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小さな手大きな手

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2011年07月01週
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 パンを焼いていて、火傷をしてしまいました。元は焼却炉だったパン窯を改造するにあたって、内部に耐火レンガで囲ったもう一つの窯が創られていて、それをマキで温めてパンを焼く仕組みになっています。改造に際して、マキの焚き口は、窯の右横に作られることになりました。内径が90センチのマキ窯は、火に勢いがついてくると、直径20センチを超える“生木(なまき)”でも、ぼうぼう燃えてしまいます。焚き口は、横38センチ、縦27センチです。窯の全体は2重構造になっていますが、耐火ガラスで燃え具合が見えるようになっている焚き口だけは、高熱高温になってしまいます。パン窯を焚く時は、必ず長袖の綿のシャツを着ることになっていますが、油断していて、焚き口に接触して右腕を火傷してしまいました。


 火傷は、たいしたことはないと思っていたので、紫雲膏を絆創膏に塗って貼り替えることで済ましていましたが、2、3日前に、火傷で紫色に変わっていた皮がむけてしまいました。皮がむけた後の傷跡は“真っ赤”でした。焚き口に一瞬触れ、ちょっとした水泡ができる程度の火傷だったはずが、皮がむけて真っ赤なのです。


 1999年9月30日JCOの事故で大量の放射線を浴びた(20シーベルト言われる)大内さんが、被曝から6日目に東大病院に運ばれてきた時、「被曝という言葉から外見的にもかなりダメージを受けているだろうし、意識レベルも低いのではないかと想像していたのだ。しかし外見だけでは、一体どこが悪いのだろうとしか思えない。致死量と言われるほど高い線量の放射線を浴びたと聞いたが、とても信じられなかった」(『朽ちていった命/被曝治療83日間の記録』 NHK「東海村臨界事故」取材班、新潮文庫)。「被曝6日目は顕微鏡で拡大した骨髄細胞の染色体が写っているはずだった。しかし、写っていたのは、ばらばらに散らばった黒い物質だった」「放射線被曝の場合、たった零コンマ何秒かの瞬間に、すべての臓器が運命づけられる。ふつうの病気のように血液とか肺とかそれぞれの検査値だけが異常になるのではなく、全身全ての臓器の検査値が刻々と悪化の一途をたどる」「大内さんの体からは、転院初日にはこのリンパ球がまったくなくなった。さらに白血球全体も急激に減少していた。大内さんは体の抵抗力(免疫力)がほとんどなくなっていた」(前掲書)。「外見だけでは、一体どこが悪いのだろう」と思われた大内さんは、10日目には「右手には火傷の跡のような水ぶくれができてきた。また、タオルで足を洗ったり、拭いたりした時、こすれたところの皮膚がめくれるように」なります。(前掲書)。


 めくれた皮膚のあとは“真っ赤”だったはずで、この火傷の状態は、放射線被曝の場合、浴びた放射線にはよるものの、体の内部のすべてにおいて起こっていました。
 ほんの一瞬、パン焼き窯の焚き口に触れてしまって、薄い皮が一枚はがれたあとが真っ赤だった火傷が、大内さんの場合は、染色体がばらばらになり、リンパ球もまったくなくなり、体の内、外を問わず全ての細胞が火傷の皮膚がはがれ落ちるようにしてはがれ、体液となって外に出てしまいました。


 チェルノブイリで被曝した人たちの治療にあたったアメリカ人医師、ロバート・ゲイルの治療の日々にも同じことが起こっていました。「私が初めてオルロフを診察した時、重篤な放射線による疾患の兆候が見られた。黒い単純ヘルペス湿疹で顔に傷跡が残っており、歯肉はカンジタ感染が原因で、アン王朝様式レースのように白いレース状の外観を呈して口を開けていた。それから数日間にわたり、皮膚ははがれてゆき、歯肉は生の牛肉のようで、消防車を思いだせるような赤に変色していた。潰瘍は体全体に広がっていた。小腸の粘膜も磨滅してしまっており、血性下痢にかかっていた。そうした症状なので、私たちはモルヒネを投与したが、譫妄状態でも、オルロフは痛みであえいでいた。放射線による傷害はその性質からして症状が良くなることはなく、悪くなるばかりだ。というのは、古い細胞が死滅し、新しい細胞が破壊のため再生できないからだ。終末期となり、オルロフはついになにも見分けがつかなくなってしまったが、オルロフにとり、事故後数週間で訪れた死は、やっとのことで苦しみから逃れられたということであった」(「チェルノブイリ/アメリカ人医師の体験」ロバート・ゲイル、岩波新書)。
 20シーベルトで、大内さんのように人の命が奪われてしまう放射能は、低線量の場合でも安全という訳には行きません。


 人の命は、細分分裂しながら同じ情報を複製することで生命を維持しています。その場合の遺伝情報・DNAを相互に結びつけるエネルギーは数エレクトロボルト(ev)にすぎません。放射線のエネルギーは、レントゲンを撮った時に受けるエックス線で100キロevと言われます。(以上、「原発のウソ」小出裕章、扶桑社)。ということは、小さな小さなエネルギーの相互作用で成り立っている人の生命体を、何万倍ものエネルギーが突き抜けて行くのが被曝なのです(セシウム137は661キロev)。微小な細胞の小さな小さな働きを、巨大な力が一瞬のうちに突き抜けて行く時、ぶつかった細胞とそのつながりを、ずたずたにしないではおかないのです。それが低線量被曝です。
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