1、 道を教えてください 足跡残してください
そこまでどれだけ遠いのでしょう
痛みを抱えた動物たちだけが向かう
誰にも教えてもらわずに 迷わず向かう
賢いはずの人間だけが 辿り着けずにまだ迷って
いつか誰か教えてくれるまで
美しい風たちと 美しい水たちと
秘密が秘密に そっと寄り添って
もの言わぬ森たちと もの言わぬ空たちと
そこでは時計が黙り込んでいる
2、 見つけたつもりで近づけば偽物ばかり
騙しているのは 眼の中の氷のカケラ
涙に溶けて流れて去れば 突然見える
すぐ眼の前 密やかに続く道の その先
停まらない風たちと 停まらない水たちと
秘密が秘密を 補いあって
息をする森たちと 息をする砂たちと
そこでは記憶がすれ違ってゆく
3、 これは秘密 すべて秘密
あなたたちが打ち明けたら 消える
美しい風たちと 美しい水たちと
秘密が秘密に そっと寄り添って
もの言わぬ森たちと もの言わぬ空たちと
そこでは時計が黙り込んでいる
(中島みゆき/アルバム「相聞」より)
東電福島の事故現場では、溶けた(溶融)燃料と、その高熱で溶けた圧力容器、格納容器などを冷却する為の水が今も大量に注入されています。この水は、上記燃料等に触れて、超高濃度の汚染水となり、壊れた原子炉から漏れ出す為に、2段階で、放射性物質が「除去」されています。セシウム吸着塔と、多各種除去設備で、いずれも「除去」した放射性物質はそれとして残りますから、特殊な容器に満杯になると新たな容器に交換されています。結果、超高濃度の放射性物質の容器は増し続けています。
この2つの「除去」設備ではその性質上「除去」できないのがトリチウムで、事故の東電福島の敷地内のタンク(約1000トン)で増え続け、その量は100万トンを超えていると報告されています。その事故現場では、こうして汚染水を発生し続けるその原因である、溶けた燃料の処理が急がれるのですが、その見通しは事故から7年目を迎える今も、ほぼ何一つ見通しが立っていません。
ほぼ何一つ見通しの決まっていない事故現場で、たとえば1号機原子炉建屋で始まったのが、使用済み燃料プールでがれきの撤去が始まっています。これは、プールから使用済み燃料を取り出す為の不可欠な作業です。「燃料取り出しを巡っては、水素爆発で崩壊した屋根や鉄骨などがプール上部に散乱し、作業の妨げとなっている」(1月23日、福島民報)。溶けた燃料を取り出す為には、使用済み燃料の取り出しが必要で、その為にはガレキの撤去が必要である。その必要の為の作業です。「2021年までにすべてのガレキを撤去」の方針になっていますが、この作業の結果、溶けた燃料の取り出し作業たどり付けるのかどうかは全く不明です。何よりも難しいのは、取り出すとしている溶けた燃料の周辺は超高濃度の放射線量の値が示される場所だからです。たとえば2号機の場合について、東電が示している放射線量は、7~42シーベルトだったりします。「東京電力は1日、先月18日(1月19日)に実施した内部調査の測定結果を公表した。溶融燃料(燃料デブリ)が広がっていた原子炉圧力容器土台(ペデスタル)の空間線量は毎時7~8シーベルト、温度は21度だった。ペデスタルの外側の空間線量は毎時15から42シーベルトで内側よりも高かった」「毎時8シーベルトは、人が1時間程度とどまれば確実に死に至る線量」(2月2日、福島民報)。汚染水のもとになる溶融燃料は全くの手つかずで、その状態を把握するのも難しく、使用済み燃料も手つかず、「ガレキの撤去」がやっと始まったとしても、超高濃度の汚染水は漏れ出し続けることになります。結果、東電福島の敷地内と 今もこれからもずっと、放射性物質のトリチウムは増え続けることになり、それを止める手立ては今のところありません。
その結果、言及されているのが、トリチウムの海洋放出です。海洋放出案は、今までもすっと言及されて続けてきました。きましたが、反対意見も多く実施には至っていませんが、繰り返し海洋放出案は浮上しています。「更田(ふけた)規制委員長楢葉町長と会談/海洋放出早期決定を/処理処分で考えます」「更田豊志委員長は11日、東京電力福島第一原発で発生する汚染水を浄化した後の放射性物質トリチウムを含む処理水の処分について、希釈して海洋放出するのが実施可能な唯一の手段だとの考えを示し…」「更田委員長はトリチウム処理水を貯蔵するタンクの原発構内での保管は、2、3年で限界を迎えるとの見通しを示し、『海洋放出の準備に2、3年かかる。意思決定までの時間は残されていない』と指摘した」(以上、1月12日、福島民報)。「知事会見/第一原発トリチウム処分/慎重な議論訴え」「内堀知事はトリチウム処理水の取扱いについて『社会的影響が非常に大きいと国や東電に申し上げている』との考え方を説明」(以上、1月16日、福島民報)。「トリチウム処理水の処分方法を議論/経済省小委員会」「処理水を巡っては政府の側の検討会が2016年6月の報告書で、薄めて海洋放出する方法が最も短期に低予算で処分できるとした。小委員会はこの報告書を基に、風評被害など社会的影響も考慮して適切な処分方法の評価をまとめる」(以上、2月3日、福島民報)。
(続きは、次週に)
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