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2013年12月05週
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一冊の本を手に取るのは、直接ではなく紹介する文が手がかりとなることが多いように思えます。ル・グウィンの「いまファンタジーにできること」を手にすることがなかったら、「黒馬物語」(シュウエル、岩波少年文庫)、「バンビ」(ザルテン、岩波少年文庫)「ジャングルブック」(キップリング、福音館)、「シートン動物記・灰色ぐまのワーフ」(シートン、偕成社)などの、豊かな動物たちの世界と出会えずに終わったに違いありません。「いまファンタジーにできること」の「訳者あとがき」に書かれていた「ル・グウィンの言葉は以前(2011年3月11日の東日本大震災)と変わりなく、心に響きました。いや、いっそう力強く、澄んだ響きになったかもしれません。以前の訳した分を見直したときに、前にはわからなかったことがわかるようになったところがありましたから。この力強い声を頼りに、これからもファンタジーを読んでいこうと思います」(谷垣暁美)。「いまファンタジーにできること」が2011年3月11日以前と変わりなく心に響いた」ということが起こり得るとすれば「あの日を境に現実がすっかり変わってしまう」のではない、何か核がそこには語られていることを意味します。そのことの指摘で、読みはじめて、前掲の一つ一つの物語は、たとえ3月11日のような現実を目の当たりにした後であっても変わりなく、むしろより鮮明に、現実を見つめ受容して生きるゆるがない核を共感できたように思えました。成長・成熟のの核を担うのは自分であって、助け手にできるのは見守ることであるという、どうな生きものにも共通する鉄則が「バンビ」に描かれています。その時に、たくさんの死や裏切りなどの中を奇跡のようにしてバンビは生き延びます。それは、どんな生きものにも、もちろん人間にも共通する、生きることの鉄則なのです。前掲の動物の物語は、それらのことを余すことなく描いていることを、一冊一冊を読みながら知ることになりました。
 そんな動物物語など、2013年に読んだ本を紹介することにします。
 「家と庭と犬と猫」(石井桃子、河出書房)。戦争に負けた後の日本で、本当の田舎暮らしに、本当にいどんだ石井桃子の「ノンちゃん牧場」の話などが含まれる。何もないところから、牛を飼う牧場を実現してしまう力と、その力を過信しないのは、自然の生命の原理に謙虚だったからだと思う。そんな生き方が、子どものほんの仕事をする石井桃子そのものになっています。楽観的で少なからず悲観的である誠実さが、徹底していい子どもの本(絵本)との出会いの実現になりました。
 「伝書」(志村ふくみ)。自然の中から、糸を染める色彩を取り出す不思議と喜びが絶妙の文章で描かれています。自然との生きた出会いが、生きた言葉となって実を結ぶのです。
 「花のベッドでひるねして」(よしもとばなな、毎日新聞)。自然の法と人間の法の間を生きて、自然の法が語りかける「…流れる、朽ちる、生まれる」が聞こえてきた時、世界はどんな意味でも見捨てたものではないこと、人間は小さな小さな一歩をきざんで生きものであることに気付く。見捨てたものではないのです。
 「わが心のアッシジ」(片桐すみ子 編)。新しいローマ法王がフランチェスコを名乗ることになって いて、フランチェスコとローマ法王について少しだけ勉強をした。巨大宗教団体の法王が、フランチェスコ即ち清貧を名乗るという根本的な矛盾に、その名前においていどんだのが、フランチェスコ法王。
 「黒馬物語」(シュウエル)。たとえば軍馬は、馬として生きる自然のすべてを奪われて調教され、人間の戦場をかけ回されたあげく、傷を負った時には処分され、戦況の過酷な時には飢えをしのぐ“食料”になることを、馬たちに要求します。人間の世界の人間に翻弄される「黒馬物語」は、馬が描く人間物語にもなっています。
 「三本の金の髪の毛」(中・東欧のむかしばなし、松岡享子)。他のすべての生きものと人間をへだてる、何よりの違いはたぶん“欲”であることを、むかしばなしはおもしろおかしく語ります。時に残酷なむかしばなしが、子どもたちに好まれるのは、そこに貫かれている“真実”の力であるように思えます。
 「小黒三郎のの世界No.3/組木の節句人形Ⅰ」(U・PLAN)。子どもたちのおもちゃの世界で、誰でも手作りで出来てしまうことにしてしまったのが「小黒三郎の組木の世界」です。電動糸のこという、機械・道具が手作りの物作りを可能にします。そして、組木のデザインが公開されることが、更に身近で可能になりました。「小黒三郎の世界No.3/組み木の節句人形Ⅰ」は、その組木の世界でも、「節句人形」がいっぱい紹介されています。
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