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小さな手大きな手

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2011年02月02週
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 この街、にしきたで、教会や幼稚園の仕事をさせてもらいながら、さり気なくそこに居る、この街の一人でありたいと願ってきました。40年以上、この街で過ごしてきて、同じようにさり気なく生きて出会ってきた人が亡くなるという体験をしてきました。隣とは言え、そんなに出会うことの少なかったNさんは、出会うことがあれば“上品”に、にこっと笑顔を返してくれる人でした(独り住まいだったNさんが、1995年1月の兵庫県南部大地震で壊れた家から、掘り出されたのは夕方近くでした。亡くなっていました)。その隣りのHさんのおばあちゃんは、花や植木をいっぱい育てている庭が、幼稚園とは金網のフェンスで隔たっているだけでしたから、顔をあわせると、花の育て方をいっぱい教えてもらうことになりました。裏のFさんは、正真正銘の植木屋さんで、裏庭では立派に手入れをして苗木を育て、その頃、礼拝堂の裏の空地まで境界線を越えて苗木を育てていました。Hさんのおばあちゃんも、Fさん夫妻も、地震の前には亡くなっていました。
 

 その1995年1月の地震で、この街、にしきたも一変することになりました。Nさんが亡くなった隣りの家は、立派な庭石もこなごなに砕かれ、更地の状態がしばらく続いた後、3階建てのビルになりました。1階部分のテナントは、最初、焼き肉屋でした。肉を焼く時の煙を完全に排出するシステムの、肉の焼けたにおいが風向きによっては、幼稚園の庭に充満することがありました。焼き肉屋がコンビニに変わり、今は半分は美容院、半分は不動産屋さんです。この街、にしきたのお隣さんですが、そんな具合に変わったものですから、その都度顔見知りという訳にはいかない、匿名の関係です。


 「春の唄」(作詞:喜志邦三、作曲:内田元作曲)は、50年ほど前に、広く、よく歌われた歌だそうです。歌われているのは、西宮北口で、たとえば3番は次のようになっています。

 ラララ なけよちろちろ すだちのとりよ
 春がきたきた 森から町へ
 あねといもうとの あのことりやの
 みせのさきにも 春のうた

と歌われている“小鳥屋”は、駅前公園から北、一方通行を少し行った寿司屋のあたりに、間口の狭いその小鳥屋と薬局が並んでいました。30年前も、確かに小鳥屋を切り盛りしていたのは年配の“姉と妹”でした。幼稚園で飼っていた“十姉妹”の為に、ほこりっぽい店に餌のヒエやアワを買いに行ったものでした。並んでいる薬局も、小鳥屋さんに負けないくらい乱雑で、今にも崩れそうに積み上がった薬の山から、「・・・そう言えば・・・」と呟きながら、紫雲膏を見つけ出してくれたものです。そんな時の、この街、にしきたには、そんなほこりと声はもちろん、街の色や街の音、街のにおいというものがあって、今もその光景と共に鮮明な記憶になって残っています。小鳥屋や姉妹の名前などのことは何も覚えてはいませんが、街がそんな人たちによって成り立ち、つながっていたという意味でだったら、匿名の人の街ではありませんでした。


 そんな町で生きて、確かに街の人であった「桜井文房具店のご主人」が亡くなられました。お通夜に顔を出し、更に弔電を届けることになりました。幼稚園や教会、教会学校などで使う文具のお世話になったということだけではなく、店先でずっとこの街の子どもたちに声をかけて下さった人でもあった、という意味も込めての弔電です。

 桜井文具店のご主人が亡くなられたと聞き、さびしさでいっぱいになっています。30代の子どもたち3人は「桜井さん」にどれだけお世話になったことでしょう。日々の文房具はもちろん、習字の道具、図画の道具などなどの学校一斉の購入があまり好きでなかった親と一緒に、筆一本から揃えにいったものです。いつもはっきりと希望を聞かれ、的確にアドバイスをくださっていましたね。1995年の震災ではほんとうにご苦労されました。西北に仮住まいでのお店を守られながら「どこにでも配達いきまっせ」と気軽に足を運ばれていました。仮住まいは心身ともに大変だったでしょうが、小さなものひとつでもお届けくださる折に、幼稚園の事務所で楽しんだおしゃべり、街の小さな店の大変さ、在庫を抱えることのしんどさ、息子さんが店に加わることになったことなどなどのお話を覚えています。生きていくことの勇気をいただきました。震災の体験は大変でしたが、桜井さんを身近に感じることのできた貴重な時間、とても楽しい時間でした。「年をとると寒さがこたえますなあ」、大きな声でお客さんを励ましてこられたおじさんだったのに、最近はそんな弱音ももらすようになられておりました。思いがけないお別れですが、どうぞゆっくりお休みください。
西宮公同教会・公同幼稚園

 使い勝手の良さで気に入っているボールペンの替え芯を、10本ずつ買い求める際に、店先で応対するご主人は、「・・・先生、ようつかいはりますなあ」と言って、引き出しから捜し出した替え芯と、5円と25円の金券を正確に数え、「おおきに、また」と言って手渡してくれました。


 仕事が休みの月曜日の朝、一時間ほど読書で過ごす街の“コーヒー屋”には、桜井文房具店のご主人の指定席がありました。たまたま居合わすことになると軽く会釈して、軽く会釈して別れるだけでしたが、そんな日があったことが記憶に残る大切な出会いでしたから、そこが空席なのはさみしいことです。“コーヒー屋”のおばさんも、「今も、そこに座っているようで・・・」と、空席になったのが本当にさみしそうでした。 height=1
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