ねえ、ほんとうにいるの
いるよ サンタクロースはね こどもを よろこばせるのが なによりの たのしみなのさ だって こどもが しあわせなときは みんなが しあわせなときだもの サンタクロースは ほんとにいるよ せかいじゅう いつまでもね
子どもたちのサンタクロース問題「サンタクロースはいるのか、いないのか?」に、文字通り真正面から挑んだのが「サンタクロースって、ほんとにいるの?」(てるおかいつこ:文、すぎうらはんも:絵、福音館)です。子どもたちの、「この問題」に、文、てるおかいつこ・絵、すぎうらはんものこの本は、子どもたちにも、問題にも、それはそれは見事に「寄り添う」ことで解いてみせます。
サンタクロース問題を子どもたちに解いてみせた「サンタクロースって、ほんとにいるの?」が生まれた経緯を「サンタクロースを探し求めて」(暉峻淑子、岩波書店)で、著者自身が書いています。「サンタクロースを探し求めて」は、著者の生い立ちから始まり、幼い2人の子どもたちの絵本の時代をいっぱい一緒に過ごしたことが紹介され、「サンタクロースって、ほんとにいるの?」の、子どもたちとお父さんお母さんの、それはそれは見事な言葉のやりとりが、どんなふうにして生まれたのか、ページを追って解き明かされます。
そして、「クリスマスの起源」とサンタクロース伝説の人、「聖ニコラウス」誕生の地を訪ねる旅と資料で、伝説の人にも迫ります。子どもたちにとってはサンタクロースからの贈りもの、大人の世界で多様な贈りもののありようを、中でも日本社会で起こる「贈収賄」などについて、専門の経済学者として歴史的に考察します。
暉峻淑子さんが「サンタクロースって、ほんとにいるの?」を書く一方で、別に「サンタクロースを探し求めて」も書くことになったのは、サンタクロースをただ真偽のこととしては書けない人だからです。「サンタクロースってほんとにいるの?」という子どもたちにとって切実な問題を、その切実さを裏切らないで答えるためには、自分の子ども時代、幼い子どもたちと一緒に生きた時の様々な出来事、そして、サンタクロース問題のもう一つの核心である「贈与」(贈収賄!)、そして他者と関係する社会のことも書かざるをえませんでした。
サンタクロース問題の核心である「ねえ、ほんとにいるの」について、絵本の最後のページで「いるよ サンタクロースはね こどもを よろこばせるのが なによりの たのしみなのさ だって こどもが しあわせなときは みんなが しあわせなときだもの サンタクロースは ほんとにいるよ せかいじゅう いつまでもね」と書きます。
他にも「サンタクロースの部屋」(松岡享子、こぐま社)でもサンタクロースに関する一文が次のように紹介されています。
<サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎えいれることができる。…のちに、いちばん崇高なものを宿すかもしれぬ心の場所が、実は幼い日にサンタクロースを住まわせることによってつくられるのだ。…本当らしく見せかけることによってつくられる本当と、本当だと信じることによって生まれる本当を、子どもはそれなりに区別している>。
以下、子どもたちと一緒に過ごすサンタクロースのクリスマスまでの時間を、一層心に残るものにするクリスマスの絵本や物語です。
「山のクリスマス」(ベーメルマンス 文・え、岩波の子どもの本)
「百まいのドレス」(エレナー・エスティス 作、ルイス・スロボドキン 絵、岩波書店)
「シモンとクリスマスねこ」(レギーネ・シントラー 作、ジータ・ユッカー 画、福音館文庫)
「クリスマスのリンゴ」(ルース・ソーヤー、アリソン・アトリー他 文、福音館書店)
「クリスマスまであと九日」(エッツ&ラバスティダ 作、富山房)
「クリスマス・イブ」(マーガレット・W・ブラウン ぶん、ベン・モントレソール え、ほるぷ出版)
「サンタクロースって ほんとにいるの?」(てるおかいつこ 文、すぎうらはんも 絵、福音館書店)
「クリスマス人形のねがい」(ルーマー・ゴッデン 文、バーバラ・クーニー 絵、岩波書店)
「とってもふしぎなクリスマス」(ルース・ソーヤー 文、バーバラ・クーニー 絵、ほるぷ出版)
「イエスとは誰か」(ジョン・ドミニク・クロッサン、新教出版社)
「時計作りは、トルーデにいいました。『日曜日やお祝いの日だけ、おさな子イエスにお祈りして、ささげものをするものではないんだ。毎日、毎時間、祈ることをわすれてはいけないのだよ』」(「クリスマスのリンゴ」)。
「真意を問うことが大事です。神の顕われはいったいどちらなのか。皇帝かイエスか、帝国の繁栄か農村の貧困か、上から他人を押さえつけて束縛することか、下から他人を支えて解放することか。これがイエスの誕生物語の真意を捉える問いなのです」(「イエスとは誰か」)。
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