久しぶりに、竹馬を作りました。竹は、加西市にある、兵庫教区加西キャンプ場の竹、篠山市後川羽束川堤の竹などを使いました。竹馬の竹は、“竹の子”で芽を出してから、4,5年経った竹を選びます。選び方は竹皮がすっかり落ちていること、その場所の条件にもよりますが、カビなどが残り、いかにも風雪に耐えた、というものを選びますが、かなりは“勘”が頼りです。いずれにしても、竹皮が残っていて、瑞々しい緑の“青2才”は人間を乗せて歩く竹馬には不向きです。
“勘”を頼りに、子どもたちの手の一握りから、大人の手の一握りまでのもので、真返(まっすぐ)であることが竹馬の竹の条件です。子どもの一握りから大人の一握りまでの竹を20~30本切って持ち帰り、作る予定の竹馬の高さに合わせ、2本で1セットの竹の“節合わせ”をします。自然の竹の節は、合うようで合わないところを、あっちこっち置き換えて残るのは、全体に用意した竹の80%くらいになります。
節合わせが終わり、1本ずつさっと火であぶり、しみ出した油分をさっと雑巾でふき取ります。ふき取った後の竹は、それまでのくすんだ竹とは見違える、ピカピカの竹に変身します。
そして、竹馬は何しろ“馬”ですから乗る為の足台の部分を取りつけます。足台は、いろいろ試みられていますが、西宮公同幼稚園の竹馬は、ほぼ竹の太さに見合った丸太を半割りして使っています。そして、ここからが肝心で、竹に足台になる丸太を取り付ける針金は“ノーリツバンセン”を使います。
かつて、建築現場の足場の丸太を組むのに使われていた“ノーリツバンセン”は、丸太と丸太を交差させた時に、バンセンの交差させて輪になっている部分を片方に、残りを反対側で交差させて締め上げると、“能率よく!”そしてしっかりと2本の丸太をくっつけてしまうことができます。その針金が、足場用の丸太などを2本、完璧にくっつけてしまえて、短くもなくて長くもない、程良い長さでもあるところが、“ノーリツバンセン”なのです。その“ノーリツバンセン”を2分の1にカットし、“ノーリツバンセン”の要領で、竹馬の竹と足台の部分をうまく固定した時、竹馬の1本の部分に大人が一人乗っても、要するに“竹馬けんけん”をしても、足台はたれ下がったりしません。丈夫なのです。そして、たれ下がったりしないところが、竹馬の遊びを存分に遊ぶための条件です。歩きやすさはもちろん、竹馬けんけんをしたりなど、遊びの世界が広がります。
そうした竹で作る、手作りの竹馬は、節を合わせながらどんどん高い竹馬になります。そんな時の、乗り手の見下ろす感覚、周囲から見上げる(見上げられる)感覚など、地上にはない別の世界が広がるのです。西宮公同幼稚園の竹馬の遊びは、幼稚園の門を出て、街の中に足をのばす遠出をすることがあります。竹馬の遊びと上達は、それが足で歩くのではなく、手で歩くことの気付きから始まります。足を乗せるだけの足台は、足で歩いてしまうと、当然そこから外れてしまいます。すべての腕の力なのです。当然、腕力には限界がありますから腕が疲れてしまいますが、そんな時には、そのまま塀や電柱によりかかって休みます。足台が1メートルを超えるような竹馬の場合、塀に寄りかかるのではなく、塀の屋根に座って休みます。もちろん、そんな時に、“のぞき見”になったりするのは禁物です。
今、子どもたちが遊ぶ竹馬は、市販されているもののほとんどが金属にプラスチックの足台です。竹馬が金属・プラスチックになってしまっているように、生活文化の中から、ホンモノの竹はどんどん消えてしまっています。かつて竹は、生活文化の中心の一つでした。生活の道具の多くは原料が竹だったのです。竹で編んだざるは、物を入れる容器になったり、水を切ったりする、要するにざるになったりしました。そんなざるが編めるのは、竹の性質で縦方向に細く割ることができるからです。順々に細く割って、外皮にあたる部分を残し、更にそれを割って、1ミリ角ぐらいに割った竹は、どんな形にでも曲げることができ、それを編めば極小のかご、容器にもなります。逆に、大きく割った竹をざくっと編んだかごは農具としても広い用途がありました。
そんな竹の生活文化は、多くの場合失われてしまいました。今、生活の中で使われるかごの多くは、プラスチックや金属です。大量に格安で加工が可能だからです。同時に、竹を扱う技術、竹職人の仕事も必要ではなくなりました。その結果、竹は邪魔ものになってしまいました。かつて、人が生活する里の光景は、川が流れ、それに添って田んぼや畑が広がり、そこから先は竹林に囲まれた民家、民家の背後には人工材、雑木林の里山へとつながっていました。しかし、民家を取り囲む竹林は、春先にその少しを竹の子として食べられる程度で、残りは放置され、その旺盛な生命力、光取競争を勝ち抜く力で、外へ外へと竹林を広げています。そうして竹林が広がってしまっている光景を至るところで見かけるようになりました。
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