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2009年06月01週
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 絵本「ティッチ」(パット・ハッチンス さく、いしい ももこ やく、福音館)は、「ティッチは ちいさな おとこの子でした。ねえさんの メアリは、ティッチより ちょっと おおきくて、にいさんの ピートは、ずっと おおきな子でした。・・・」で始まります。末っ子のティッチは、体はもちろん、着る服も、靴も靴下にいたるまで、すべてにおいて、ねえさん、にいさんにはおよびませんでした。すべてにおいて、ねえさん、にいさんにおよばないティッチの様子は、心なしか目線を下げていたり、肩も落としかげんにハッチンスは描きます。 “ちいさい”という事実の持っている意味を、「ティッチ」は “読者”である子どもたちにも突きつけるのです。ティッチの三輪車では、ねえさんやにいさんのように、坂をのぼれない事実、たこあげはティッチにははやすぎて、ねえさんやにいさんのようにはいかない事実、ティッチには木の笛をピーと吹くぐらいがせいぜいであるという事実、ねえさんやにいさんのようなのこぎりやかなづちをティッチにはあやつれないという事実・・・。この小さな物語で、ティッチは最後には自分の小さな種でねえさんとにいさんを見返します。そうして、最後には見返すところが、この物語の魅力です。しかし、“見返す”という喜びや驚きが起こる為には、小さいティッチが、ねえさんやにいさんにかなわないという現実を繰り返し描くことで、絵本の読み手である子どもたちにも、そのことを伝えます。子どもというものは、あなどれないこと、しかし、誠実に伝えれば伝わることを、「ティッチ」の作者は理解しているのです。
 

 子どもたちと一緒に生活することの意味、子ども理解のことで、たくさんのことを教えてもらってきた岡本夏木さんが、5月10日に亡くなられました。25年前に出版され、今も読み継がれている「子どもとことば」(岡本夏木著、岩波新書)では、子どもたちがことばを身につけていく意味や事実を納得できる形で示してもらいました。「ことばはいうまでもなく音声を用いた人とのやりとりである。そこでは当然、まず言葉の使用以前に人々とゆたかに交わり、感情を交わしあい、たがいに経験を分かち合うことができる発達が前提となる。・・・」(岡本夏木、前掲書)。“ことばの使用以前に人々とゆたかに交わり、感情を交わしあい、たがいに経験を分かち合う”ことが、ことばの使用の前提であるとすれば、それ以前に“文字”を教えたり学んだりすることの多くは無意味になります。同じように、日常の“経験を分かち合う”ことの少ない外国語を、教えたり学んだりすることも多くは無意味になります。


 2005年に、1926年生まれの岡本夏木さんは、80歳を前にして「幼児期」(岩波新書)を出版することになりました。その「幼児期」でも、たくさんのことを教えてもらうことになりました。「ティッチ」のことで、“誠実に心をこめて”と表現した場合の誠実は、「幼児期」が参考になっています。
「・・・しかし、その際にも聞き手に対する語り手としての誠実さは要請されるはずです。そして相手を最後に納得させる決め手となるものもその誠実さにあるはずです。・・・」「・・・幼児は自分と深い絆で結ばれた他者に語りかけ、またその他者が自分に話しかけます。そして重要なのは、その人に向けて話しかけることばを同時に自分も聞く、ということです。他者に話しかけることは、自分に話しかけることであり、さらにまたその深く結ばれた人が自分に話しかけることばを、次には自分のことばとして、自分に向けて語りかけてきます。・・・」(「幼児期」前掲書)。


 「ティッチ」が、出版されてから40年余り、子どもたちを魅きつけてやまないのは、パット・ハッチンスという、子どもたちと向かい合うことにおいて“誠実”な人によって描かれたからです。そして、子どもたちと絵本を読む、読み聞かせをするということで、そこで起こっているのは「幼児は自分と深い絆で結ばれた他者に語りかけ、またその他者が自分に話しかけます。そして重要なのは、その人に向けて話しかけることばを同時に自分も聞く、ということです」などのことです。
 

 2006年8月、京都府美山にある浜田寿美男さんの“萱ぶき屋根の別荘”で、浜田さんと岡本夏木さんと幼稚園の先生たちで、2泊3日の特別の研修の時間を過ごしました。浜田さん、岡本さんのそれぞれの発題とは別に、80歳の岡本さんとわらべうたを一緒に遊んだり、一緒に風呂で汗を流したりなどの時間のことなどが忘れることができません。その時に持参した「幼児期」に「邦明先生 夏草や 集ひし 幸を 忘れめや 美山にて 2006.8.21 岡本夏木」とサインしてくださいました。そして、忘れられないのが、自己紹介で、「病院などで名前を呼ばれたりする時、もう一人の人と間違えられるんですよ」と笑わせたりする岡本夏木さんのことです。(菅澤邦明、文庫だより2009.No.3を少し書き直しました)
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