放射線量の高い福島・郡山から、行政の責任で子どもたちを避難させることを求める「ふくしま集団疎開裁判」は、2011年12月16日(この日、東電福島の事故の収束が宣言された)に、福島地裁郡山支部によって、放射能の危険を黙殺する判断・判決が下されました。「・・・危険だと思うなら自己責任で区域外通学という方法での避難をすればよい」という。
その判断・判決に異議を申し立てて争われているのが、仙台高裁での控訴審裁判です。8月3日に第一回審尋、10月1日に第二回目の審尋があり支援する集会、審尋の後の弁護団等の報告集会に参加しました。以下、参加報告です。
集会は、宮城県庁前勾当(こうとう)台公園野外ステージ、集会後は仙台高裁近くの肴町(さかまち)公園までのデモ行進、参加者は約130人でした。仙台を中心に福島・郡山、そして東京からも約40人が参加していました。会場では、会津放射能情報センターの片岡さん、ふくしま集団疎開裁判原告代理代表の井上さん、子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの駒崎さんとも、1年ぶりにお会いすることになりました。井上さんは、集会の時も、集会で代表あいさつをする時も、デモ行進で歩くときも「子どもを守れ」ののぼりを手から離しませんでした。福島原発告訴団の武藤さんともお会いできて、9月22日のいわき市での告訴団全国集会のときに届けた(宮本さんを代表派遣)、124通の委任状がうれしかったと、おっしゃって下さいました。宮城学院の新免さんは、授業の合間をぬって集会に参加しておられました。会場で、たまたま隣に座ることになった、弁護団の一人井戸さんと、団長の柳原さんの話題になり「彼は大学も同期で、その時も今も少しも変わらない、真っ直ぐでいいやつなんですよ!」とおっしゃっていました。もちろんそうおっしゃる井戸さんもいい人で、集団疎開裁判は、そんないい人たちによって担われています。審尋の後、会場を仙台メディアテークへ移しての弁護団他の報告集会でした。
1.井戸弁護士
①仮処分申請の控訴審で、審尋が行われるのは異例のことである。
②裁判官が「健康被害の問題を避けている」のが気になる。
③しかし、「保全」(一審が退けた疎開)の必要がないと判断しているのだとすれば審尋を行うことが不自然。
④代理人(お母さん)の個々の状況の説明を裁判所が求めている。
⑤矢ケ崎先生、松崎先生を証人申請したが採用されなくて残念。
2.柳原弁護士
①権利侵害の事実と保全の必要について判断をどこでするのか、裁判所の判断を聞き出せなかった。
②仮処分申請の“中味”(健康被害)を、判断するつもりがあるのかどうか解らない。
③裁判所を動かす最大の力は“子どもを守れ”という市民の声。
3.光前弁護士
①裁判所は“不用意”な発言しない、慎重である。
②裁判所は、原審(地裁、郡山支部)の決定を納得していないのかも知れない。
③放射線量について一切触れようとしない裁判所の意図は何か。
4.矢ケ崎先生
①原審の郡山支部は、郡山とチェルノブイリのルミネイとの放射線量の比較で、郡山の方がはるかに高いことの評価が誤っている。
②被曝、中でも低線量被曝の理解が重要である。セシウム1ミリシーベルトの被曝は、毎秒10,000本(ベクレル)の放射線が体を貫通して細胞を傷つけている。内部被曝は、この100倍、1000倍の影響になる。
③市民と科学者による内部被曝研究会を発足させ、郡山の放射線量の洗い直しを行っている。10月5日に結果を発表する。
④国は、汚染データをもみ消している。
⑤裁判所を本来の“主権者の立場に立ち返らせる”のが、この裁判。
5.松崎先生
①2,3ヶ月の単位で、子ども達の健康状態を慎重に見守ることが大切。
②大人とは異なり、子どもの甲状腺がんは、転移しやすいという事実が見逃されている。
③文科省が実施した20万人分の原発労働者の被曝調査報告を見直している。平均13ミリシーベルトの被曝で、4%のがん発生が確認されているが、その評価をあいまいにし文科省は、酒、たばこなどを理由にしている。
時間が迫っていた為、矢ケ崎先生、松崎先生の講演は聞けませんでした。いずれ、報告書としてまとめられることと思われます。
集会の準備、集会の進行、デモ行進の申請など、すべて庄司先生が担当し、エマオのスタッフと一緒に、徳田さんもそれを手伝っていました。(勾当台集会では、1970年代に原発の危険をうったえていた、亡くなられた水戸厳さんの奥様の喜世子さんともお会いお話させていただくことができました。水戸さんは救援連絡センターの初代代表。)
[バックナンバーを表示する]