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2020年01月02週
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(前週よりのつづき)
 東電福島の事故を起こしたのは、東京電力です。しかし、その責任は「想定外」と言うことで、現在までのところ問われていません。放出し、降り注いだ放射性物質と、それによって汚染されることになった大地・生きものたちのことでも、放出した放射性物質は「自分(東電)のものではない、無所有」ということでその責任も問われません。汚染水が「海洋放出と大気放出」された場合も、「もう私どものものではありませんので」と、東電はうそぶくことになります。全国紙も大きく取り上げ、報道する汚染水問題の「汚染水放出、海洋か大気化へ」が、根本的にずれていると言うか間違っているのは、東電福島の重大事故の事実を直視するという基本を外していることです。基本ははっきりしています。そして単純明快です。原子力発電所の重大事故が起こってしまったのです。完全に閉じ込めるはずの放射性物質が閉じ込められなくなったのです。放射性物質を「完全に閉じ込める」のは、それが閉じ込められなくなり、環境中に放出させてしまった時、処理不能だからです。ですから、東電の会社案内として出されていた、原子力発電の解説書には、重大事故と言う記述はありましたが、その対策は書かれていませんでした。同じように、原子力安全機構のまとめた「原子力発電所の安全に関する手引き」には、原子力発電所の重大事故の可能性を、数千年、数万年に1度とした上で、その可能性をほぼ否定し、重大(過酷)事故対策についての記述はありませんでした。汚染水処理が現在直面している事態が(直面しているという意識があれば)まさしくそのことを物語っています。
 2020年度の国の東電の事故対策、中でも「中間貯蔵施設」の整備費として4025億円が計上されています。(2019年度は2081億円)。「最終」の示されない中間貯蔵施設の整備には、建設されている土地の取得など、今までも途方もない費用が使われてきました。そして、建設途上にある中間貯蔵施設には、福島を中心に各地域で除染されて、「現場保管」されていた汚染土などが大規模に運び込まれています。「環境省は2021年度末までに帰還困難区域を除いた県内各地の仮置き場から除染土壌の中間貯蔵施設への搬入を完了させる方針。予算額を大幅に増やし、中間貯蔵施設の整備や用地取得を加速させる。除染土壌の減容化や再利用に関する技術の開発にも充てる」(12月13日、福島民報)。この中間貯蔵施設に汚染土壌を運び込む事故対策は、そのいずれを取っても、放射性物質の処理ではなく、他に移すだけという危険が付きまといます。取り扱っているのが放射性物質である限り、このことは避けられないのです。そして、現在中間貯蔵施設建設場所とされている、双葉町、大熊町は、町の大半が帰還困難区域です。にもかかわらず、その一部を除染して、復興拠点を設け帰還をうながす対策が進められています。危険だから避難させられた町に、危険だから除染された除染土壌が運び込まれたら、更にその町が危険になると考えるのが自然です。なのに、その町への帰還がうながされます。中間貯蔵施設は30年が期限と言われていますが、現在が安全であるいかなる町でも、それを引き受けるとは考えられません。除染土壌は「減容化」されますが、もちろん放射能の毒、その全体が減容する訳ではありません。更に「再利用」ですが、さすがに表土などとして再利用はできませんから、道路工事などの基盤、埋め立てなどに使うことが考えられています。それも放射性物質の毒を埋め立てるだけですから、30年、50年、100年その土地は地下深く汚染され続け、当然その場所、周辺など広く地下水などが汚染されます。
 放射性物質は、使用済み燃料の扱いであっても容易ではありません。超高濃度の放射性物質ですから、その扱いはすべて遠隔操作です。そして、万一の事故で落下するようなことが起こると、ましてや破損、飛散などしようものなら、その扱いは場合によってはそこで核反応が始まり不可能になってしまいます。事故の原子炉の使用済み核燃料の取り出しが事故から9年近く経っても進まないのは、正常の移動、取り出し機能を失ってしまった時、簡単に再生することはあり得ないからです。ましてや、原子炉そのものも溶融してしまったデブリは、3000℃近い高温で溶けて固まってしまっていますから、簡単に歯が立つ相手ではなくなっています。そして何より難しいのは、そこが超高濃度で汚染された場所であることです。あらゆる人間的な技術も拒んでしまうのがその場所です。なのに、取り出しの日程を示すとしたら、単なる願望にすぎないし、東電福島の重大事故の理解を根本において誤っていることを意味します。
 東電が原子力発電の解説で書いたように、原子力安全機構が手引きで書いたように、原子力発電が重大事故になってしまった時すべての事故対策は手遅れです。あり得るのはその事故の事実と付き合い続ける覚悟です。たとえば汚染水の場合は、タンクの増設以外あり得ないことになります。事故の当事者である東電が、その増設を否定するなどということもあり得ません。

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