(先週よりのつづき)
今、必要とされている軟弱地盤の改良工事も知事の承認があってはじめて可能になります。指摘されているように本格的な技術検討は何一つ実施せずに「お墨付き」を与える為の「技術検討会」であり、汚濁防止「膜」を「枠」と言ってしまう環境を監視しない「環境監視委員会」です。言われている設計変更で、「C1護岸」の埋め立て、及び埋め立てにあたっては、そこで確認されている「軟弱地盤」には、数万本単位の柱・杭が打ち込まれます。その時の振動及び砂の投入によって、海底に堆積している土が濁り水となって吹き上がることは確実です。この事実については、2月15日(兵庫教区クリスチャンセンター)、2月16日(西宮公同教会)の学習会で、富樫守さんや稲富澄男さんによって指摘されています。当然、こうして指摘されている、環境への影響を検討・再検討は避けられないはずです。「規定」の条文に、再検討の項目がないことを理由に、立法の本来の主旨を矮小化ないし公然と踏みにじっています。「名護市辺野古の新基地建設の環境影響評価(アセスメント)の手続きを巡り、防衛省が軟弱地盤改良に伴う設計変更後もアセスのやり直しを予定していないことについて、環境省は7日までに『環境影響評価には同一事業として事業に着手した後であれば、やり直すという規定はない』との見解を示した」「工事の周辺環境への影響を議論する有識者会議『環境監視委員会』でも、これまで設計変更による環境影響の予測について、沖縄防衛局が『現行計画の結果と同程度か、それ以下』と報告し、出席委員からも異論は出ていないという」(3月8日、沖縄タイムス)。ドローンプロジェクトが、実際の映像等でも明らかにしているように、現在強行されている工事によっても、辺野古・大浦湾は濁り水が発生しているのに、海底での地盤改良という大規模な工事では濁り水の発生は更に大きくならざるを得ないのです。「大浦湾に張られている汚濁防止膜のカーテンは海面下7メートルしかなく、汚濁の拡散は当初計画でも必至であった。工期短縮のために無理な工法変更を行い、外周護岸を閉じる先行盛土を行うというのだから大浦湾の汚濁は計り知れない。防衛省が実施した環境アセスで5600種もの生き物が生息しているとされる大浦湾の環境に甚大な悪影響を及ぼすことは必至である」「2020年度にずれ込むといわれている設計概要変更の申請は、知事の承認を得る必要がある。その判断に際して知事が依拠するのは、公有水面埋立法4条(免許の基準)である。四条1項2号は『その埋立が環境保全及び災害防止につき十分配慮せられたるものなること』としており、知事はこの条件に適合すると認められる場合でなければ免許(国の事業の場合は承認)を与えてはならないとしている」「だとすれば防衛省は、たとえアセス法が求めていないとしても積極的にアセスをやり直し、提起しようとしている新たな工法が当初計画と『同程度、もしくはそれ以下』の環境影響しか与えないことを自ら示すべきではなかろうか」(3月8日、沖縄タイムス、桜井国俊:沖縄大学、環境学)。
沖縄島の人たちが、辺野古新米軍基地建設に強く反対し続けているのは、何よりそのことにより引き起こされ続けている被害・事件であるのはもちろんですが、沖縄島で生きる人たちの「生命の海、美ら海」が壊されること、汚されることを同じように何よりも恐れるからです。そうだとしたら、よりによって沖縄島に新米軍基地を建設しようとする日本国・国民は、沖縄島の人たちが納得できる内容を具体的に示すことで、理解を求めるべきであるのは当然のはずです。
進められている事態は全く逆であるのは、前述のように強行されている埋め立て工事であり、辺野古サンゴ採捕をめぐる、国と県とのやり取りです。辺野古新米軍基地建設工事では、辺野古・大浦湾のサンゴに影響を与えることが避けられません。実際に埋め立て予定海域で見つかっているサンゴの移植が計画されています。その為に沖縄防衛局は「特別採捕」を沖縄県に申請していますが、県は許可していません。「農水省によると、沖縄防衛局は2019年4月に38760群体、7月は830群体について、知事に特別採捕許可を申請した。同省は申請に不備がないにもかかわらず知事は県が定める標準処理期間の45日を経過しても判断を出していないとして、申請を許可するよう地方自治法に基づき指示した」「是正に従わなかった場合は訴訟に発展する可能性があるほか、複数回数の勧告を経て代執行に踏み切ることも想定される」(2月29日、沖縄タイムス)。沖縄県はこの農水省の指示に従っていませんが、そもそも、新米軍基地が建設される沖縄県、沖縄島の多数が建設に反対しているのですから、地方自治の本来の理解から言っても、基地建設工事などあり得ないのですから、更に基地建設の為のサンゴ採捕に同意することもありません。なのに、この度の農水相の指示のように、それら一切を踏みにじり、更に、アセス法の精神も踏みにじって、すべてを強行しているのが、日本国・国民です。「県は是正指示に従わない理由として①埋め立て承認の撤回を取り消した国土交通相の裁決を違法として係争中で、最高裁の判決が出るまで移植の必要性を審査できない②国が軟弱地盤の改良工事に必要な変更承認申請を提出する方針で、それに伴う環境保全措置の内容が判明しないと許否の判断ができない③許可を前提とした指示は国の不当な関与である――としている」(3月6日、沖縄タイムス)。一方国・農水相は沖縄県に対し1月31日付で「是正勧告」をしています。「玉城知事は、特別採捕許可は県の事務であるとした上で『地方自治法上最大限、県の自主性は尊重されなければならない』とし、勧告に対し『まことに遺憾としています』」(前掲沖縄タイムス)。こうして、県が国の是正指示に従わない場合、沖縄で繰り返されてきたのは、利害を同じにする国の係争委員会が申し立てをした結果、国が県の主張を退け、この国による関与の取り消しを求める訴訟は、やはり国の利害を同じにする裁判で県側が敗北してきました。辺野古サンゴ採捕をめぐっても、国は同じ筋書きを想定し、要するにごり押しで沖縄県と沖縄島の人たちの願いを踏みにじることが繰り返されるのです。
参考資料
・「ドローンの眼/琉球弧の軍事基地」(沖縄ドローンプロジェクト、森の映画社)
・「沖縄ドローンプロジェクトのDVD/ドローンの眼、第一部、第二部」(沖縄ドローンプロジェクト、森の映画社)
・「山城博治さん、稲葉博さん、添田充啓さん/裁判闘争最終報告」(沖縄の政治弾圧救援・裁判闘争報告集編集委員会)
・「月桃(げっとう)通信 No,18 No,19」(発行:石原艶子)
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