篠山市後川の後川小学校が閉校を間近にひかえていることを教えてもらい、初めて訪れたのが、2009年10月でした。校庭に立って見上げた山(大野山)は、紅葉が始まっていました。紅葉の様子から、たぶんコナラのような雑木で「マキになる!」と思ったのと、もう一つは子どもたちと登るのにはぴったりの山に見えたことでした。閉校になった後川小学校の使用について、地元や篠山市と契約することができ、幼稚園の子どもたちが初めて訪れたのが2010年6月です。さっそく、お寺(清陰寺)のわきを通り抜けて歩き始めたコナラの緑のトンネルは、別世界の入り口でした。緑のトンネルを歩き始めてすぐの場所にある、緑のこけむした巨大な岩には、根っこで緑の苔むした岩をつかんだ緑の葉っぱの木が真っ直ぐ伸びていました。緑のトンネルと、緑の岩と、根っこで岩をつかむ真っ直ぐに伸びる木の様子に、そんな森がすぐそこにある後川に文句なく魅了されてしまいました。
そこから更に作業用(?)の道を歩いた先は、そのまま雑木林に続いていました。その道(確かに道!)を歩き始めると、大小のこけむした緑の岩の点在するそこには星野道夫の写真で見た、アラスカの「太古の森」を思い起こさせる場所でした。その時は、時間の都合で引き返しましたが、2度目、更に道(他よりはくぼんで続いている様子から道!)を歩いた先に広がる人工林(杉林)は、随分荒れていました。荒れて、しかも太陽の光が届かないそこに、見渡す限りずっと、緑のこけむした岩が点在しているのです。道はそこまでで、それらしいものはある(あった)のですが、大量の杉の枯れ枝や葉っぱに隠れて、判別ができなくなっていました。
そうして始まったのが、旧後川小学校からすぐそこに見上げる山、大野山の稜線に登る山道の開拓です。何度か、その緑の岩の谷から、左の小さな尾根に出る道に挑戦しましたが、尾根までの斜面が急な為に、子どもたちが登るには、別のルートを捜すよりありませんでした。
昨年、子どもたちのキャンプの最終日の地域のお祭りで、教えてもらったのが、旧後川小学校から大野山の稜線を見上げて見える、葉っぱの緑ではない、2つの大きな岩の塊のことでした。それは大きな岩で、名前は左が「たぬき岩」、右は「唐戸岩」だとのことでした。その後、後川を訪れる度に、2つの岩のことを話題にしましたが、地元人でも、岩の存在はもちろん名前も「知らない!」という人がほとんどでした。
今年の6月から頻繁に後川に通うことになって始まったのが、たぬき岩への挑戦です。今までの左の尾根から大野山の稜線へ出るのではなく、右の尾根から登ってみると、なんとか約1時間でたぬき岩にたどり着くことがでたのです。後川から見上げて、その位置が解るたぬき岩は、稜線の側から下りの道が整備されていて、更に岩の周囲の雑木はきれいに伐採されていました。大野山の稜線の北側は、篠山市域であるはずなのに、後川からは“道なき山”のたぬき岩なのです(何かの経緯と何かの事情でそんなことになっているのでしょうが、少しずつ調査・確認することにしています)。
ともかく、はっきりしたのは、なんとかたぬき岩にたどり着けば、稜線を経て大野山まで歩けることです。大野山には、渓谷の森からの道があって、子どもたちの為に、ステップやロープを張らせてもらったりしていますが、荒れた道で登りはともかく、降りてくるのはかなりきつかったりします。
旧後川小学校から、そのまま見上げた大野山の稜線、そしてたぬき岩には、たぶん昔は人が登り下りしていたはずです。清陰寺から、杉林へ、そして杉林のあたりに残っている踏み跡から、そのことが解ります。杉林も、少し登るあたりまで、道らしきものがあるのですが、途中で解らなくなってしまいます。
たぬき岩に登って少し右の方にそれて下りてくる時に、炭焼きがまの跡が見つかりました。そこで、上下をながめていると、登るにせよ下るにせよ、そこを通過点にすれば、道らしきものを再現できそうに思えました。2度目のたぬき岩では、下りてきた道(?)を逆にたどり、用意した標識を、順番に木に結び付けながら登りました。少し迷ったりしましたが、炭焼きがま跡も見つかり、なんとか標識を付け終えることができました。順番に標識を見つけることさえできれば(見つかるようにつけたつもり!)、誰でも後川からたぬき岩にたどり着けるようになりました。7月19日、3度目のたぬき岩では、その標識の一部つけ直し、子どもたちでも登り下りできるかどうか確認をしました。
7月31日から始まる子どもたちのキャンプで、1日の早朝に、たぬき岩まで往復しますが、その時に、10メートルのロープを、2カ所に張る予定にしています。緑の苔むした大小の岩が点在する「太古の森」に驚き、そして巨大なたぬき岩にも驚く、そして他にもたくさんの驚きのあるキャンプでの、驚きと挑戦の一つが子どもたちの山歩きです。(キャンプの3日目の子どもたち全員の山歩きの時に、ロープを張ることができました。役にたちました。)
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