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小さな手大きな手

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2019年05月03週
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(前週よりの続き)
 雑誌にほんの数行で紹介されていた、その本を入手し読み始め、数ページ目にアイヌ語の「カント オロワ ヤクサクノ アランカ シネプカ イサム」を見つけ、その本「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」(中川裕、集英社)で紹介されているコミック「ゴールデンカムイ」も残さず目を通すことになりました。実は、前掲のアイヌ語は、それを見なくても言葉が出てしまうくらい、覚えてしまっているらしいのですが、それがいつのどこでなのか、思い出せませんでした。しばらくして、岡理恵さんに「あなたの、あのCDの、あなたの詩でしょう」と指摘されて、やっとそれが自分の詩であることに気付きました。2004年にできたCD(作曲・川上盾)「いのちのうた」の「創造物語」の冒頭に出てくる一節です。
 「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」では、この言葉が、萱野茂さんの「愛用していた言葉」として紹介されています。
 「カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム」(天から役目なしに降ろされた物はひとつもない)。この言葉は、コミックスの表紙カバーの袖のところに毎巻書いてあります。これはアイヌ民族出身で初めて国会議員を務めた萱野茂さん(1926~2006年)の愛用していた言葉で、アイヌの世界観をよく表しています。「ゴールデンカムイ」2巻12話には、そのことを、コミックで「太陽、火、水、樹木」を描いて、言葉も添えられています。「私たち(アイヌ)は、身の回りの役立つもの、力の及ばないもの、すべてをカムイ(神)として敬い、感謝の儀礼を通して、良い関係を保ってきた」「火や水や大地、樹木や動物や自然現象、服や食器などの道具にもすべてカムイがいて」「神の国からアイヌの世界に役立つため、送られてきてると考えられ、粗末に扱ったり、役目を終えた後の祈りを怠れば災いをもたらすとされてきた」。このことを「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」は、少し言い換えています。「いずれにせよ、カムイとは動物や植物や火や水のことだと言ってしまうと、『自然』と訳してもよさそうな気もしますが、先ほど言ったように、家や舟、臼や杵、鍋や小刀と言った人工物もまたカムイであり、人間のまわりにあって、人間が生きるために何らかの関わりを持っているすべてのものを指しますので、『自然』ではやはりぴったりきません。むしろ『環境』と言ってしまったほうがよさそうです。アイヌとは『人間』を指す言葉ですが。アイヌの伝統的な考え方の根幹にあるのは、アイヌとカムイが良い関係を結ぶことによって、お互いに幸福な生活が保たれるということです」。これが、短い文章にまとめられたのが「カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム」ということともなります。CDの「いのちのうた」には、冒頭の「創造物語」が、アイヌ語の「カントオロワ ヤクサクノ アランケプ シネプカ イサム」で始まることについて、短く解説しています。「豊かな自然の営みと意味を『創られたもの』として、伝え続けてきたのがアイヌ民族です。創造物語は『神の創ったものは、あるがままで美しい』を、アイヌの言葉で始めたいと、『二風谷アイヌ資料館』の萱野茂さんに直接電話で教えてもらいました。『カントオロワ ヤクサクノ アランケプ シネプカ イサム』(天から下されたものは、役目のないものはない)」と答えて下さいました。これに少しばかり経緯があります。このCDの創造物語のしばらく前に、宮島利光さんの案内で、「二風谷アイヌ資料館」を訪ね、萱野茂さんの自宅の居間で、アイヌについて資料館についておしゃべりをしながら、お茶の時間を過ごさせていただきました。で、アイヌに詳しい宮島利光さんに「神の創ったすべてのものは、あるがままで美しい」のアイヌ語を教えてもらうために電話したところ「解らない、萱野さんに直接聞いたら、たぶん訪ねて行ったこと、『竹とんぼ』のことを覚えていると思うよ」と、電話番号を教えてくれました。それで、思い切って「しばらく前に、宮島さんの案内で訪ねさせていただいた『竹とんぼ』の菅澤です」と自己紹介したところ、「あっあれね、今、目の前の机の上にあるよ」とおっしゃって、教えてくれたのが「カントオロワ・・・」です。萱野茂さんの「二風谷アイヌ資料館」やアイヌのことは、断続的ですが、いくつかの経緯でつながり、気にはなっていました。アイヌは、大きな木を削ってくりぬいて舟を作ります。この舟に板囲いを取り付けて「大型化」し、それを操って外海に出たりもします。日本・和人もまた、木で舟を作り、操って川に海にこぎ出し、人や物の行き来、漁などをしてきました。その「和船」を作る人は、今はほとんど居なくなってしまいましたが、20年近く前、木曽川の船大工さんが「最後の和船」を作るというプロジェクトがあって、その和船は、木曽川を下り、太平洋を陸沿いに北上し、津軽海峡を横断し、北海道に渡り、沙流川をこぎのぼり、二風谷まで届けられることになっていました。このプロジェクトの和船の「旗」をデザインしたのが、福井恵子さんです。幼稚園などの旗もいっぱいデザインしてもらっている、福井恵子さんからの申し出で、西宮公同幼稚園がその旗を提供することになり、二風谷に向かう和船が進水し、木曽川にこぎ出す時の一員になったりもしました。その和船は、今も「二風谷アイヌ資料館」の敷地の奥の物置に置かれています。小さな木の舟、和船、アイヌの木の舟が、和人の場合もアイヌの場合も、生活、そして生活文化の輪を広げてきたことの象徴としてそれぞれ置かれています。
 雑誌、(週刊金曜日、4月19日)で小さく紹介されていたのが目にとまって入手することになった「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」は、もし、コミックの「ゴールデンカムイ」と合わせて目を通せば、アイヌとアイヌが生きてきた世界が身近になるなかなかの好書です。
 「ゴールデンカムイ」の内容のおおよそは、1巻目のカバーで紹介されています。
 「『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道に足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金の手掛かりが!?立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ娘との出逢い。『黄金を巡り生存競争』開幕‼‼」
 という、コミックではあるのですが、なんと言ってもすごいのは、そのアイヌとアイヌが生きた世界が、歴史や生活の細部に至るまで、劇画そのものはもちろん、挿入される「解説」で解き明かされることです。それは、興味本位でアイヌを紹介するのではなく、アイヌとアイヌが生きた世界に寄りそって、耳をかたむけ、劇画の表現を超えて、アイヌを理解し、アイヌと共存する意思がなくいては描けない物語になっています。しかも、その一つ一つが最大もらさず、中でも言葉を尊重するアイヌ語に及んで克明に描かれています。いるように読めます。「ゴールデンカムイ」のアイヌ語を監修しているのが、「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」の著者でもある中川裕さんです。したがって、こっちの書物は、「アイヌ語、アイヌ文化」の専門家が、コミックの描くアイヌを、言葉や文化の起源やその何たるかを、一つ一つ掘り下げて明らかにしますから、一旦コミックで得た、体験、知識を整理しなおすことに役立ちます。別の中川裕さんの書物「語り合うことばの力/カムイたちと生きる世界」(岩波書店)では、たとえば、「人のいとなみとことば」が、時代や民族などを超えて、人間の営みを形成する、欠くことのできない手立てであり、アイヌの世界はそのことを根底にすえて、それが生活の営みであったことを明らかにしています。普遍的な人間の営みを誰よりも尊重することで生きていたのが、アイヌ(民族)だったのです。
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