菜の成長をずっと見守って、それを味わう機会もあり、更にそれが子どもたちの目と心に残る光景につながったりしているのが西宮公同幼稚園の畑です。
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