40年程前、歯科医院の待合室で製薬会社のパンフレット(確か「SCOPE」だった?)をめくっていて見つけたのが、「彦一だこ」です。千葉県佐原の歯科医の“彦一さん”の考案で、3,000メートルの長さの糸をくり出して、そのたこあげをしている様子が、写真入りで紹介されていました(いたと思う)。製薬会社に問い合わせ(たぶん)図面を入手し、そのたこを作るようになりました。その頃、武庫川の河川敷であげた「彦一だこ」で、一番高くあげた時の糸は800メートルを超えていました。
子どもの頃、やっこだこなどを手作りして、たこあげをしましたが、たいてい、くるくる回ったりしてあがりませんでした。その後、「彦一だこ」に出会うまで、たこあげで遊んだりすることはありません。入手した図面で手作りした「彦一だこ」は一本の糸で手を放して風を受けたその場で、ゆれることもなく、スーッと糸を引いてどんどんどんどんあがるたこなのです。子どもの頃のやっこだこが、しっぽごと、くるくる回って墜落していたのと大違いでした。「彦一だこ」は絶妙のバランスであがるたこなのです。
「彦一だこ」が、一本の糸で絶妙のバランスであがる秘密は、下部に取り付けられている「丸い輪」です。その丸い輪が飛行機だったら、垂直尾翼の働き(役割)をするからです。たこはそこそこよくできていても(形も重さも)、その時の風の具合で簡単にバランスを崩してしまいます。飛行中の飛行機が方向を制御・決定できるのは垂直尾翼の働きによっています。そんな、垂直尾翼と同じ働きをするのが、「彦一だこ」の丸い輪なのです。
たこあげは、日本各地で伝統行事として遊ばれてきました。子どもたちの世界に、たこあげという遊びが劇的に復活させたのは、「ゲイラカイト」です。使っている素材が均質で、取り付けられている垂直の幕が、垂直尾翼の働きをし、その先端から伸びる一本の糸で「ゲイラカイト」は風を受け、完全なバランスで風に乗り、誰でもあげることができます。
「彦一だこ」に出会った後、別にいろいろ手作りのたこを作ってきました。参考にしたのは「やさしい、はつめいだこ」(にいざかかずお、福音館)、「凧-空の造形」(広井力、美術出版)、「美術ガイド・凧、日本の凧、世界の凧」(美術出版)などです。「やさしいはつめいだこ」で紹介されている、まん中に穴が開いている「マジックダイヤ」はよく作りましたが、バランスをとる為にはしっぽが必要でした。「凧-空の造形」や「美術ガイド・凧」で紹介されている、パネルで組み立てる「立体凧」もよく作りました。桧棒を正確に切ってそろえるのと、つなぐのに、少し技術が必要ですが、どの「立体凧」も、ほぼ完全なバランスであがります。また、「凧-空の造形」には「ぐにゃぐにゃ凧」が「比例」をいろいろ変えてもよくあがること、また、大きさもいろいろ挑戦できることが紹介されています。
幼稚園の子どもたちは、ビニールの袋(カラー)を使ったぐにゃぐにゃだこを作っています。たこあげ大会で、毎年一番よくあがっているのが、この幼稚園の子どもたちのぐにゃぐにゃだこです。教会学校の子どもたちは、ぐにゃぐにゃだこを長さと大きさを変え、更に和紙(障子紙)を材料にして作っています。ビニール製との違いは、丈夫で、破れにくいところです。
今年、幼稚園などの保護者に呼びかけて製作するのは「彦一だこ」です。「彦一だこ」の情報は、インターネットで、その由来、作り方などを検索できます。たとえば千葉県香取市の「広報かとり」に、由来なども紹介されています。「彦一だこをご存知ですか?子どものころ作ったことがあるという人も多いのでは。実はこの彦一凧、佐原で歯医者さんをしていた、里村彦一さんが考案したものです。大空にピタリと張り付いたようにあがる凧。お正月は、地元生まれの彦一凧を家族で楽しんではいかがでしょうか?」(「広報かとり」No.66、平成20年12月15日、編集、香取市役所総務部秘書広報課)。
「彦一だこ」は、かなり大型で全長が1メートル、横幅が最大60センチ、和紙を使いますから、かなり重いたこです。今年、製作にあたって使う竹ひごは市販のものではなく、淡路島、平安荘キャンプ場の竹藪で切ってきた竹を削り、手作りで用意しています。
そんなたこも空を舞う、“2015・公同たこあげ大会”は、2月14日です。
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