(前週よりのつづき)
2018年8月
・2号機オペレーティングフロアで残置物の撤去開始
・1,2号機の排気筒解体に向け、解体装置の実証試験を開始。19年5月から解体に着手予定
2019年1月
・1号機の使用済み燃料プール周辺のがれき撤去に向け、建屋開口部の作業開始
・3号機で使用済み燃料取り出しに向け、専用クレーンの機能試験を開始。3月末から取り出し開始予定
2019年2月
・2号機で格納容器底部の溶融燃料(燃料デブリ)に直接触れる初の接触調査を実施。専用機器で一部の堆積物を動かせることを確認
2019年3月
・1~3号機で津波の流入を防ぐため、原子炉建屋の亀裂などを塞ぐ作業を開始予定
「廃炉」などとは言えないはずです
たとえば、排気筒はこの「1,2号機」に付属する一本とは別に、3号機、4号機それぞれに一本付属していますが、なぜ1,2号機だけが解体なのだろうか。中でも1,2号機が高濃度に汚染されていて、放射性物質を環境中に放出し続けている為、解体撤去が急がれるのだと思われます。しかし、解体にともなう作業員の被曝、放射性物質の更なる放出、飛散を防ぐ為に、そのことに対する対策も同時に求められますから、一般的な意味で解体・撤去という訳にはいかないのです。クレーンとしては超高度の作業をすることになる「専用クレーン」での作業中に事故があった場合、たとえば解体中の排気筒の一部が落下したりした場合、大量の放射性物質の飛散という、もう一つの事故になります。排気筒解体は言われている「廃炉」の周辺のもう一つ周辺ぐらいの工程にすぎません。しかし、東電福島の事故で一旦高濃度に汚染された周辺の施設も、その解体がままならないのは、たかが排気筒解体に着手するまでに8年の歳月を要していることに、すべてが象徴されています。そもそもが、排気筒の周辺地域もまた高濃度に汚染されていた為、作業のできる環境ではなかったのです。事故で建屋が吹っ飛んだ時、大量のがれきが使用済み燃料プールに落下しました。それらがれきは高濃度に汚染されることになりました。一般に使用済み燃料プールは、決まった形の核燃料を規則的に並べ、規則的に取り出せるよう、設備も作られていました。建屋が吹っ飛んだ時、それら機器・設備もまた吹っ飛んでしまいました。そうなってしまった、使用済み燃料プールの現場での作業が難しく、長びいてしまっているのは、危険なそのモノを機械的な作業にまかせ、人間的な作業を極力はぶくことで成り立たせていた、その働きが失われ、危険な現場でその働きを再構築せざるを得なくなったからです。事故を起こしてはならない現場だったのです。なのに、事故は起こってしまいました。
使用済み燃料が残っていて、その取り出しが急がれる3号機の場合、それらの対策の一つとして、建屋上部を特製・専用のドームでおおうことから始めるよりありませんでした。そこで新たに設置された機器の使用も、失敗は許されませんから「専用クレーンの機能試験を開始」するのが現状です。壊れることはあり得ないで稼働させていた原子力発電所が壊れました。一般的に機器の破損ではなく、壊れた時に何よりも危険な放射性物質が外部に出てしまう、しかも大量にすぐにはそれが止められなくなってしまった事故が、東電福島の重大事故です。ですから、事故対策はすべてが「想定外」ですから、人が近づけなくても、遠隔での操作が可能な機器の開発とその試験から個々の事故対策の一歩を始めるよりありませんでした。これで「廃炉」と言えるのだろうか。
2号機で実施されたのが、「政府と東電は2021年にも本格的なデブリ取り出しを始める計画」の「格納容器底部の溶融燃料(燃料デブリ)に直接触れる接触調査を実施」です。「溶融燃料(燃料デブリ)とみられる堆積物に初めて接触調査を試みた2月13日。防護服と全面マスクで全身を覆った作業員8人が午前7時過ぎ、台車に載せた重さ約180キロの金属製伸縮パイプ(全長11メートル)とともに2号機原子炉建屋に入った」「8人は巨大なパイプを格納容器につながる作業用配管『X6ペネ』に挿入する重大な任務を担った。近くの作業場の空間放射線量は、最大毎時3ミリシーベルトに達した。17時間足らずで、国の規定で定められた作業員の年間被ばく限度量(50ミリシーベルト)を超える線量だ。調査を担う東芝エネルギーシステムズでは作業員の1日あたりの被ばく限度量を1.5ミリシーベルトとし、作業をできる時間を長くても30分に限定している」(前掲、毎日新聞)。
言われている燃料デブリは、原子炉が冷やせなくて暴走した結果、2800度を超える高温になり、その時に圧力容器、格納容器だけでなく底部のコンクリートさえ溶かしてしまい、それらが混ざり合って固まったとされる物体です。それがどんな形状なのか、どんな混ざり具合をしているのかなどのすべては不明です。確認のしようがないからです。事故の4つの原子炉の燃料デブリ総量は800~1000トンとも言われています。事故から8年経って、その燃料デブリに「直接触れる初の接触調査」を実施したことの報告が、前掲の新聞記事です。その時に接触の為の機器を挿入するのに使われたのが「格納容器につながる作業用配管『X6ペネ』」です。その位置、形状、配管の口径などのことは、この新聞記事では不明ですが、それを操作する場所は「最大毎時3ミリシーベルト」です。一般的に簡単に作業などできる場所ではないのです。更に、使われたとされる「金属製伸縮パイプ」は配管から挿入された場合、そこから少なくはない高濃度の放射性物質が漏れ出し、また、パイプの出し入れの時にも同じことが起こります。調査の為の「接触調査」が、作業現場と作業員に更なる被曝の危険にさらすことになります。もし本格的な「デブリ取り出し」ということになれば、この危険は更に増すことになります。要するに、危険であるから実施される作業が、作業員や作業現場、ひいてはその周辺すべてを更なる危険にさらすことになるのです。もし、これが「廃炉」と言われているものの現実であるとすれば、「廃炉」などとはどんな意味でも言えないはずです。そんなこと「廃炉」より、現在も増え続けている放射性物質を、あれこれジタバタしないで、ひたすらがまんして可能な限り安定的に溜め続けることが、事故対策としてはより賢明であるように思えます。
(次週につづく)
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