朝日新聞で始まった「教育 あした 今こそ子どものために」の①は、「放射能学んで歩む」でした(9月7日)。「5日、福島県郡山市立明健中学校。『ここは高い』『なぜだろう』。放課後の校庭で、部活動の自然科学班の生徒が放射線量を測っていた。『データを自分で測り、分析する力をつけて欲しい』と顧問の佐々木清先生は話す。」で始まる記事を見て、その記事及び記事を掲載する新聞についての感想を書いてみました。(「じしんなんかにまけないぞ!こうほう」9月7日、No.66)。それを朝日新聞本社に送ると同時に、朝日新聞阪神支局に届けたところ、記者歴5、6年(?)の森直由さんが応対してくれました。くどくど書いている感想の主旨、「『放射能と生きる』が現実になってしまった時」放課後の校庭で、子どもたちに放射能を測定させるのは、即ち被曝を黙認するのは、教育としての科学実験とは言い難い、について「・・・きっかけにはなる」というのが、森直由さんの見解でした。
福島県郡山市も、明健中学校の自然科学班顧問の佐々木清先生も、たぶん同じような「きっかけ」という考えで、校庭の放射線量を子どもたちに測定させているのだろうと思います。郡山市の9月5日の放射能の空間線量は、毎時0.89マイクロシーベルトで、この1ヶ月間0.8~0.9で推移していました。この値だけでも年間累計は7884マイクロシーベルト、7.88ミリシーベルトになります。明健中学校の自然科学班の生徒の中学校の校庭で放射線量の測定は、そのまま東電福島の事故の結果、自分たちが浴びる放射線量、被曝量ということになります。この場合の科学実験は、そのまま人体実験になってしまいます。東電福島の事故の後、よく言われてきたのは「人間は、自然界からの放射能を浴び続けてきたではないか」ということでした。その自然界の放射能の値として確認されているのは、日本の場合は毎時0.02マイクロシーベルトですから、40倍以上ということになります。そんなことが、「・・・きっかけにはなる」でなくはありません。原子力発電所の事故がきっかけで、放射能に関心を持つようになるということのすべてを否定するつもりはありません。自然界には放射能というものがあるということ、人がその自然界のおよそ0.02マイクロシーベルトの放射能と、少なくとも決定的なダメージを受けることなく共存してきた事実は、人と自然について学ぶ大きなきっかけになるはずです。しかし、東電福島の事故の後、そこから60キロ圏の郡山市明健中学校の校庭で測定される、自然界の40倍を超える毎時0.89マイクロシーベルトの放射能を自然科学班の生徒に測定させてしまう時、それは「放射能を学ぶ」ではなく「放射能に被曝する」人体実験になっています。部活動の自然科学班の生徒が、放射線量を測る測らないは別にして、郡山市で生活する限り、既に子どもたちは被曝しています。郡山市のように避けられなくなった被曝の状況で、その現実を直視するという意味での生徒による測定であったとしても、自然界の40倍になってしまっている現実・事実の意味ぐらいは共有する必要があります。
地球に届いている、自然界の放射線、日本の場合の0.02マイクロシーベルトは、それ自体まったくありふれたものです。「放射線そのもの自体、まったくありふれたものだ。地球は、放射性の爆発によって生成された。そんなことから、私たちは今日、放射能を帯びた世界に住んでいるわけだ。生命のすべての組織には放射能の痕跡があり、したがって人間はだれ一人として例外なくわずかではあるが放射能を帯びている」(「チェルノブイリ/アメリカ人医師の体験」R.P.ゲイル、岩波書店)。
明健中学校の生徒が校庭で測定しているのは、40倍を超える東電福島の事故によって大気中に放出され、60キロ圏の郡山に飛散し、今も降り続いている放射能です。
その郡山市などで被曝し続けている子どもたちの、集団疎開を求める第4回仮処分裁判が、9月9日に福島地裁郡山支部で開かれました。弁護団から、裁判所・裁判官の「心を動かす」言葉を届けて欲しいとの要請に、8月28日に教会学校の子どもたちに、「福島の大人の人たちに、日本の大人の人たちに、福島の子どもたちを、放射能から守って下さい。私からの願いです」と書いてもらいました。1年生のTくんは、「こっちにきて かくれんぼとかをして いっしょにあそぼう」、3年生のIくんは「自由に外で遊べる場所を作ってほしいです」、3年生のKくんは「ぼくたちはいっぱい外であそんでいるけど福島の子どもたちはあそべないのでほうしゃせんをなくしていっぱいあそんでほしいです」と書きました。これらは、9月9日に、弁護団の手で裁判所に届けられました。
岡理恵さんの刺繍でつづった以下の言葉も、裁判所に届けてもらいました。
福島地方裁判所郡山支部様
福島の子どもたちを
放射能から守った
福島地方裁判所郡山支部は
世界の子どもたちの
誇りです
2011年9月
世界の子どもたちより
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