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小さな手大きな手

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2016年01月03週
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 2016年は“申(さる)年”ということもあり、小黒三郎さんのデザインした組み木の猿を切っています。2000年の噴火で全島避難になった三宅島の子どもたちには、その年のクリスマスから心ばかりのプレゼントを届けていますが、2015年は小黒三郎さんの猿の組み木になり、210個切って届けました。
 2011年末から実施している、石巻・仙台の“よもぎもち・もちつき隊”の折に届けている“干支”のバッチは、2015年は組み木の猿となり、50個切って届けてもらいました。組み木の猿は、年末・年始に他にも約50個切っています。その組み木の猿の、抱かれている“小猿”だけを抜き出して、バッチを作ったりもしています。以下、小黒三郎さんの組み木の猿のデザインと、添付している“猿からの”メッセージカードです。

サル
私ども(猿)からしますと、皆さん(人間)は、
すべてにおいて素晴らしく見えます。歌うことは、
私どもも少しは出来ますが、到底皆さんのように
はいきません。
 ですが、そのような皆さんが憎んだり憎まれた
り、殺したり殺されたりの戦争をなさるのは納得
いたしかねます。
 歌うことはもちろん、演奏し踊ってなど、素晴
らしい特技をお持ちの生きものであることを、お
忘れになりませんように。                  

                                    組み木デザイン:小黒三郎

 そんな猿の絵本で、子どもたちに圧倒的人気なのが「ひとまねこざると きいろいぼうし」(H・A・レイ 文・絵、光吉夏弥 訳、岩波子どもの本)です。
  
  これは、さるの じょーじです。
  じょーじは、あふりかに すんでいました。
  まいにち、たのしく くらしていましたが、
  ただ、こまったことに、とても しりたがりやで
  ひとまねが だいすきでした。

 こうして始まる「ひとまねこざると きいろいぼうし」の主人公“じょーじ”は、そのまま、すべての子どもたちの存在にあてはまります。毎日を成長することで生きている子どもというものは、「…まいにち、たのしく くらし」「こまったことに、とても しりたがりやで ひとまねが だいすきでした」そのものです。もちろんというか、たまに「しりたがりで、ひとまねが だいすきでした」がうまくいかなかったりすると、わんわん、おうおう泣き叫んだりします。それも、しばらくのことで、すべてをけろっと忘れて「まいにち、たのしく くらす」のも子どもたちです。そんな子どもたちにとって、「ひとまねこざると きいろいぼうし」のじょーじの絵本が楽しくないはずがありません。絵本のじょーじは、そんな子どもたちの自然を、そのまま生きて更にはるかに自由に破天荒に生きているところが、子どもたちの最大の魅力です。そして何よりなのは、どんなにじょーじが振る舞っても、すべてを受け止める「きいろのぼうし」の存在があることです。
 で、「ひとまねこざると きいろいぼうし」の主人公が、他ならない猿であるのもとても重要です。手と足があって、少しは直立歩行もできてしまう猿だからこそ、この絵本の世界はうんと広い世界を舞台にして成立するのです。他の動物では必ずしもこうはいきません。やっぱり猿なのです。
 この「やっぱり猿」が、全く違う展開になるのが、「かにむかし」(木下順二・文、清水崑・絵、岩波子どもの本)です。手と足を使いこなせる猿は、その分生きる世界が広くなります。「かにむかし」のかにとは、生きる世界の広がりにおいて、大いに違っています。たぶん、この生きる世界の広がりの違いが、絵本「かにむかし」の根底にあって、元来、猿というものが、この絵本の猿のようにいじわるということではなくって、生きる世界の広がりの違いであるように思えます。ですから、猿のことを「かにむかし」のように描いてしまうのは、猿たちに対して、とても失礼であると言えなくはありません。
 生きる世界が広いということでだったら、すべての生きものの中で、その頂点に立っているのが人間です。その人間の振る舞いこそが、他の生きものにとってはいじわるそのものです。「絶滅危惧種」などと言われたりする場合の生きものの、その生きものたちの「絶滅」の先頭に立っているのが、ほとんどの場合生きものの頂点に立っている人間です。猿どころではないのです。
 それでも「かにむかし」もまた子どもたちの大好きな絵本の一冊です。とことんのいじめるが、とことんやっつけられてしまうところが、間違いなく「弱者」である子どもたちの心をつかむからです。 
 1月16日は、「大地震子ども追悼コンサート」でした。兵庫県南部大地震で亡くなった子どもは、514人です。金時鐘(きむしじょん)は、「光州詩片」で、亡くなった人たちのことを書く詩の終わりを「葬るな人よ、冥福を祈るな」としました。愛する人を亡くした人たちの、心に届き得る言葉があるとすれば、「葬るな人よ、冥福を祈るな」であるように思えます。

    人を
    愛することを
    知らない者は
    愛を語るな
    愛することは
    愛することは
    愛することは
    一切であり
    すべてなのだ

    人に
    愛されることを
    知らない者は
    愛を語るな
    愛されることは
    愛されることは
    愛されることは
    一切であり
    すべてなのだ



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