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小さな手大きな手

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2018年06月01週
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(前週の続きより)
 事故現場については、東電と国が「廃炉カンパニー」を立ち上げて事故現場及び事故対策の現状更に今後の対応、対策が月毎に事細かに報告検討はされています。それに呼応するかのように「福島第一原発廃炉図鑑」(開沼博、太田出版)のようなものも出版されます。しかし、廃炉カンパニーの「廃炉」も、「廃炉図鑑」の廃炉も、願望としてはあり得ても、事が放射性物質が閉じ込められなくなったような事故の場合、決してあり得ません。現在も続く放射性物質の放出が止められなくて、放出されてしまった放射性物質の処理も、本来不可能であるのが放射性物質だからです。廃炉カンパニーの廃炉も、廃炉図鑑の「廃炉」も、当面目指しているのは、壊れた原子炉からの燃料の取り出しです。東電福島の事故が「重大事故(ないしは過酷事故・シビアアクシデント)と言われるのは、燃料が溶けてしまっているからです。たとえば、普通一般に使われている核燃料の一つ一つ別のペレットを棒状の管に入れ、更にそれが束ねられた状態で原子炉容器の中に並べられています。その出し入れは、直接人間の手ではなく機械的な運搬手段が使われています。手を触れることはもちろん近づくこともできないのは、被曝するからです。重大事故の東電福島では、本来の形状の燃料が事故で溶けてしまい、その形状もほとんど解らないまま、更に、燃料を格納する容器も溶けてしまっています。現在、溶けた燃料の状態を探る取り組みが進められていますが、遠隔操作で近くまでカメラをロボットで運ぶ、ロボットの研究・試作の段階です。このロボットやカメラが研究・試作・実験段階であるのは、調べる場所が、放射線量の測定も容易ではないからで、ロボットを壊れた原子炉の中に送り込むにしても、その場所を簡単に開放したりもできません。ロボットを送り込むのも、遠隔操作です。更に、ぎりぎりのところでするそれらの作業のすべてが、ぎりぎりのところでの被曝を覚悟の作業になってしまいます。東電福島の事故です。
 「廃炉図鑑」は、東電福島の事故の廃炉をまずは科学の名において論証し、そこから現場の具体的状況、そして廃炉の現状を分析・報告します。「科学」の名においてです。「廃炉図鑑」は、廃炉の困難さを語る言葉を「福島をとりまく魔術的な言葉」とし「…ここではマックス・ウェーバー的な科学観に基づき『脱魔術化』であると定義しておこう」と言い、別に「百科全書」が18世紀に提起した「人間の知識と時の流れと変革とから保護する」、それが科学であるとの理解で、廃炉は困難であるという現実認識を、「魔術」として退けます。途方もない費用で自慢の現代技術を駆使してロボットの開発などは進むのでしょうが、途方もない量の放射性物質を環境中に降り注いでしまった事実、それこそが東電福島の事実なのですが、決して無かったことにはならないのです。東電福島の事故現場では現在も、外部から注水して原子炉と溶融した燃料を冷やしており、これは高濃度の汚染水となって壊れた原子炉から漏れ出しています。対策の為の施設が循環冷却施設です。循環冷却施設は、壊れた原子炉から放射性物質が漏れ出すのを防げている訳ではなく、汚染水を循環させているだけですが、「科学」ということでだったら単なる応急対策です。更に、循環の途中で放射性物質の一つセシウムを吸着して取り除いていますが、高濃度の汚染物質となって事故の東電福島の敷地内に仮置きされています。それは、本来の原子炉施設においてあり得ないことですが、事故の東電福島を事故後に法的に特殊原子力施設と位置付けることで可能にしています。この施設そのものも、本来は存在させてはないのですが、事故の施設を特殊発電施設にして、すべてはあり得ることになっています。そして、仮置きされ増え続けているセシウム(セシウム吸着塔)は、環境中に存在してしまった時、どんな処理も拒みます。東電施設内で稼働している多核種除去施設で除去された多核種も、それを消し去ることができませんから、東電施設内で容器に詰められて増え続けています。これらの放射性物質の毒は、人間の科学・技術による処理をどんな意味でも拒み、それ自体が毒を減らすのを待つよりありません。「半減期」と呼ばれる期間ですが、たとえばセシウムの半減期はおよそ30年で、セシウムの毒が1/4になるのには半減期の半減期60年が必要になります。
 もしそうだとすれば、人間の科学・技術が認めなくてはならないのは、たとえば放射能、放射性物質を扱う時に、人間の力は及ばないことです。そうして及ばないことを認めるのは「魔術的な言葉」ではなく、まさしく「百科全書」の科学・技術です。
 「じしんなんかにまけないぞ!こうほう」は、現在月一回の発行になっています。テキストになっていた全国紙がほとんど書かなくなり、地元紙でも提供する情報の量は圧倒的に少なくなっていることが理由です。廃炉カンパニーや、原子力規制委員会などの直接情報は入手可能ですが、資料としては同じ対策をただ繰り返しているだけに読めます。地元紙が伝える、東電福島の事故現場の状況、事故で避難している人たちの状況についての最近の報道の現在の考察は以下のようになります。

1、「帰還困難区域/6町村すべてに復興拠点/政府、葛尾村野行地区にも認定」(5月12日、福島民報)。
帰還困難区域は、降り注いだ放射性物質で住民が住めなくなって避難した区域の中でも「50m㏜/年以上」の区域で、全村、町民が避難になっている双葉町、大熊町などに広く分布しています。そんな区域認定になったのは、住民を被曝させてはならないと判断されたからで、事故から7年経った今も解除されていません。「復興拠点」は、帰還困難区域の一部を除染し、避難を解除し、住民が元の生活を取り戻す、復興の拠点として、それを国が認定する拠点です。住民が避難したのはあくまでも50m㏜/年以上であり、だから帰還困難区域になりました。その区域の避難を解除する為、国の費用で徹底除染し、拠点らしい整備も国の費用で実施されます。しかし、避難の時は理由、根拠であった放射線量は、避難解除、復興拠点の認定にあたり、具体的に言及されることはありません。区域指定の時の前掲、条件は無いに等しいのです。
2、「国・東電/処理水、決断時期迫る/規制委要求は海洋放出」(5月5日、福島民報)。
  東電福島の事故の原子炉を冷却した高濃度汚染水は、セシウム、多核種と2段階で処理した後、処理不能のトリチウムはそのまま汚染水として残り増え続けています。「東京電力は、福島第一原発で汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水の扱いに苦慮している。保管するタンクは600基を超え、量は87万トンに近づく。日々増え続けているため、このままでは廃炉作業に影響しかねない」「第一原発では、事故で溶け落ちた核燃料に水を掛けて冷やし続けている。水は高濃度の放射性物質で汚染され、東電は多核種除去設備(ALPS)などで浄化しているが、トリチウムだけは取り除くことができない」「人体への影響は軽微とされる。放射能のエネルギーは小さく、体内に入っても短期間で排出される。通常の原発でも発生し、1リットル当たり6万ベクレルを超えない範囲で海に流している。第一原発では2016年3月時点の推定では1リットル当たり30万~330万ベクレルだ」「規制委の更田豊志委員長は基準値以下の希釈を前提として『環境や海産物に有害な影響が出るとは到底考えられない』と強調する」「『いつまでも先送りすれば、第一原発の廃炉は暗礁に乗り上げる』(更田氏)懸念がある」「処理水を海に流す場合、海水で薄めて濃度を基準値以下にする設備や、ポンプや配管の設置に2年程度」「放出以外は技術面、コスト面で現実味が乏しい」(2018年5月5日、福島民報)。

新聞は現在廃炉の問題を「残る放射性物質トリチウム」に限定し、それだけを「苦慮」していますが、そもそも廃炉と言い難いのは前述の通りです。たとえば「汚染水を浄化し」ですが、浄化して飲める水になった訳ではありません。循環冷却、多核種除去の2段階で「浄化」した後に、1リットル当たり、30万~330万ベクレルの放射性物質が残っています。浄化できないのです。新聞では「浄化」「処理」「除去」が繰り返されます。これも前述の通り、その毒を浄化も処理も除去もできない、途方もない量の放射性物質は増え続けて残り続け、都合よく「特殊原子力施設」と定義した東電敷地内に仮置きされていきます。
 「恐怖」から始まった、東電福島の事故との付き合いは、この国の政治、新聞(報道)、科学技術の、その何たるかを考察する材料となってきました。同時にその材料、一人の人間に、人間としての尊厳を問い続けることになっています。人間としての時間をおろそかにしていないかどうか。



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