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2014年06月03週
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「世界で最も大切な絵本」のコーナーをのぞいてみてください。
 国際アンデルセン賞の、2014年度の作家賞に、上橋菜穂子さん(「精霊の守り人」シリーズなどの作家)が選ばれることになりました。上橋菜穂子も、作品のことも、ほとんど知らないままでしたので、「精霊の守り人」から読み始めています。それがアンデルセン賞だからという訳ではなく、かつての受賞者である、エリナ・ファージョン、バージニア・ハミルトン、キャサリン・パターソンなどの児童文学作品は、大好きで読んできました。それらの、どの作者、作品にも共通するのは、プロフェッショナルとうことであるように思えます。
 今、読んでいる上橋菜穂子さんの作品「神の守り人」の、著者による文庫版あとがきに「プロフェッショナルの魅力」のことが書かれています。
 著者は以下のような意味で、登場人物(主人公の一人、バルサ)の「プロフェッショナルの魅力」を描いています。
 「そういう修羅場をいく度も踏んでいくうちに、責任を負うのを当然のこととして、どんな状況になっても立っていられるようになっていくのではないでしょうか。そうやって仕事に磨かれて、自分に出来ること出来ないことを悟るようになった人は、甘い幻想に逃げることをせずに、淡々と、自分が出来ることを成し遂げていけるのではないかと思うのです」「プロであるという自意識が過剰になり、己の物差しを過信してしまうと、かえって視野が狭くなってしまうことがありますが、多くの経験をし、『過信の怖さ』を骨身に沁みて知っている人には静かな謙虚さがあって、私はそういう人に強い魅力を感じるのです」。
 たとえば「神の守り人」で描かれる登場人物・主人公のバルサは、決してたやすくはない状況の中で「淡々と、自分のできることを成し遂げていける」「静かな謙虚」さが魅力で次々とページをめくらずにはおけない物語なのです。
 と、「ぶんこだより」(2014年6月、No.3)で書き、他の日本人の国際アンデルセン賞の紹介をしたりしましたが、上橋菜穂子さんの「『国際アンデルセン賞』受賞記者会見」や、アンデルセン賞に選ぶにあたっての国際児童図書評議会(以下IBBY)の「選評」が掲載されている小さなパンフレットを入手し目を通すことになりました。IBBYの選評(全文)がとても立派であるのは、作品が立派なのはもちろんでしょうが、IBBYが児童文学作品をアンデルセン賞として選ぶ時の見識の高さがそのまま選評になっているように読めました。
 「上橋菜穂子氏は文化人類学の視点から、独自のファンタジー小説を書く。彼女には1つの信念がある。それは『世界のあらゆる人々が物語を愛しているという共通点をもっている』というもの。名誉と義務、運命と犠牲について描かれている彼女の物語は、日本人そのものであると同時に、大変新鮮だ。彼女のファンタジー世界は中世の日本に大枠で基づいているが、彼女が独自に創り上げたものである。しかも、それはただその土地や神話的な景観を創りあげるのではなく、その世界の階級制度への問いかけや、精神性や道徳的視点の相互関係も含めた世界である」。
 「上橋氏は、多様な異なるレベルの関係性として世界をとらえている-単なる空間としてではなく、むしろ宇宙の中にあるひとつのネットワークのような世界としてだ。彼女には、他者とは異なるファンタジー世界を構築する並外れた力がある。そして彼女の作品は、自然や生物に対する優しさと、深い尊敬の念に満ちている」。
 多くは目を通していませんが「守り人」がタイトルのいくつかの物語、「獣の奏者」のⅠ、Ⅱなどは、IBBYの選評にふさわしいファンタジー(物語)であり、「名誉と義務」「運命と犠牲」が誇らかに描かれているのです。更に、「自然や生物に対する優しさと、深い尊敬の念に満ちた」世界の中で描かれてもいます。「ゲド戦記」の著者であるル・グゥインが「いまファンタジーにできること」で、指摘していることにもそのままあてはまることです。「わたしたちの現実が見せかけの愛国心と独りよがりの残忍さへと堕落してしまったように思われるこのアメリカで、想像力による文学は、今もなお、ヒロイズムとは何かを問いかけ、権力の源を検証し、道徳的によりよい選択肢を提供しつづけています。戦いのほかにたくさんの比喩があり、戦争のほかにたくさんの選択肢があります。そればかりか、適切なことをする方法のほとんどは、誰かを殺すことを含んでいません。ファンタジーはそういうほかの道について考えるのが得意です」。
 上橋菜穂子さんの物語は、ル・グゥインが考えているように、避けられないと考えられる「戦い」や「戦争」に、ほかにたくさんの選択肢があること、「適切なことをする方法のほとんどは、誰かを殺すことを含んでいない」ことを、登場する人物たちの生きた姿で描きます。
 ここ10年、ないしは20年と生きてきた身近な世界では、選択肢を広げるよりは、より狭くすることに力が注がれてきました。幅広く、柔軟に受け入れるよりは、排除し閉ざすことに汲々とする日本社会です。長い歴史の中で、多くのものを受け入れ育ててきたはずの隣国との関係が、ぎくしゃくしてしまうのは、愚かさ以外の何ものでもないはずです。IBBYの「選評」が「名誉と義務、運命と犠牲について描かれている彼女の物語は、日本人そのものである」と言う時の日本人は、「生存と基礎とする人格権」に、どんな意味でもそのことに敏感な人間として高く評価されています。それは狭い狭い了見が帰結する、戦争を選ぶのではない日本と日本人の評価です。

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