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2019年12月01週
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(前週よりのつづき)
原子力発電所では、それが稼働し続ける限り、トリチウムの放出はさけられませんでした。で、別に基準を設け「薄めれば」放出していいことにしてしまいました。完全に閉じ込めることが、原子力発電所の稼働の本来の、そして絶対条件であるはずのところを「薄めれば」としたところに、あるべき科学・技術の本来の姿を科学・技術の名において自ら貶めて恥じないのです。どんな科学・技術をもってしても言うところの「完全」に制御することができないのが、放射性物質であり、人間の科学・技術なのです。原子力発電所は、そうだとすれば、あってはならない施設と言うことになります。
 にもかかわらず、科学・技術の本来の姿から外れ、その事実に立って事故の現実を見ようとしないで、「9月7日、トリチウム水処分/「国民的議論必要」、福島県で廃炉安全県民会議」になってしまいます。言われている「国民的議論必要」で、もしこの問題で国民すべての議論があり得るとしたら、あるいはその目的として考えられている議論は、従来から東電・国が主張してきた、薄めて海洋に放出するのが「唯一」・「現実的」だとして、国民(ないし県民)に有無を言わさず認めさせることを意味します。
 東電福島の重大事故は、原子力発電所を稼働させ、国の重要な電力政策としてきた「政治」を根本から揺さぶらずにはおかない事件だったはずです。その事件の事実を隠蔽するために使われたのが、東京オリンピックの招致です。東京オリンピックを招致するため、世界に向かって事故の原子炉は「コントロールされている」という虚偽を宣言し、その宣言のもとに、重大事故のすべてが終息するという物語が作られていくのです。
 東電福島の重大事故の結果、現在も多くの人の避難が続き、元の住居には戻れないままです。その第一は、放射線量が高く、居住制限区域の場合は、20~50m㏜/年、帰還困難区域は、50m㏜/年以上である為です。戻れないと言うよりは、もし普通に人間の健康を考慮すれば、決して戻ってはならない場所で、それが事故からやがて9年を迎え、5万人近くの人が戻れないのが福島の現実です。放射線量が人間の生存にとって危険であるにもかかわらず、進められているのが避難解除・帰還です。「避難解除・帰還」は、東京オリンピックを招くにあたって、公言・約束した「コントロールされている」を証明する為にはたぶん必要条件であると、この国の政治は考えています。その為の工作(いわゆるアリバイ工作)が手を変え、品を変えて実施されます。それが「双葉町に整備中アーカイブ拠点施設、県が名称決定/東日本大震災・原子力災害伝承館」だったりします。双葉町は東電福島の事故からやがて9年を迎える今も、全町避難が続いています。町の主要部分が帰還困難区域だから、そもそも戻れない、言ってみれば「消滅した町」なのです。なのに、そこに、「東日本大震災・原子力災害伝承館」ができてしまいます。名称と言うことであれば、「災害」ではなく「事故」であるべきです。しかし、今も裁判で争われている争点にもなっているとは言え「想定ができた」にもかかわらず、事前の対策を講じなかったという意味で「刑事告訴」されている正真正銘の事故・事件です。しかも、その事故は前述の汚染水がそうであるように、進行中の重大事故です。その正確な事実を隠蔽して進められている「伝承」にはいったいどんな伝承であり得るのだろうか。今、もしこの事故を「伝承」と言うなら、地元の新聞が伝え続ける事故の断片、その「断片」が伝える事故の困難さこそが、語られるべきであるように思えます。しかし、名称も計画されていることも、いかに事故を過少に評価するかです。「9月10日、NDF戦略プラン公表/円滑廃炉へ課題整理と/デブリ回収」ですが、東電福島の重大事故は、どんな意味でも「円滑廃炉」はあり得ません。閉じ込めるはずの放射性物質が事故で閉じ込められなくなった時、廃炉はもちろんその事故の事実は収束することが難しいからです。何よりも、その為のどんな手段、即ち普通に収束・修復の為のどんな人間の手も拒んでしまうからです。本来の意味で手が付けられないことになっているのが、東電福島の重大事故です。ですから、一般に廃炉と呼ばれる場合の核燃料の取り出しも、東電福島の事故の場合のように燃料、圧力容器、格納容器が溶けた状態、デブリの場合は、超高濃度の放射線量で、その状況のすべてを確認することすらできていません。できない事故が起こってしまったのです。

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