東京電力福島第一原子力発電所の事故で降り注いだ放射能で汚染された廃棄物のことでは、8都県はもちろん、福島県の市町村がより深刻な事態になっています。広野町は、災害廃棄物約3.5万トンと、放射能の除染で発生する廃棄物約2.5万トンのうち、可燃物を対象の減容化施設を町内に建設することを決めています。「一般的な焼却炉よりも高温で、放射性セシウムが飛散しにくいとされるガス化溶融炉を設置する。一基で一日最大50トンを処理できる溶融炉を二基建設する計画で、焼却炉は中間貯蔵施設が建設されるまで敷地内に保管する。施設内には溶融炉の他に搬入物を破砕、選別する前処理設備、焼却灰の保管設備なども設ける」(10月21日、福島民報)。“減容化”は、厖大な量の災害・除染廃棄物の処理が、計画だけで先に進まない為(除染廃棄物を仮置きした後、約30年間中間貯蔵する施設、最終処分場の目途がたっていない)、限られたそして狭い保管場所で済ます、可燃物を焼却して量を少なくする処理方法のことです(・・だと思う!)。言うところの減容化は、こと放射性物質に関しては、量は少なくしてもより高濃度の放射性廃棄物を残すことになるとすれば、結果はよりやっかいなことになります。放射性廃棄物は、減容化すればする程高濃度に汚染された廃棄物になり、その取り扱いはより危険になります。「焼却灰の保管設備なども設ける」ことになる、焼却灰がその高濃度放射性廃棄物で、「中間貯蔵施設が建設されるまで施設内で保管する」ことになっています。広野町の減容化施設建設予定のすぐ北は楢葉町です。楢葉町には国が中間貯蔵施設の一つの建設を提案していますが、たぶんすんなりとは決まりません。中間貯蔵施設から先の最終処分場が決まらないからです。
広野町が町有地に建設を決めたとされる“減容化施設”は、そこに除染廃棄物が運び込まれて稼働する時、施設そのものが高濃度に汚染され、かつそこには高濃度の焼却灰が、人間を寄せ付けない汚染物質となって残り続けます。
中間貯蔵施設について、2012年1月に帰村宣言をした川内村は、「中間貯蔵『双葉郡と県で』することが現実問題」だと考えを示しています。「東京電力福島第一原発事故後のエネルギー問題を有識者らが話し合うシンポジウムが19日都内で開かれ、川内村の遠藤雄幸村長は、除染で出た汚染土壌などの中間貯蔵施設について『(第一原発がある)双葉郡と県で処理しないといけない現実問題だ』と、原発周辺自治体で受け入れることに不可避との考えを示した」(10月20日、福島民報)。こんな“考え”を示す川内村は、中間貯蔵施設の一つを村内に引き受けることを、「現実問題」として覚悟しているに違いありません。しかし、そうなると、1月に帰村宣言をしたものの、一向に帰村する人が増えない川内村の状況は、更に難しくなるように思えます。総人口約2700人とされる川内村は、1月に帰村宣言をしたにもかかわらず10月1日現在、村に帰っているのは約260人だと言われています(“じしんなんかにまけないぞこうほう”№175、10月1日、福島民報)。
双葉町は、国との協議で、中間貯蔵施設について「事故の責任者による中間貯蔵施設の設置」を要望しています。「井戸川町長は、長浜氏(環境省兼原発事故担当相)に対し、11項目について要望した。要望内容は、町民が1ヵ所で生活するための環境整備、事故の責任者による中間貯蔵施設の設置、原発事故の完全収束、被ばくさせられた肉体の除染、全ての損害の賠償・・・」(10月19日、福島民報)。
ここで、「事故の責任者による中間貯蔵の施設」及びそこで貯蔵される予定の廃棄物について、事故の責任者(?)に問い合わせてみました。東京電力お客さま相談室の白川さんは、除染によって発生する汚染土壌について、それに含まれる放射性物質(それが含まれるから汚染土壌!)について、東京電力に責任があるとも責任がないとも返事をしませんでした。放射能で汚染された土壌などの除染について、国として対応しているのは、環境省(原発事故担当)です。担当者として応答したのは、環境省・広域処理、除染窓口の節川(ふせかわ?)さんです。節川さんによれば、除染されたその場所(たとえば個人の住宅)に置かれている汚染土壌は特別措置法で国が処分することになっているので、個人の所有とは言えないが、いずれ国はそれを処分するのだから国の所有物ということにはなりにくいとのことでした。また、汚染土壌は土壌そのものが汚れている訳ではなくて、東電福島の事故で降り注いだ放射性物質が汚染しているのであって、汚染物質である放射性物質は降り注がせた東電の所有なのかとの質問については、「ちょっと待ってください」の後、「これ以上のことについては、原子力規制委員会に聞いて下さい」とのことでした。
原子力発電所の事故で、放射性物質が降り注ぐことになって土壌が汚染されることになったことの責任は東京電力です。放射能で汚染された土壌を除染することになって、それがたとえば削り取ることになった土壌処理の責任は、事故を起こした東京電力です。双葉町が要望している「事故の責任者による中間貯蔵施設の設置」の“事故の責任者”は東京電力であるのは明らかです。しかし、中間貯蔵施設の問題で東京電力が“責任者”として名指しされることはありません。国や福島県、中間貯蔵施設の設置を求められる双葉町、大熊町、楢葉町などが、責任の所在、それぞれへの不満で堂々巡りをします。問題は、とってもはっきりしています。事故の責任のすべては東京電力です。だったら、中間貯蔵施設のうちの一つは、東京都千代田区内幸町1丁目1番3号東京電力本社内に設置するというのが筋というものです。そんなものは危ないから、東京の東京電力本社内に設置できないとすれば、双葉町、大熊町、楢葉町に設置してもいいという理由も見つからないはずです。
東電福島の事故が、事故後もスキャンダルであり続けるのは、双葉町が主張するように、事故の当事者であり責任を問うわれるべき東京電力の姿を、自らそして誰かが見えにくくしているからです。
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