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小さな手大きな手

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2019年08月02週
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福島県に原子力緊急事態が発令(特定原子力災害等規制法第64条、2,3項)されたままだったり、東電福島の事故現場が特定原子力施設(原子力災害特別措置法第3章15条)だったりするのには理由があります。東電福島の重大事故によって閉じ込められなくなった放射性物質は事故現場の到るところで今も放出が続いており、福島県を中心に広い地域に放出されてしまった放射性物質は、今も処理不能のまま(放射能の毒は消去できない)到るところに仮置きされています。それが、事故から8年たった今も、たとえば前掲の2つの「定義」がそのままになっている理由です。それは、定義にとどまらず、いわば放射能まみれの事実を突きつけるところが、この事故の「悲劇」なのです。東電福島の重大事故を突きつけられて、突きつけられた事実が「悲劇」であるとは理解したくありませんから、すべての事実に関する情報は小さく扱われることになります。しかし、たとえ情報そのものを小出しにし、一つ一つを過少に評価するとしても、そのいずれにおいても、この事故の根底にある「悲劇」、人間が作り出したモノによって、人間の社会がおびやかされ、そこから逃れるすべを持たないという事態は変わりません。そんな事態のそんな事実も、いわゆる全国紙は、ほとんど報道の対象にしません。ますます見えにくい放射能の事故だからです。以下、福島民報。

5月8日 ・見え始めたデブリ回収
・被ばく医療の司令塔が発足、千葉の量研機構
・福島復興局/富岡と浪江支所業務開始
6月1日 ・震災避難者再び5万人超、県の精査で修正
6月9日 ・第一原発1号機、水素爆発防止へ/窒素配管増設
6月13日 ・葛尾村一部避難解除から3年/農業着実に再生、雇用
促進で人口増目指す
6月14日 ・双葉町役場町内再開へ、住民帰化に合わせ2022年春
6月15日 ・第一原発で豪雨対策/汚染水増抑制、1号機北西部に土
のう
・廃炉特化の設備使用基準策定
6月16日 ・福島第一原発、単純ミス排気筒解体遅れ
・放射性物質が北太平洋循環
6月17日 ・核のごみ最終処分、推進へ国際会議設置へ/事例共有
など連携強化
6月19日 ・ねじれ原因か、3号機プールの機器落下で東電
6月20日 ・県民健康調査データ提供/公益性ある研究対象
6月21日 ・廃炉の正確な知識共有/飯舘、深谷復興拠点内に交流
広場
6月24日 ・地表セシウムの長期滞留/3センチ以上浸透しない可能
性/原子力機構
6月25日 ・回収被ばく対策に期待、原子力機構のアルファ線検器
6月26日 ・復興庁に財源確保要望/双葉地方町村会と議長会
6月27日 ・第二原発全基廃炉方針で社長、「スピード感持ち検
討」、東電株主総会、具体的言及なし
6月28日 ・第一原発、1号機格納容器ふた内側、来月中旬にも調査
開始
6月29日 ・帰還困難区域先行解除に向け、富岡町長が支援求める
7月2日 ・タンク除染にレーザー照射、第一原発導入へ/東電、被
ばく3割減
7月4日 ・第一原発3号機核燃料取り出し、きょう作業再開
7月9日 ・県民健康調査検討委/甲状腺検査2巡目結果の評価、修
正含め月内に見解
7月11日 ・除染土壌の県外処分法など検討案を情報提供へ/国など
に環境放射能学会、郡山で発表会
7月12日 ・集配車で放射線量測定、双葉5市町村/日本郵便東北支

7月13日 ・飯舘、乳牛肥育開始へ、原発事故後初「村復興の一助
に」
7月17日 ・飯舘で乳牛育成開始/震災後、村内で初めて
7月18日 ・双葉郡に17戦略構想/将来像検討委、最終報告案
・福祉関連施設が起工/大熊、来月2月末完成へ
7月19日 ・核燃料取扱機が故障と東電発表、福島第一原発3号機
7月20日 ・第二原発廃炉、月内決定へ/東電、県内ゼロに、社長表
明から1年余
7月25日 ・第二原発廃炉、正式表明/東電社長、核燃料貯蔵施設新
設も
・中間報告書を了承、甲状腺検査の2巡目/県民健康調査検
討委

 「こうほう号外41」で言及した、被曝した人たち(主として子どもたち)の、甲状腺検査の結果、たくさんの子どもたち(通常の30~60倍)の甲状腺がんが明らかになっています。県民健康調査検討委員会は、その事実と事故との関係を、一貫して否定しており、今回も、その見解は変わりません。「東京電力福島第一原発事故の健康影響を調べる県民健康調査検討員会は24日、甲状腺検査の2巡目結果について、甲状腺がんと放射線被ばくの関連は認められないとした甲状腺評価部会からの中間報告を了承する見解を公表した」(7月25日、福島民報)。「現時点で、甲状腺がんと放射線被ばくの関連は認められない」とする「評価」なのですが、一方で、検査の結果発表されている甲状腺がんの患者数は、従来言われていた数字の30倍を超えているのも事実です。これについて、検討委員会などは、大きな理由の一つを「過剰分析」としてきました。「過剰」で事実を説明してしまえない訳ではありませんが、必要な手続きを経て診断をした結果の「事実」であったとすれば、しかも従来一般に見つかっていた甲状腺がんよりも、30倍も多いとすれば子どもたちに起こっているその事実に驚くないし、悲しむことが優先するように思えます。「汚染度の高い地域(たとえば福島)にいた人は、汚染度の低い地域にいた人よりリスクが高い――という極めてシンプルな考え方で議論を進めたほうがいいということだ」(政経東北、2019、7、「甲状腺がん『被曝との関連無し』の虚妄」。間違いなく「虚妄」なのですが、それがまかり通って揺るぐことなくて、2巡目の結果についても「関連は認められない」になってしまえるのは、なぜなのか)。検査結果が突きつける事実がどうであれ、その事実はかえりみられないのです。そんなことが、あり得るのは、政治や情報関係などを動かし、そこから発信される情報が、上記のような検査結果を無いに等しくしてしまう、言ってみれば不動の「判断」が前提になっているからです。
(次週に続く)
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