1996年11月に火薬類保安手帳を千葉で取ってから18年目になります。翌年の4月には東京の蔵前にある花火問屋とつながるようになって、打上従事者手帳も取ることが出来ました。火薬類保安手帳だけでは「花火師」になることはできません。火薬全般を扱う火薬類保安責任者と、煙火だけに限定されている打上従事者の2つのライセンスをもって「花火師」と呼ばれます。
一般に火薬と呼ばれるものには①火薬(黒色火薬)②爆薬(ダイナマイト)③火工品(実包、導火線、煙火)となります。煙火は、さらに免許のいらない玩具花火と免許の必要な煙火花火に分けられます。
煙火花火を行う時には都道府県知事の許可を県民局に届けることになりますが、原則として主催者が申請します。でもほとんどの場合は打上者が代理で申請していくのですが、都道府県によって書類が統一されていませんし、保安距離も統一されていません。統一されているのは打上場を管轄している消防署と警察署の書類です。都道府県知事の承認の書類をもって警察と消防署に申請に行くときに一度申請に行くと「昨年と同じ」ということで、結構スムーズに進めることが出来ますが、初めてのところではなかなかスムーズにはいきません。特に兵庫県と愛知県は申請が厳しいところで有名です。千葉にいた時も1999年から毎年続けてきた石垣島のオリブ保育園夕涼み会での打上でも、2011,2012年に宮城県石巻市で打ち上げた時も、そんなに注文はありませんでした(2012年には私服警官が2人見学に来ていましたが)。
「花火師」は一人でもできないことはないのが打上花火ですが、「協力者」はやっぱり必要です。「打上従事者」のライセンスだけを持っている人もいますが、ほとんどの人は花火会社所属とか、大学の活動、イベント会社に所属していますので、「個人」というよりも「団体」扱いされていきます。もう一つの個人で打上従事者を取る方法が「花火師」の紹介です。花火の打ち上げを協力してくれる人に打上従事者のライセンスを取ってもらって一緒に行動します。打上従事者にいきなり個人がなることはできませんし、いろいろな制約があるために、誰でもどうぞと花火会社もいえません。「花火師」の紹介があれば、基本的に誰でも打上従事者のライセンスを取得することは可能です。それは年に1回のライセンス更新講習会に加えて、花火師が保安講習を行うことが暗黙の裡に前提とされているからです。
千葉にいた時、地元の町内会、役場、自治会、小学校の親を巻き込んで作った「チーム安食」は最初5人で始まりました。翌年この5人が打上従事者のライセンスを取って「花火は大人のあそび!」と安食の小学校でのお泊り会、町内会のお祭り、自治会の夕涼み会、教会のキャンプなどで活躍して行き、どんどんと増えて、昨年の段階でチーム安食に所属しているメンバーは地元青年団も加えて20名となっているそうです。
そのことを教えてくれたのが、蔵前の山縣商店の社長です。「個人メンバーではなくなって、チーム安食という団体でライセンスを取りに来る人が毎年いる」とのことでした。その発端となっている人物は何度も住所が変わっているので不思議に思われています。それでもこの時期にはおよそこれだけの消費をするということが分かっているようで、すでに今年の新作花火をいくつか交えて先買いをしているとの連絡があったときにチーム安食の近況を教えてくれました。
毎年約30種類もの新作花火が市場に出てきます(玩具花火は毎年70種類程度、煙火花火の大半は自分の花火会社で消費して他には教えないようにする“企業秘密”なのだそうですが)。例えば花火大会でも大きい部類の6号玉の試作品として作られた4号玉などが市場に出回る前に裏情報が入ります。その裏情報から花火問屋が買うことになるのですが、問屋は新作を扱うためには注文を待っていては入手できません。新作を買ったはいいが、どういう物かを説明できないのでは商売にならないので、実際に試すよりありません。なかなか自分たちで新作を試す機会もないということで、その年の最初に花火を打ち上げるところにいくつか「新作情報」と新作花火を割と安く販売してくれます。その見返りに感想も含めた花火の色・形・着火地点と開花地点、大きさ、高さ、音、反応、黒玉(不発)の有無など電話での問い合わせに答える形になっています。
石垣島での夕涼み会は山縣商店が扱っている花火大会の先駆けとなっていた為に、毎年新作を分けてもらっていました。毎年新作をいただいていたおかげで、今年も当然のように新作をいくつか用意してくれているようです。その新作花火のお披露目は今年度から篠山・後川の夏祭りとなる予定です。
昨年から篠山・後川でも夏祭りの花火をさせてもらうことになりました。後川の方にも協力していただき、打上前に小雨が止む好条件でした。花火を一緒に打ち上げる仲間意識は、初対面でよそよそしくても、打上が終わるころには仲良くなっています。自分の職場とは少し違った視点で集まる場はとても貴重なのです。
大型連休になるちょうど今の時期が新作花火の情報が流れる時と重なってくるのは、連休中に関東なら山梨や千葉の試作打上場で最後の仕上げを行うからだと言われています。花火は夜空で光の花を咲かせた時に初めて「花火」と呼ばれます。その1発の花火(光・色・形・音)を作るために1年の半分を費やしています。ちなみに一般的な花火の打ち上げの高さと花が咲いた時の大きさは、2号玉(高さ80-100m、花50m)、3号玉(高さ120m、花60m)、4号玉(高さ160-180m、花130-140m)、5号玉(高さ190-200m、花170-190m)、6号玉(高さ220-230m、花220-240)、尺玉(高さ330-350m、花320-330m)、2尺玉(高さ500m、花480-500m)となります。5号玉ぐらいまでを個人的な花火大会では行っていきますが、地形なども考慮に入れて、その場でできるものを組み合わせるのも花火の楽しさでもあります。
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